将来の妊娠に備えて、卵子を凍結保存しておく「卵子凍結」の現状についてお伝えします。東京都は今年度、「卵子凍結」にかかる費用の助成規模を昨年度の10倍に拡充させました。凍結の希望者からは歓迎の声が聞かれますが、それでもなお高額となる医療費の負担は大きいようです。

この日、卵子凍結の検査を行うために都内のクリニックを訪れたのは、日常生活の動画などを投稿するYouTuber「えっちゃん」さんです。動画投稿の仕事が忙しいことや、現在、パートナーがいないことを踏まえて卵子凍結を決めました。

(YouTuber えっちゃんさん)「将来の事を考えた時に、選択肢を減らさないように卵子凍結をしてみようと思った」

自身のYouTubeで卵子凍結についても発信していて、同世代からの関心の高まりを感じているといいます。

(YouTuber えっちゃんさん)「動画を上げてから話を聞きたいとか、視聴者で同じ年齢で仕事が忙しくてとか、パートナーがいないとか、すごくためになったし悩んでいたから、検討するきっかけになったというコメントはもらっている」

卵子凍結に対して東京都は昨年度、1人あたり最大30万円の助成を始めました。当初、対象をおよそ200人と想定していましたが、先月28日までの申請が1468件と想定の7倍以上だったということです。

こちらのクリニックでも希望者が過去最多ペースで増加しています。

(はらメディカルクリニック 宮崎 薫理事長)「2023年は1年で487件卵子凍結をやっていたが、2024年はこの3カ月で、既に168件と、昨年に比べるとペースが早いというか、ニーズの高まりを感じています」

希望者が多い現状を受け、東京都は今年度、費用の助成規模を昨年度の10倍に拡充させました。

(はらメディカルクリニック 宮崎 薫理事長)「未受精卵凍結のアクセス促進にもつながるし、20万円の助成金決定したのは評価できることだと思う」

歓迎の声があがる一方、課題は助成の金額です。卵子凍結の費用は30万円から50万円ほどと見込まれる中、都の助成金額は昨年度と変わらず、1人あたり最大30万円のままです。

凍結を希望するえっちゃんさんは、助成を受けても負担が大きいと話します。

(YouTuber えっちゃんさん)「色んな理由があると思うが、仕事頑張りたい方が多いと思うので、いったん自費で払えると思ってやってるとは思う。私もその気持ちだったが、思った以上に費用がかかるので、かなり想像よりも出費だなと思いますが、人生の選択肢を増やすという大きなメリットがあるから、払う価値はあるかなと思いつつ、やっぱり痛いと思う」

クリニックによりますと、都が助成金について公表してから、卵子凍結への関心が高まっているようだということです。

実際に、卵子凍結に関する情報や助成金情報を発信するサイト「スリー」では、助成金が始まってからアクセス数が11倍〜12倍に増加したということです。

クリニックの医師は「今は共働きが当たり前になり、晩婚化は進む。卵子凍結は一つの手段になるが、生殖医療の知識や性教育のあり方も見直すべきでは」と指摘しています。