波佐見焼の窯元を営む夫婦。今年、新しい工房をオープンしました。

「環境に配慮しながら焼き物を」 思いを形にする挑戦です。

3月30日31日には、カフェや雑貨店が並ぶ波佐見町「西の原」で、ポップアップストアも行います。

▼「楽しく」「愛らしい」 時代の波を取り入れる波佐見焼を

波佐見町にある工房studio wani。

そこでろくろを回すのは、綿島健一郎さん41歳と、ドイツ出身で綿島さんの妻ミリアムさん41歳です。

カラフルな恐竜がデザインされた茶碗やカップ。蜂やダンゴムシなどのかわいらしい昆虫の柄も。

夫婦で、食卓を「楽しく」彩る愛らしい波佐見焼を生み出しています。

(綿島 健一郎さん)

「波佐見は流行に合わせて常に変わっていくから、割と新しいものとか新しい人を受けるような体質、姿勢がある」

(妻 ミリアムさん)

「産地としても便利さとか、歴史文化もありながら、すごく自由にさせてもらっている」

▼運命の出会いも「波佐見」

どんな時もとことん話し合うのが、2人のルール。

(綿島 健一郎さん)

「僕の波佐見の窯元のバイト先が、ミリアムが住んでいたところのすぐ横。ご飯を一緒に作って食べていたら仲良くなっていた」

出会ったのもここ、波佐見町でした。

健一郎さんは、熊本県出身。10年前に陶芸を学びに波佐見町にやってきました。

ミリアムさんは12歳で、ドイツの学校の陶芸部に入部。

「陶芸の魅力」にひかれ日本に留学し、12年前から波佐見町で働いています。

(妻 ミリアムさん)

「自分でろくろを回すのが楽しい。土のただのかたまりなんだけど、回して手を付けて器ができるのが一つの魔法。飽きない」

それぞれ、別の工房で働いていましたが、2016年に結婚。

次の年から、空き家を活用して2人で工房を開業しました。

それから7年、夫婦2人3脚で器づくりを続けています。

(綿島 健一郎さん)

「(2人で)手作りでやりたいなと。表情ゆたかな作品を心がけている」

▼「仲直り」も大事な仕事のひとつ

家庭でも、2人3脚は変わりません。

今は2歳と5歳の2人の子育ての真っ最中。食事の用意も洗濯も、すべて2人で行います。

喧嘩も多いそうですが、お互いを支えながら、仕事と育児を両立しているんです。

(妻 ミリアムさん)

「仲直りするのはだいぶ上手になってきたね」

(綿島 健一郎さん)

「(けんかすると)仕事がはかどらない。仲直りをするのが仕事」

そんな2人は、今年、新しい挑戦を始めるため、新しい工房に引っ越しました。

(綿島 健一郎さん)

「これは電気窯。前はガスで焼いていたが、変えた」

これまでガス窯で続けてきた器づくりを電気窯に変えたのです。

▼電気窯に変えたワケ「地球環境を犠牲にしたくない」

(綿島 健一郎さん)

「ガスも使うし一酸化炭素も輩出する。化石燃料を使ってCOガスを出していて、地球環境を犠牲にしているのは間違っている」

子どもたちの未来のためにも、自然への負荷がかからない作り方を選んだのです。

ただ、窯を変えれば、器の出来具合も変わります。

この日は大きい電気窯での最初のテスト。

焼きあがったものは・・・

(綿島 健一郎さん)

「ちょっとクリーム色になる。酸化で焼くと。還元で焼くとこんな普通の白で酸化で焼くと黄色みがかったような色になる」

ガス窯は「炎」で直接、器を焼きますが、電気窯は電熱線を温めた「熱」で焼くため、原料が同じでも、仕上がりに違いが生まれるのです。

(綿島 健一郎さん)

「ほぼすべてかわる。生地の色も変わるし、焼き締まり方も変わるし、絵の具の発色とか釉薬の解け具合とか全部変わる」

これまでのやり方を全て変えて、新しい窯に合わせた方法に。

目指すのは、温かみを感じる器です。

(妻 ミリアムさん)

「黄色みが多い焼き上がりになっていて、緑も黄色っぽくなる。ちょっと調整した」

伝統の和紙染で絵付けするのはミリアムさん。

新商品の子ども用食器に描いたのは、動物や昆虫。思わず心が弾む器が出来上がりました。

(妻 ミリアムさん)

「家族の食卓が楽しくなるきっかけだと思う。盛り付けるお父さんやお母さんも、“可愛いな”と食べてくれたらいい」

健一郎さんも、新商品の制作に取り組んでいます。

(綿島 健一郎さん)

「竹籠編みの模様をそれを彫りで表現。人がやらないようなことをやっていったらたどり着いた」

コストや時間と戦いながら、どんな商品を作っていくか試行錯誤の毎日です。

この日2人が訪れたのは、カフェや雑貨店が並ぶ「西の原」。

今月末、ポップアップストアを行うことが決まりました。

新しい電気窯で焼いた商品をはじめて、お披露目する機会になります。

(西の原 徳島雅子さん)

「手触りや持った時のフォルムの感じ。絵付けも可愛い。お客様にスタジオワニの作品に出会ってほしい」

(妻 ミリアムさん)

「新しいスタジオワニを広めたい。 いっぱい来てくれると嬉しい」

▼電気窯を使いこなし、新たな工房で新たな挑戦へ

新しい工房で再出発した2人。

(綿島 健一郎さん)

「会話が弾む器というのをコンセプトに、人とのかかわりを大事にして、波佐見だからできる利点を受け入れてやっていきたい」

(妻 ミリアムさん)

「とにかくわくわくできるクリエイティブな空間が作りたい。その空間が相手に伝わるような器ができたらいいなと思う」

2人で決めて、2人でつくる波佐見焼の器が、食卓に笑顔を届けます。

波佐見町の西の原で行われるポップアップストアは3月30日と31日。

新商品が並ぶほか、会場では絵付け体験のワークショップも開催されるということです。