近年、コロナ禍の影響などもあって不登校となる児童、生徒が増えています。実際どのくらい増えているんでしょうか?

石川県内の不登校の児童・生徒数

教育委員会が調べた県内の不登校の児童、生徒の数の推移を示したグラフです。7年前の2016年には小学生が288人、中学生が975人だったものが、おととしの2021年になると小学生が794人、中学生が1595人といずれも増加しています。この調査には義務教育ではない高校生は含まれていませんから、高校生まで含めるとその数はもっと多くなります。

こうした中、不登校となった子どもたちへ学びの場を提供しようと、さまざまな取り組みが行われています。

子どもが不登校に その時、親は…

不登校となった娘の保護者 Aさん
「(子どもが不登校になったのは)高校1年生の時です。秋ごろなんですけど学校で人間関係のトラブルがあってだんだんと行けなくなってきて…まずはどうしていいか分からないですよね」

子どもが不登校になった当時の状況を語るのは、2人の娘をもつAさんです。

不登校となった娘の保護者 Aさん
「この先、高校も卒業できなかったら将来どうなっていくのかなという不安が一番大きかった。最初は通った方がいいんじゃないかな気持ちはあったが、でも(学校に)行けなくなったりとか、食事を摂れなくなったりもしたので、それを見てるとやっぱり行けとは言えなくなった」

不登校になった娘は現在、専門学校に進学し、他の子どもと変わらない通常の学校生活を送っているといいます。

不登校となった娘の保護者 Aさん
「いったん辞めて休憩をしてまた再度チャレンジをするというのが一番大きかったんじゃないかなと思う。親も悩むので相談できる場所というのがやっぱり一番必要だと思う。本当に何から手を付けていいのか分からないというのが一番大きいので、身近な相談できる方に相談するというのが一番良いんじゃないか」

急増する不登校に行政の支援策は

近年、不登校の児童や生徒が増加していることを受け、県教育委員会もさまざまな支援に乗り出しています。

県教委学校指導課 本田淳也さん
「生徒の状況をできるだけ早期に把握して、家庭訪問なども行って家庭と連携してできるだけ早期に対応して不登校にならないように、不登校の未然防止ということをまずは行っている」

県内の不登校の児童・生徒数はコロナ禍による影響などもあり、2016年から21年までの6年間で小学生が2.8倍、中学生が1.6倍と増加していて、その度合いは全国的な傾向と同様です。こうした状況を受けて、県では県内すべての公立学校にスクールカウンセラーを配置して、子どもや保護者の相談に応じています。このほかにも、県内19か所に教育支援センターを設け、学力の補充や学校へ復帰するための支援など、子どもが自立できるための取り組みを行っています。

県が打ち出した「別室登校」への対応策

さらに、先月27日には学校内で自分の教室ではない別の場所で学ぶ「別室登校」をする児童、生徒に対応するため、小中学校合わせて10校に専門の教員を配置することを馳知事が会見で明らかにしました。

馳知事
「(校内の別室は)児童・生徒にとって安心できる安全な居場所となり、学びの場、学校や他者とのつながりの維持や生活リズムを見直す場として大変重要であると認識している」

行政による不登校の支援が拡充される中、民間事業者による支援も広がっています。

子どもたちへ新たな学びを…

金沢学遊高等学院 小矢田学紀さん
「学習支援という立場だったので、勉強を見てあげたりすることで学校に行けるようになるかなと思いながらやってはいたが、ここ10年ぐらいかなり様子が変わってきて、その子たちに学習指導だけという部分だけで関わるとやっぱり解決にならない」

通信制課程の教材

金沢市を中心に訪問型の個別学習塾を営む小矢田学紀さん。小矢田さんは、もともと基礎学力や受験対策といった指導を中心に行ってきましたが、3年前から日本航空学園の通信制課程のサポート校となり、このプログラムを受講すれば高校の卒業資格を得られるようになりました。

金沢学遊高等学院 小矢田学紀さん
「我々自身が関わっていく中で高校卒業もそこまでちゃんと辿り着けることを担保してあげた状態で何かできないかと思って、全日制だとか他の学校ではできないような学び方をさせてあげたい」

この日は、不登校となった高校2年生の男子生徒の自宅で授業です。通信制課程の教材を使って数学の問題を解いていましたが…

金沢学遊高等学院 小矢田学紀さん
「前は取り込むのに時間かかったから、今日は15秒くらい」

「マインクラフト」の配信動画制作も授業の一環

突然、若者に人気のゲーム「マインクラフト」を始めました。

金沢学遊高等学院 小矢田学紀さん
「あれ立ち上げて、あれのコマンドがうまく機能するのを15秒録画しよう」

小矢田さんは、男子生徒が興味を持っている「マインクラフト」の配信動画を、生徒自らが録画して配信できるよう、その方法を教えていました。

金沢学遊高等学院 小矢田学紀さん
「彼がゲーム系の専門学校に行きたいと思うかどうか、それは分からないし別にそのためにやっているわけじゃない。ただ彼が興味があることを一緒に積み重ねていってそれがどこかに広がるかもしれない」

広がる新たな学びの場

また別の日には、小矢田さんの姿は金沢市内の別の個別学習塾にありました。この4月から県内の複数の個別学習塾が、小矢田さんの金沢学遊高等学院と提携して不登校の生徒のための指導を行うことになりました。金沢市十一屋町のMiBもそのうちのひとつです。

2023年からは石川県内5か所の学習塾とも連携

MiB 南岳司代表
「不登校の方、通信の方という相談を保護者の方から年に数名受けていて、実際に預かったことも過去にはあるが、今回こういう話をいただいたので、じゃあ本格的にやっていこうと。同じ志の先生方がいらっしゃるので、石川県でこういう波を作っていくというか、動きを作っていこうと」

この提携によって小矢田さんが行う訪問型の指導とは別に、金沢市に3か所、白山市と小松市に1か所ずつの計5か所の学習塾でも同様の指導が受けられるようになり、近く能登でも指導が受けられる予定です。

金沢学遊高等学院 小矢田学紀さん
「しっかりと勉強を見てあげられて、それから進路についての相談もきちんとできるそういうプロ集団を集めたかった。今回ひとつの形としてスタートをきることができた」

不登校の子どもに学びと救いを…
小矢田さんの思いが着実に広がっています。

多様な不登校の要因 求められるきめ細やかな対応

さまざまな形での支援が行われているんですね。

不登校となる主な要因

県教育委員会によりますと、子どもが不登校となる原因は、
▼無気力・不安
▼生活リズムの乱れ
▼友人関係などがあり、
多くの場合、どれかひとつだけではなく、いくつもの要因が複合的に重なり合っているといいます。

また、不登校といっても
▼学校には行けるけど教室には入れない
▼自宅から外へ出ることもままならないなど、
子どもによってさまざまですから、一口に支援と言ってもそれぞれの子どもに合ったきめ細かい対応が求められるわけです。

そういう意味で小矢田さんのような、ひとりひとりに合わせた対応が重要になるんですね。