「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、マツダ CX-5だ。

マツダ CX-5(2012年:ニューモデル)

フル スカイアクティブを採用して登場したマツダ CX-5。発表会の直後にガソリンエンジン搭載車だけ試乗できたので、まずはそのレポートを紹介しておこう。ボディは意外と大きい。全長4540×全幅1840×全高1705mmという立派なサイズだが、実際に乗ってみるとそれほど大きく感じない。サイズを感じる数少ないポイントである着座点が高いことがその理由のひとつだ。

優れたデザインで直前視界も良い。またサイドミラーも独立してドアに付けられているので、Aピラーとの隙間から視界が確保されており、これも必要以上にサイズを大きく感じさせないポイントだ。新しいマツダのデザインをまとったエクステリアは新鮮で、それに呼応したインテリアの造りも悪くない。ただし、質感はそれほど高く感じられないのが少し残念なポイントだが。

さて、マツダの走りに関する性能は誰もが認めるところだが、フル スカイアクティブはパワートレーンだけでなくシャシにも及んでいる。剛性の高いボディを軽量に造り、しかもサスペンションやステアリング系と一体感のあるドライブフィールを持たせているのには瞠目させられる。ハイペースで走らなくても、普通に街角を曲がるときにもスッと自然に曲がっていくし、しかもロールが小さいので、SUVではなくセダンに乗っているかのような感覚だ。

この安心感と安定感は、直進性にも現れている。轍路でもステアリングに伝わるインフォメーションはしっかりしているが、ハンドルのとられは最小で、ハンドルに手を添えているだけでまっすぐ走ってくれるので、運転にゆとりが生まれる。高速道路のランプウエイのようなややタイトなコーナーでも、ドライバーが思うように気持ち良く旋回してくれるので、心地良いドライブフィールをもたらす。これがサイズを感じさせないもうひとつの理由だ。

乗り心地はかなり快適。エンジンとATもいい!

乗り心地は、FFと4WDでは若干の違いがある。いずれも硬さを感じるがバネ下とシートでショックを良く吸収してくれ、パッセンジャーへの負担は少ない。バネ上は比較的フラットで、これもある種の欧州車のような味となっている。突き上げに関してはFFの方が強めで、4WDは上下の減衰に優れているようだ。しかし不快感はなく、広い後席に乗ったカメラマンからも「快適な乗り心地」とコメントが出るほどだった。

しかも静粛性が比較的高く、C/Dピラーを通じて入ってくるロードノイズも良く抑えられているのに感心した。感心したといえば、もう少しノイジーなエンジンを想像していたのだが、回転フィールは滑らかで、かつガサツな音がしない。これにワイドレシオで1速からロックアップする6速ATを組み合わせるが、その相性も良い。

エンジンの低速回転のトルクの立ち上がりが早くて発進時も力強い。2Lの自然吸気とは思えないほどだ。2000rpmからはさらに伸びていくので、こちらも気持ちが良い。ATは変速時のショックがあるかと思ったが、上手に制御されており、スムーズなシフトアップをする。ただ場面によって急激なシフトダウンをしたときにショックが大きくなる領域もあるが、日常的にはほとんど気にならない。

フル スカイアクティブ第一弾、CX-5のポテンシャルの高さは期待どおりだった。次は高トルク ディーゼルを搭載したモデルのパフォーマンスを味わうのが楽しみだ。

●全長×全幅×全高:4540×1840×1705mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1440kg<1510>
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1997cc
●最高出力:114kW(155ps)<113(154)>/6000rpm
●最大トルク:196Nm(20.0kgm)<195(19.9)>/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:横置きFF<フロント横置き4WD>
●燃料・タンク容量:レギュラー・56L<58>
●JC08モード燃費:16.0km/L<15.5>
●タイヤサイズ:225/65R17
●当時の車両価格(税込):220万円<241万円>
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