鹿児島の老舗百貨店、山形屋(鹿児島市)が取引金融機関の支援を受け、私的整理による再建を目指すことが報道されてから一夜明けた11日、鹿児島市の本店前には「少しでも応援になれば」と開店前から家族連れらが集まった。従業員らは岩元修士社長(54)から経緯の説明を受けて各職場へ向かい、「日常通り」のおもてなしに務めた。

 開店の午前10時、正面玄関では末永一弘取締役本店長(58)らが、営業開始を知らせる館内放送とともに店内へ流れ込む客を「いらっしゃいませ」と元気な声で出迎えた。

 11日は、朝礼前に説明の場が設けられた。社員やテナントの従業員向けで前日を含め3回目。約2300人のうち、これまで約1000人が参加した。岩元社長からは、社是でもある「顧客本位」を改めて呼びかけられたという。坂口博英広報担当部長(51)は「従業員は報道で内容を把握しており、落ち着いた様子だった」と話した。

 地下フロアで来店者を案内していた山口政博食品統括部長(59)は「報道後は『山形屋は鹿児島に欠かせない』など、自分も含め周りの社員にもエールが届いている。頑張らなければ」と気を引き締めた。

 ニュースで再建方針を知ったという同市上之園町の無職、樺山むつみさん(75)は「鹿児島最後のデパート。絶対に残ってほしい」と駆け付けた。幼少期は屋上の遊園地で遊び、高校時代は職場実習の一環でレジ業務を体験した思い出の場所。食堂の焼きそばや買い物が楽しみといい「もっと利用して、少しでも力になりたい」と話した。

 物産展好きの妻から「貢献してきて」と送り出されたという同市原良5丁目の理学療法士、室園拓也さん(32)は、山形屋の焼き芋が大好きな泰志君(2)と一緒に来店。「歴史ある外観と充実した品ぞろえは鹿児島でもここだけ」と話す。焼き芋20個を購入後、母の日の贈り物を選ぶため目的の売り場へ向かった。