鹿児島県鹿屋市の社会福祉法人永生会が運営する特別養護老人ホーム慈恵園で、入居者が裸になった姿をスマートフォンで撮影したり、両腕を押さえつけたりするなど2職員による5件の虐待事案があったことが19日、分かった。同会が鹿屋市から3月下旬に虐待と認定されたと明らかにした。市から改善計画書を求められ、すでに提出した。

 同会によると、昨年11月から市が監査に入っていた。虐待は昨年5〜10月、認知症の入居者4人に対して行われた。深夜に服を脱ぐ行為を繰り返した女性入居者の裸を女性職員が私用スマートフォンで撮影し、同僚に送信した。職員は園の聞き取りに「業務連絡だった」と説明したが、市から性的・心理的虐待とされた。別の職員は、入居者の両腕を手で押さえつけて右上腕を内出血させるなどした。

 同会は4月上旬、入居者の家族に説明し、謝罪した。今後は職員研修をはじめ、全体会議で職員間の意思疎通を充実させるなど再発防止策に取り組む方針。県から6〜8月の介護報酬1割減額が示されたという。

 園は1981年の開設で定員60人。現在56人が入居している。園の施設長も務める理事長は「虐待を受けた当事者とその家族には大変申し訳ない。指摘を真摯(しんし)に受け止め、信頼回復に努めたい」と話した。

 南日本新聞の取材に対し、県は「個別の施設に対する取材には答えられない」、鹿屋市は「高齢者虐待防止法などに基づき、公表する立場にない」としている。