「家族が最近、頻繁にパチンコに行ってる…カードローンも使ってるみたい」

身内がギャンブル依存症と気づいたら、いち早く適切な対処が求められる。放置すると多重債務や貧困、自殺、犯罪など深刻な事態に発展するため解決が急がれる。一方で、当事者は依存症からなかなか抜け出せない。ここでは、ギャンブル依存への向き合い方について解説する。

■ギャンブル大国日本、パチンコは14.6兆円の巨大市場

日本生産性本部の「レジャー白書2023」によると、国内のパチンコの市場規模は14兆6,000億円にのぼる。日本は「ギャンブル大国」との指摘もあるほどだ。「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査(2020年度)」によると、ギャンブル依存が疑われる人は全体の2.2%程度。ギャンブル依存が疑われる人に、過去1年間で行ったギャンブルの種類を尋ねたところ、最も多かった回答は「パチンコ」で70.3%、次いで多かったのがパチスロ52.7%、宝くじ(ロト・ナンバーズ等も含む)41.2%、競馬20.6%だった。

また、過去1年間に週1回以上行っていたギャンブルとして最も多かった回答もパチンコ(25.5%)で、最もお金をつぎ込んだギャンブルもパチンコ(38.7%)が最多だった。

■パチンコにのめり込む原因は?孤独感を紛らわすため…

そもそも、なぜパチンコにのめりこんでしまう人が一定数いるのか、根本的な理由に目を向けてみよう。

1つの背景として考えられるのが、単独世帯の増加と孤独化だ。同居家族や気楽に会える友人がいない人が寂しさを紛らわすために、比較的身近なギャンブルであるパチンコに手を出しているのかもしれない。仕事をしていないうえに一人暮らしで、打ち込める趣味がなく、自分から積極的に人と交流しようとしなければ、暇つぶしにパチンコを始め、そのままずるずると…ということは十分に考えられる。

■ギャンブル依存症にならないために今からできること

ギャンブル依存症を含め、依存症に陥る原因にはさまざまなことが考えられるが、そのひとつに「寂しさ」「暇」が含まれるだろう。そのため「寂しくないようにする」「暇にならないようにする」のは非常に重要だ。

趣味を見つける、地域のボランティア活動やサークルに参加するなど、人とのつながりを保ち、暇を持て余すことがないようにしてほしい。

■家族がギャンブル依存症かもしれない…そう思ったら

家族や近しい知人がギャンブル依存症かもしれないと思ったら、適切な対処法は「専門家や支援団体に相談する」一択だ。ギャンブル依存症は病気である以上、専門知識に基づいて対応しないと状況の改善は望めない。以下に専門家や支援団体を紹介するので、参考にして欲しい。

● 各都道府県の精神保健福祉センター
● ギャンブル依存症問題を考える会
● ギャンブル依存症家族の会
● GA(ギャンブラーズ・アノニマス)
● 依存症外来を持つ精神科病院・クリニックなど

逆に、やってはいけない対応も列挙しておくので、家族や友人にギャンブル依存症の兆候がみられたら、一度踏みとどまろう。

● 苦言や説教
● 財布やお金の管理
● 借金の肩代わり
● あえて無視する

■依存症かどうかをしっかり見極めて

最後に付言するが、パチンコなどのギャンブルをやっている人が全員依存症で苦しんでいるわけではない。お小遣いの範囲で楽しんでいて、普段の生活に何ら支障がないなら特に問題はないだろう。

しかし「ギャンブルが生活の中心になってしまう」「借金してでもやろうとする」のはあきらかに問題であるうえに、依存症に陥っている可能性がある。そのときに「あれ?おかしい?」と気づけるかが、依存症を克服できるかの分かれ目になるだろう。ギャンブル依存症に対し正しい知識を持つとともに、ストレスを溜めない生活をする、周囲に依存症の兆候がある人がいたら適切な声掛けをすることを心がけていただきたい。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。