政策アナリストの石川和男が4月6日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のエネルギーリテラシー」に出演。発生から13年が経過した東京電力福島第一原発事故の現状と今後の課題について専門家と議論した。石川は「作って、廃炉して、きちんと処理するまでが原子力産業。そのためには、今後も人と資金が必要で、原子力の技術をどんどん高度化させていく必要がある」と指摘した。

福島第一原子力発電所   ac

福島第一原子力発電所   ac

先月11日で、発生から13年が経過した東京電力福島第一原発事故。東京電力が2011年12月に決定した中長期ロードマップでは、原子炉内の冷却機能が失われ核燃料や構造物が溶けて冷え固まった「燃料デブリ」の取り出しを、2021年12月までに行うと目標設定されていた。ただ、コロナ禍や安全性の向上などを理由に目標時期を約2年延期し、2023年度末までとした。

今後の廃炉作業の見通しについて、ゲスト出演した東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授の岡本孝司氏は「デブリがある1〜3号機のうち、アプローチしやすい2号機から進めている。どのようにして溶け落ちたのかを、まずは一部を取り出して分析し、相手を知らなければ進まない。その取り出し作業を今やっているが、安全を最優先して慎重に行っているため、どうしても遅れてしまう。もう2年遅れているが、おそらく今年10月までにほんのわずかだが一部を取り出して分析できるだろうと考えている。本格的な取り出し作業はその後だ」と語った。

また、今後の日本の原子力政策のあり方について問われた岡本氏は「昨年12月に開かれたCOP28(第28回国連気候変動枠組条約締約国会議)でも、少しどうかとは思うが世界の原子力を3倍にするという宣言がなされた。仮に日本が原発をやめても、中国をはじめ世界では原発建設が進んでいく。3倍になると、いま世界に約400基ある原発が約1200基になる。そこで、これまでに日本が培ってきた技術をカーボンフリー実現のために世界に対して使っていかなければならない。ただ、この13年間止まってしまっている。そういう意味では日本の技術力を韓国は抜いたし、下手すると中国にも抜かれる。冗談抜きで、背に腹は代えられなくなって、20年後に中国製の原子力発電所を日本が輸入せざるを得ない事態も考えられる。そうならないために、わずかずつでも研究開発を進めていったり、国内での新設には時間がかかるかもしれないが、東南アジアなどエネルギーを必要としている海外へ日本の安全な原発システムを売っていくなどの動きが必要。そうしないと廃炉のための経費も出てこない」と訴えた。

さらに石川は「作って、廃炉して、きちんと処理するまでが原子力産業。そのためには、人も資金も必要。今後もキャッシュフローを生んでいくためには、原子力の技術をどんどん高度化させて、人を集めて資金を生み出す必要がある」と指摘した。