4月から新たな生活を迎える学生や社会人にとって、いまはまさにお部屋探しシーズンの真っただ中。安くていい部屋にめぐり逢いたいものだが、そんな気持ちを利用し、都合のよい言葉ばかりを並び立てて契約させようとする、一部のダーティな不動産屋にも気をつけたい。

強引な営業などネガティブなイメージも拭えない不動産業界だが、その裏側の闇に切り込んでいるのが、現在NHKにてシーズン2が放送中の山下智久主演ドラマ「正直不動産」だ。

嘘を並べる巧みなセールストークで契約を稼ぎまくっていた不動産営業マンの永瀬財地(山下)だが、ひょんなことから嘘がつけなくなり、デメリットまで客に伝える”正直すぎる”営業スタイルへと一変。詐欺まがいな営業を行うライバル会社とのバトルなど、不動産業界をサバイブしていく様子がコミカルに描かれる。

不動産業界でよくある具体的なトラブルを知識と共につぶさに描いており、見ているだけでいろいろと学べる、“タメになる”点も魅力の一つ。なかには客と不動産業者側の情報の格差につけ込んだ悪徳な手段も登場するので、部屋を探しているという人に向けて、注意すべき点を紹介していきたい。

■オーナーが嫌がらせ!?安い部屋には裏がある

お部屋探しにおける第一条件として挙げられるのが、やはり家賃だろう。賃料は安ければ安いほどうれしいが、建物が古かったり駅から遠かったりと値段相応のデメリットがつきもの。“安くてよい部屋には裏がある…”そんな教訓が込められているのが、シーズン1の第1話「嘘がつけなくなった不動産屋」だ。

永瀬が勤務する登坂不動産の新人である月下(福原遥)は、初めての一人暮らしをする学生のため、相場よりもグッと家賃が抑えめの物件を見つけてくる。内見を終え、あとはハンコを押すだけだったが、一歩手前、安さのカラクリに気づいた永瀬がそのワケを暴露してしまう。

部屋も清潔で広く立地もいいが、入退去のペースが異常に目まぐるしいこのアパート。実はオーナーがストーカーを装い、無言電話などの嫌がらせで入居者を追い出して敷金と礼金で儲けを出していたのだ。しかもあえて趣味の悪いカーテンやカーペットを用意し、入居者が処分したら「原状復帰不可能」として敷金を返さないという汚さ。

契約が決まるたびに不動産会社にも仲介手数料が入るため、悪さを隠してそのまま契約させるという不動産屋もいるかも。安すぎる物件に出会った際には、一度疑うことが必要だ。

■仮押さえ後に家賃を増額されてしまったら?

シーズン1の第2話「1位にこだわる理由」では、部屋を仮押さえしたあとに家賃が上がってしまうというトラブルが登場する。この話は、永瀬のライバルである桐山(市原隼人)が若い夫婦に勧めた賃貸物件が急遽1万円値上がりし、紆余曲折を経て永瀬がその後始末に奔走するというエピソードだ。

預かり金を支払ったあとの値上げという詐欺まがいなやり口に激怒し、預かり金を返すよう迫る夫婦に対し、永瀬が放ったのは「もちろん返ってきます。“まともな業者なら”」というまさかの言葉。契約が成立しない場合は、預かり金は返還されるものだが、なかなかお金を返してくれないところもあるようだ。

また永瀬が「オーナーは最初から値上げをするつもりだったのでしょう」と説明したように、確実に借り主を見つけ、なお家賃収入を少しでも多くするため、安めの家賃で客を釣る悪どいやり方をするオーナーもいるよう。ドラマではのちにオーナー側の事情が判明し丸く収まったが、貸し主の立場が有利なことを利用した信用ならぬオーナーには気をつけたい。

■突然の家賃の値上げは応戦可能!

賃料の値上げの話は契約時に限ったことでなく、住んでいる最中に突如オーナーから値上げを伝えられるというケースも。スペシャルドラマのなかでは、大家から値上げを突きつけられた苦労人大学生の槙野(佐々木春香)が、永瀬にどうにか値上げを止めてくれないかと相談に訪れる。

よくありがちなケースだが、借地借家法で定められているように、大家といえども正当性がない限り一方的に増額を請求することはできず、入居者も拒否することが可能だ。さらにドラマでは、槙野が大家から「値上げに応じないなら、家賃を受け取らない。家賃滞納として契約不履行になる」と脅されるが、これも永瀬が「法務局が家賃を代わりに受け取る供託システムがある」と一刀両断。

とはいえ、正当な理由がある場合は値上げを断り続けていると大家との関係性が悪化し、なんだか住みづらい…というケースもあり得るので、そこは慎重に判断したいところだ。

■審査に落ちてしまった時のNG行為とは?

高齢化社会の対策として、保証会社への加入が必須という物件が昨今では増えているが、審査に落ちてしまったら…。シーズン2の第4話「信用って何だ?」は入居審査をめぐるエピソードとなっている。

バーテンダーの藤森(佐藤寛太)とその恋人の美玲(恒松祐里)は、2人で住む部屋を探しに登坂不動産を訪れるが、藤森が過去にカード事故を起こしていたため審査に落ちてしまう。なかなか突破口が開けない状況にしびれを切らした藤森は、職場の同僚から聞いた“裏ワザ”としてアリバイ会社の利用を永瀬に相談する。

永瀬が「それは違法です」と拒否したアリバイ会社とは、審査に必要な給与明細や在籍証明書を偽造する会社で、これらは私文書偽造罪などの罪に該当し得るNGな行為で、依頼者も罪に問われる可能性も。

劇中では、永瀬と藤森の会話を盗み聞きしていたミネルヴァ不動産の西岡(伊藤あさひ)が迫ったように、アリバイ会社を公然と利用する不動産もあるそうなので、注意が必要。そもそもブラックリストに乗らないためにカードの料金、ローンなどは滞納せずに払うように気をつけたい。

これら以外にも、すでに契約が決まっている物件の情報をネットに載せて、来店するように仕向ける「おとり物件」といった罠から、家賃滞納といったトラブルまで、多彩なケースを扱う「正直不動産」。

賃貸だけでなく売買契約についての役立つ情報が満載なので、新生活を機に新たな居を構えることを検討中の人は、チェックしてみてはいかがだろうか?

文/サンクレイオ翼