2024年は日本のエンタテインメント業界にとって、記録と記憶の両方に残る年となりそう。なぜなら「ゴジラ」や「侍」など日本にルーツを持つ作品や日本発のコンテンツが、海をわたり世界中で熱狂の渦を巻き起こしているからだ。今回はそんな話題作を一挙に振り返ってみたい。

2024年になって早々1月7日にリリースされた、アニメ「マッシュル-MASHLE-」第2期のテーマ曲であるCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が、海外で30か国以上のiTunes HIPHOPチャートで1位を獲得し、Apple Musicのグローバルチャートでは最高2位にもランクイン。わずか1か月間で全世界でのストリーミング累計再生回数が1億回を突破するなど、まさに世界的な大ヒットを記録し、日本のアニメ界やヒップホップ界、音楽界が世界から熱い視線を浴びることとなった。

続いて2月15日にNetflixで配信となった賀来賢人原案、主演のドラマ「忍びの家 House of Ninjas」は、「今日のシリーズTOP10」の項目で日本、インド、香港、タイなどを含む世界16の国と地域で1位を獲得。さらに世界92の国と地域でTOP10入りを果たし、大きな話題を呼んだ。本作では日本ならではの“忍者”というコンテンツを活かした、ひと時も見逃せないスタイリッシュなアクションと、家族ドラマに世界中がくぎ付けになった。

さらにNetflix作品でいうと、いま最も話題となっているのは鈴木亮平主演で大人気コミックを映画化した『シティハンター』だろう。Netflixの「週間グローバル TOP10(非英語映画)」(4月22日~28日)で初登場1位を記録、さらにフランス、韓国、香港、ブラジルなどを含む世界32の国と地域でも週間TOP10入りを果たし、その再現度やアクションのクオリティの高さにSNSでも絶賛の声が相次いでいる。

映画界でいえば、今年は日本が生んだ世界に誇る怪獣“ゴジラ”生誕70周年となるアニバーサリーイヤー。そんな記念すべき年、日本時間3月11日に行われた米国アカデミー賞授賞式で、映画『ゴジラ-1.0』(公開中)が、日本映画では初めての視覚効果賞を受賞する快挙を達成した。日本映画界においては、まさに“ゴジラの足跡”のような、大きな一歩を歩みだしたと言えるだろう。

その後、日本でも4月26日に公開したばかりの米レジェンダリー・ピクチャーズが製作した「モンスター・ヴァース」シリーズの最新作『ゴジラxコング 新たなる帝国』(公開中)の世界累計興行収入が、5億ドルを突破するという驚異的な大ヒットを記録。Apple TV+でも、同じ「モンスター・ヴァース」シリーズのスピンオフにあたる、ゴジラ初のドラマシリーズ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」のシーズン2の製作も発表されるなど、しばらく“ゴジラ旋風”が収まる気配はない。

そして、いま最も世界で注目を集めているのが、日本にルーツを持つコンテンツと言っても過言ではない、ディズニープラス「スター」で配信中の戦国ドラマ「SHOGUN 将軍」だ。戦国の日本を描いたジェームズ・クラベルの小説「将軍」を基に作られた本作は、徳川家康など歴史上の人物にインスパイアされたキャラクターたちによる、陰謀と策略が渦巻く全10話のドラマシリーズとなっている(全話配信中)。ハリウッドで活躍を続けるレジェンド、真田広之が初めてハリウッドでの主演兼プロデュースを務めたことでも話題となっており、ハリウッドの製作陣と、日本人キャストに加え、日本の時代劇のスペシャリストが妥協なしで描いた戦国ドラマは、配信前から日本内外問わず期待値がバク上がりしていた。

配信を迎えると、ハリウッドならではのスケール感と、日本の時代劇とは一味も二味も違う重厚感で描かれる、侍たちのドラマに世界中が熱狂。北米では、「Hulu」で配信中のシリーズ作品のなかで、歴代最高の数字を記録する大ヒットスタートを切ると、海外の有力メディアがこぞって絶賛した。ロサンゼルスの街中に本作の広告が出現し、海外のYouTuberたちが新エピソードのリアクション動画や考察動画を次々に上げるなど、まさに社会現象化。4月23日に最終話の配信を迎えたいまでも、米レビューサイトのRotten Tomatoesでは批評家スコア99%という高得点を維持し、オーディエンス・スコアも91%と高い支持率を誇っている。

さらに、海外メディアなどを中心に、米テレビ界で最高の栄誉と称されるエミー賞での各賞の有力候補として、本作のキャスト陣の名が挙がっている。主演男優賞候補に、戦国一の武将である主人公の虎永役の真田広之とその家臣となった英国人航海士、按針役を務めたコズモ・ジャーヴィスが、主演女優賞に、按針の通訳であり物語の中心人物、鞠子役のアンナ・サワイ、助演男優賞に虎永の家臣でありながら、保身の為ならどんな手段も厭わない武将、樫木藪重役を演じた浅野忠信、助演女優賞に、海外でも「Fuji Sama」(藤様)の愛称で、多くのファンからも愛されたキャラクター宇佐見藤役の穂志もえかと、主要部門でのノミネートがささやかれているのだ。第76回エミー賞のノミネートは、現地時間7月17日に発表予定で、今年の9月には授賞式が開催される予定だが、果たしてエミー賞での“天下取り”の行方は?

言わずと知れた、日本が世界に誇るコンテンツである漫画やアニメだけでなく、音楽や映画、ドラマに加え、日本独自の文化ともいえる“忍者”や“侍”、そして“特撮”から生まれたゴジラに至るまで、日本のコンテンツが今年はかなりホットな存在となっている。引き続き、その動向から目が離せない!

文/山崎伸子