中国依存脱却の動き活発化

三菱商事は5日、カナダ鉱山会社フロンティア・リチウムのリチウム生産事業に出資参画すると発表した。同国オンタリオ州で鉱山と精製プラントを開発し、2027年ごろから生産を開始する。事業運営会社に2500万カナダドル(約26億円)を出資し、株式7・5%を取得する。電気自動車(EV)用のリチウムイオン電池(LiB)に使う化成品の生産までを現地で手がける。中国に集中する重要鉱物のサプライチェーン(供給網)を分散する動きが活発化している。

※自社作成

三菱商事がリチウム権益を獲得するのは初めて。フロンティア社がオンタリオ州のリチウム事業のために新設する会社に7・5%出資し、さらに25%まで株式を買い増す優先交渉権も取得した。

同事業では20年超にわたって、炭酸リチウム換算でEV約30万台分に相当する年間約2万トンのリチウム生産を見込む。27年ごろにガラスやセラミックス向け高品質精鉱の製造を開始し、30年ごろにはLiB向けリチウム化成品の生産開始も目指す。加工品は主に北米向けの出荷を想定する。

EVなどを最終用途とするリチウムは長期的な需要拡大が見込まれる一方、加工工程の6割超を中国に依存し、サプライチェーンの分断リスクが懸念されている。三菱商事は北米でリチウム精製まで一貫して手がける体制を構築し、安定供給に取り組む。

大手商社ではEVなどに使われる重要鉱物について中国以外での開発競争が活発化している。リチウムをめぐっては豊田通商がアルゼンチンの塩湖で権益を持つ。三井物産はマイクロ波化学と共同でリチウムの熱処理工程を電化する技術を開発中で、26年の商用化を目指す。電力を再生可能エネルギーで賄えば環境規制が強い地域でも製錬でき、中国依存の脱却に寄与する。

LiBに使うニッケルはインドネシアと中国に加工工程の約6割が集中しており、住友商事がアフリカのマダガスカルでニッケル精錬まで手がける事業を展開し、安定操業を目指す。

EVや風力発電のモーター磁石に使うレアアース(希土類)では、双日が23年に豪州のレアアース大手ライナスに追加出資し、新たな供給契約も締結。加工工程の約9割を中国に頼るレアアース供給網の分散を進める。

また丸紅がEVや再生エネのインフラに使う銅について23年末に南米で精鉱生産能力の拡張を決めた。伊藤忠商事はカナダの高品位鉄鉱石を使った還元鉄の生産事業に参画し、金属生産の低炭素化を進めている。