元日の能登半島地震では、ライフラインが大きな被害を受けました。その中でも特に影響が長引いているのが断水です。地震から4か月半が経つ今も被災地では3110戸で断水が続いています。

なぜ、復旧が進まないのか?地元住民、そして業者の声を取材しました。

珠洲市民「(水は)全然きてない。家大丈夫な人でも避難所におる。水が1番大切ですね。電気きとっても炊事、洗濯できん」

石川県内では、8日時点で珠洲市と輪島市でおよそ3110戸で断水が続いています。珠洲市ではそのうち6割以上、およそ1940世帯で断水しています。

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珠洲市では、4月11日に名古屋市と福島県郡山市から応援に入っている水道局の職員らが、地震で破損した配水管の交換作業を進めていました。今回の能登半島地震は、これまでに震度7相当の揺れを観測したほかの地震と大きな違いがあるといいます。

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名古屋市上下水道局・峰野成人さん「過去の熊本地震ですとか東日本の大地震がありましたけれども、それとはまたちょっと違う特徴がある。特に水を作る浄水場ですね、さらに浄水場に川から水を送る導水管というんですけれども、そのところから大元のところに被害がすごく大きかった」

珠洲市では、浄水施設の機能回復に時間がかかったほか、道路の崩落、陥没などの被害や、配水管の損傷箇所がほかの地域より多かったことで工事に時間がかかっているということです。



一方で、3月に断水が解消された穴水町ですが、いまだに給水所を利用している人もいます。山本真司さんは、今回の地震で準半壊と判定された築30年の住宅にひとりで暮らしています。給水所から水をくむのは2日に1回ほどだそうです。

穴水町に住む山本真司さん


山本真司さん(44)「Q.何リットル?これで40リットル。節約してるので割と余裕あります。余った分はふろ場にためて、トイレや掃除、洗濯に使っている」「Q.その生活が4か月…?いつもそんな感じなんで、もう慣れました」

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山本さんの自宅は敷地内にある配管から水が漏れています。穴水町の断水が解消されたとはいっても、自宅に水を引き込むには自力で対処する必要があります。地震から4か月半が経った今も水道が出ない生活を続けています。

山本真司さん「手動の洗濯機。停電はなかった。ただ水だけ出なくて…だから洗濯機は脱水用。そこ(洗濯機)にためるよりこっちの方が水が少なくて済むので」「配管の途中で水が漏れてるみたい。普通なら音聴とかで、どこの箇所が漏れてるかわかるんですけど、ここけっこう車通り多いので、音聴がきかないと言われまして…」

山本さんは、修理を依頼しているものの業者の手が回らない状態が続いていて、1か月ほど待っているということです。

所有者は自ら工事業者に修理を依頼する必要があります。一方で、地元業者も被災したため修理が進んでいないのが現状で、地元以外の業者に依頼すると移動にかかるガソリン代や宿泊費などが上乗せされることもあり、被災者に負担が生じていました。

今後の生活を考えると費用を抑えたい被災者も多く、工事が進んでいません。

こうしたことを踏まえ、県は8日、能登の6つの市と町で、居住地以外の業者に配管の修繕工事を依頼した場合に発生した経費の一部を県が補助することを決めました。

石川県・馳浩知事「上下水道の環境は、生活していくうえで必須。県として関わるし経費も負担する。一日も早く地元に戻ることができるよう願っている」

宅内配管の修繕待ちは、給水率90%の輪島市でおよそ500件、給水率70%近くの珠洲市では1700件に上っています。補助制度の活用がどれほど実効性のあるものになるのか期待する向きはある一方、地元の設備業者は…

森山設計・森山正幸代表取締役「(業者の数は)やっぱり少ない。もっとたくさん人が来れば、もっと水を出せる家が増える」

ただ、燃料費の限度額は「加賀市から珠洲市までの移動距離相当」で、距離に換算すると200キロ弱です。あくまで県内業者への依頼を想定しています。

森山設計・森山正幸代表取締役「ありがたいが、ただ県内だけじゃなくて県外の業者も受け入れしていただいて、県外からのお金を国が補助するみたいな形になれば良いと思う。要望したことに対して実現したのはありがたいことだが、ちょっと遅いかなという感じはある」


地域のつながりが強い能登では、「待ってでも、地元の業者に工事を頼みたい」という家庭も多くあります。

「多少時間がかかってもお願いねって言ったらわかったよって」

川辺さん夫婦「お風呂も穴水へ入浴支援に行ってます。3月までは自衛隊、4月からは穴水のふれあい文化センターで…それも5月までと言われてるのでなんとか5月中に直したいなと思ったらちょうどタイミングよく来てくださって」

川辺さん夫婦


穴水町の川辺さん夫婦の家では、元日の地震で地盤が隆起、浄化槽が破損し排水ができない状態が続いていました。

川辺さん夫婦「ここが穴開いとる」「穴開いとったんやね」「いま開いたんけ?これ、地震で開いたんやろうけど」「本当や、ひどいのになっとるな〜。これじゃもたんわね」

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工事を依頼してから3か月、ようやく8日に浄化槽の交換工事が行われました。

浜出産業・宮下政司さん「お客さんによく神様来た!って言われますけど、みんなに待たせているのに神様じゃないんだけどなと思いながら…」

能登ではそもそも工事にあたる地元業者の数が少ないことに加え、スタッフの多くが被災しているため作業がなかなか進んでいません。

浜出産業・宮下政司さん「地震の前から契約した現場もあってそれを仕上げないとダメ。それにまわらないといけないので、なかなかこういうところにも手つかずの所がたくさんある。1月の地震からの請求書をまだ出していない」「Q.どれくらいたまってる?200〜300。結局イスに座ってられない、常に現場に出ていかなならん」

待ってでも、信頼できる地元業者にお願いしたいと考える住民は多いです。不当な高額請求など詐欺被害のリスクを避けたいという思いもあるようです。

川辺さん夫婦「だまされないようにということでしょうね。高額な請求があとできたりとかいろいろなことがある。上水道のときも漏れていたので、それも直してもらった。役場の方からはたくさん県内の業者さんの名前がありましたけど、私はこの方に多少時間がかかってもお願いねって言ったらわかったよって」
浜出産業・宮下政司さん「待っててくれるだけでもありがたいんですけど、こちらとすれば申し訳ないなと常に思いながら…でも実際直す業者が少ないし、都会から来る人もあんまりおらんし、何とかしてあげようと思うけどなかなか…」

被災地住民の一刻も早い生活再建へ、行政にはさらなる支援拡充が求められています。