お茶の水女子大学は米スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授によるワークショップを同大産学交流会の企業向けに開いた。シービンガー教授は「年齢や障がい、ジェンダーや民族性など複数の要素の重なり(インターセクショナリティー=交差性)を分析してデザインすることは、新市場開拓と社会的公平性の両面で重要だ」と強調した。

シービンガー教授は男女の違いを考慮した医療やモノづくりの「ジェンダード・イノベーション」の提唱者。欧米ではすでにその先の「多要素」への配慮が進んでいると紹介した。

例えばスタンフォードロボット研究所は「社会経済的地位」と「ジェンダー」の交差性に着目。裕福な家庭の住まいの構造・インテリアの中で、女性的な外観のロボットが作業する設計になっていると気付き、改善を図った。交差性の因子(要素)は一般的に12程度だが独自設定する場合もあり、米アップルは右利き、左利きの両方に配慮するという。

シービンガー教授らが開発したカードを使ったワークショップでは、新たなキッチンの開発について議論したグループから「家事に不慣れな家族に料理手順の音声ナビをする」「家電を身ぶりで操作」「エクササイズしながら料理する」など、ユニークなアイデアが飛び出した。

物流の担い手不足を考えたグループからは、担い手を高齢者や女性に拡大するため、地域ボランティアとの融合、アシストスーツの活用などの案が浮上。参加者は多様性の切り口がビジネス、公共性の両方で効果を引き出すことを体感した。