ジャーナリストの須田慎一郎が3月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が指示した自民党派閥の裏金事件をめぐる関係議員の処分について解説した。

【第91回自由民主党大会】自民党大会で総裁演説の冒頭、政治不信を招いている事を詫びる岸田文雄首相=2024年3月17日午前、東京都港区(春名中撮影) 写真提供:産経新聞社

【第91回自由民主党大会】自民党大会で総裁演説の冒頭、政治不信を招いている事を詫びる岸田文雄首相=2024年3月17日午前、東京都港区(春名中撮影) 写真提供:産経新聞社

自民党派閥の裏金事件、岸田自民党総裁が関係議員の処分を指示

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岸田総裁)不記載の金額や程度、これまでの役職等の議員歴や説明責任の果たし方など、状況を総合的に勘案し、党紀委員会の議論を経て厳しく対応してまいります。

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演説のなかで岸田総裁は、党派閥の裏金事件に関係した議員の処分について、茂木幹事長に対し結論を得るよう指示したことを明らかにした。

裏金問題に決着をつけ、反転攻勢につなげていきたい岸田総理

飯田)処分について注目されていましたが、まず党紀委員会に預けるのですね。

須田)岸田総裁としては裏金問題に決着をつけ、何とか反転攻勢につなげたいのでしょう。国賓待遇でアメリカへ行き、そのあと水面下で北朝鮮との関係を改善する動きがあるようですが、そういった外交上の成果をきっかけに反転攻勢を仕掛けたいのだと思います。そのためには、どんな形で決着をつけるのか。処分の問題や党則・党規約、ガバナンスコード等々の改正を通じ、党として再発防止策の決着をつけるという青写真を描いているのだと思います。

政治資金規正法違反には連座制を適用し、除名や離党勧告などの重い処分を盛り込んだ

須田)処分については党紀委員会に任せるのだと思いますが、もう1つ心配だったのは党則・党規約、ガバナンスコードに関して、場合によっては党大会で動議が出てくるのではないかということです。「総理総裁に一任された」と言われている改正案ですが、その後、「あのときの協議では一任していない」というような意見が出てきて、場合によっては党大会で動議を出すという方向になった。どこが引っかかったのかと言うと、政治資金規正法違反の場合、一義的に責任が問われるのは会計責任者や秘書ですが、それに対して連座制を適用し、除名や離党勧告というかなり重い処分もそこに盛り込んだのです。これが1点目。

「派閥の禁止」に関して麻生派とどのような決着がついたのか

須田)また、2点目がポイントなのですが、派閥の禁止です。ガバナンスコードにおいて派閥禁止を盛り込んだ。とりもなおさず麻生派、麻生太郎副総裁に対し、ある種の刃を突きつけた格好になりました。その辺りから不満が出てきたのだと思います。しかし結局、動議が出てくることはなかった。どんな決着がついたのかは非常に興味深いのですが、何とかやり過ごすことができたのです。

総裁決定や法案などの了承について、派閥があれば早く意思統一ができる

飯田)ガバナンスコードについては、「資金力と人事への影響力を背景に議員を集め、数の力によって影響力を増やそうとする組織を『派閥』と定義し、派閥の存続・新設を禁止する」と書き込まれました。派閥禁止が盛り込まれたなかで、麻生氏は一旦、矛を収める形になったのですか?

須田)そうは言っても、「どうやって総裁を選ぶのか?」ということです。個別の議員がバラバラに動いていたのでは、総裁決定のプロセスを踏むことができない。時間も掛かるでしょうし、意思統一を図るのも大変です。議院内閣制ですから、例えば法案や法律については自民党内の部会で揉み、政務調査会にかけて、最終的に総務会で了承を得るという手続きがいるのです。しかし、議員がバラバラだと意思統一のしようがないという状況があります。

政策勉強会という形で法案などが処理できるのか

須田)派閥内で意思統一を図るような作業ができたところは、派閥に関するプラスの側面として、スピード感という意味ではいい部分もあったのです。それがまったくない状況のなか、政策勉強会という形で処理できるのかどうかの問題はあると思います。政策勉強会のリーダー役が「今回は私の顔を立てて、ここは呑んでくれ」と言ってみたところで、「あなたの顔を立てても人事で処遇されることもないし、金ももらえないではないか」という意見は出るでしょうからね。

飯田)「何のメリットがあるのか」と。そうなると結局、表は切り離しているけれども……という傾向になるのでしょうか?

須田)どういう形でプロセスをつくるのかが大事です。おそらく政策勉強会的なものは、これからできると思います。そういった動きが水面下で起こっていますからね。

飯田)当然、政策ごとに賛否もあるし、1人で考えるよりもいろいろな人の意見を聞いた方がいいものができる。

須田)それが自民党の部会的な看板になるのか、政策勉強会という看板にするのか。そういう動きが水面下で起こっているのは間違いありません。

今後は人事や金について「幹事長に一任」となるのかどうかがポイント

須田)ではどうやって意思統一していくのか。飯田さんが先ほどおっしゃった「メリットは何か」という問題もあります。

飯田)そのままオフィシャルにやろうとしたら、人事や金を握る人は幹事長だけになってしまいますよね。メリットがそこに集中する形になりませんか?

須田)幹事長の意思決定はどうするのか、幹事長代理や副幹事長を含めて進めるのか……。「幹事長に一任する形ではないのかどうか」が1つのポイントだと思います。

飯田)そうなると役職など、党全体の組織にまで関わってくる。

須田)そう思いますね。