超人的な俊敏性:「サムライ」町井勲

 フィクションの世界では、吸血鬼や狼男などが、超人的な俊敏性、つまり並外れたバランス感覚や反射神経を持って描かれることがある。現実の世界でも、遺伝とトレーニングの組み合わせによって、超人的な動作を身につけた人がいる。

 たとえば、居合術家の町井勲氏は、自分に向けて放たれた6ミリのBB弾を、日本刀でまっぷたつにした。また、早撃ちの達人ボブ・マンデン氏は、10分の1秒以下で銃を取り出して正確に発射できる。これは、平均的な人間の脳の反応時間よりも速い。

 このような複雑な動作を無意識に計画し、実行するうえで、中枢神経系がどのような役割を果たしているのかについて、現在も研究が進められている。

超人的な記憶力:メンタルアスリート

 1組のトランプカードの順番を20秒で覚える。あるいは、数百人の見知らぬ人の名前と顔を数分で覚える。毎年開催されている「全米記憶力選手権」に出場するメンタルアスリートと呼ばれる人々の中には、こうした偉業をやすやすとこなす人がいる。

 イベントの創設者であるアンソニー・ドッティーノ氏によると、記憶力選手権の優勝者であっても、練習を重ねてきたことを除けば、特別なところはなにもないという。ドッティーノ氏は、息子のマイケル氏とともに、記憶力トレーニングプログラムを運営しており、記憶力は、年にかかわらず、誰でも向上させることができると話す。

 それを証明するため、マイケル・ドッティーノ氏は、神経科学者の協力のもと、記憶力トレーニングが脳の活動に与える影響について研究している。この研究によって、脳内にネットワークが形成され、それが新しい記憶と古い記憶を結びつけるという記憶術の仕組みがわかりはじめている。さらに、2017年3月8日付けで学術誌「Neuron」に掲載された論文によると、平均的な人でも、6週間ほどのトレーニングで記憶力を大幅に改善できるという。

 スーパーパワーは、誰でも手に入れられるということだ。