2024年1月から新NISA(NISA:少額投資非課税制度)がスタートし、3月には日経平均株価が4万円を超えるなど、株式市場は好調さが続いている。NISAをきっかけに投資を始める人も多く、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称、オルカン)や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を積み立てるのが“勝利の方程式”のように言われている。実際、新NISAが始まり、ほかの投資家はどのような商品を購入しているのだろうか。
『1時間でマスター!マンガと図解でわかる 新NISAの教科書』などの著書を持ち、マネックス証券、マネックス・ユニバーシティ室長で投資教育を行う福島理さんに、NISA口座で買われている投資信託を分析してもらった。

◆◆まずは投資信託の積立投資でいい

 そもそもNISAとはどのような制度か。

「投資によって得られる譲渡益や配当などの利益には、約20%の税金がかかります。例えば、20万円で買った株式が30万円に値上がりして売ったとすると10万円が利益ですが、約20%の税金を差し引いた約8万円しか受け取れないのです。ところが、NISA口座で売買したものについては、この税金がかからず、10万円をまるまる受け取ることができるのです。また、保有している間に配当金をもらった場合も税金がかかりません」(福島さん)

 このNISAが2024年から大きく改正された。

「投資限度額が最大1800万円に拡充されたほか、これまで期限があった非課税保有期間が無期限になりました。さらに、売却すれば非課税枠が復活し、またNISAで投資することが可能になるなど、利便性が飛躍的に向上しました」(福島さん)

 新NISAでは、一定の投資信託だけが買える「つみたて投資枠」(年間120万円)と、投資信託だけでなく株式も購入できる「成長投資枠」(年間240万円)がある。どちらも投資信託の積立は可能なため、「年間で360万円まで積み立てることができる。まずはコツコツと積立投資をするだけで十分です」と話す。

「雑誌などで資産1億円以上を持つ『億り人』が話題になりますよね。彼らのように株式投資をして短期間で資産を一気に増やすのはとても魅力的ですが、投資の王道は『長期』『分散』『積立』の3つです。新NISAでは最大年間360万円まで積み立てができるので、まずは投資信託の積立投資をベースにするのがいいでしょう」(福島さん)

◆◆NISAの積立投資では何が最も買われているのか?

 では、投資家はどんな投資信託を積み立てているのだろうか。マネックス証券NISAつみたて投資枠における買付UU数を福島さんに分析してもらった。

「投資信託で一番の人気はやはりeMAXIS Slimの米国株式(S&P500)と全世界株式(オール・カントリー)で、合わせて6割以上の投資家が買っています。手数料にあたる『信託報酬』も0.09372%と0.05775%と、ほかの投資信託よりも低く、長期的に投資するのに適しています。

 ランキングを見ると、20年以上も右肩上がりが続いている米国株へ投資するファンドは人気で、
3位:iFree S&P500インデックス
13位:SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
14位:楽天・全米株式インデックス・ファンド
など、S&P500や米国株に連動するファンドが上位にランクインしています。

 また、オルカン同様、全世界あるいは先進国に投資するファンドも人気で、
7位:iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジなし)
8位:eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
20位:ニッセイ外国株式インデックス
などがあります。

 米国株や全世界への投資が目立ちますが、日経平均もバブル時の高値を超え、さらに4万円を突破しており、好調な日本株を買う動きも強く、
5位:iFree 日経225インデックス
12:eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
21位:iFree TOPIXインデックス
22位:eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
など、日経平均やTOPIXに連動するファンドが上位に入っている点も特徴です」

◆◆今後の米国株市場と日本株市場は?

 今後も、日本株は好調な推移が続くのか?

「海外の株式市場と比べてあまり上がっていなかった日本株市場は、円安の効果もあって海外投資家から見て割安さがあり、2024年に入っても好調に推移しています。今後、日本の金利が正常化に向かうことが予想されますが、今のところ一気に進む様子はなく、今のトレンドはしばらく続くでしょう。

 とはいえ、日本の金利が上がり、米国の利下げがあった場合、日米金利差が縮まり、円高に進む可能性はあります。円高は輸出企業にとってマイナスですが、インバウンド需要の高まりや小売りを中心とした内需関連株は強く、金利上昇によって銀行株も買われることが期待されます。

 変わらず強い米国株に連動して、日本株も強い動きを見せることが予想されます。この20〜30年、世界の株式市場に後れをとっていた日本株でしたが、これから高いパフォーマンスを発揮するかもしれません」(福島さん)

 新NISAでも頻繁な売買は可能だが、制度のメリットを最大限生かすには、長期・超長期投資を前提として積み立てていく戦略がいい。そのため、福島さんは次のように新NISAの戦略を考えているという。

「投資の王道は『長期』『分散』『積立』ですから、米国株や先進国ではなく、“オルカン”のように、より分散投資になる全世界に投資する投資信託を長期で積み立てるのを基本とするのがいいでしょう。それに加えて、資金に余裕があるなら、より高いパフォーマンスを求めて米国株のインデックスファンドを追加したり、これから高いパフォーマンスが期待される日本株のインデックスファンドを追加する戦略がいいと思います」(福島さん)

プロフィール
マネックス証券、マネックス・ユニバーシティ室長
福島 理(ふくしま・ただし)
日本テクニカルアナリスト協会国際認定テクニカルアナリスト。金融リテラシー向上のための教育活動に従事。テレビ、ラジオのほか、雑誌やWebでコラムを執筆。著書に『1時間でマスター!マンガと図解でわかる 新NISAの教科書』(扶桑社)、著書に『勝ってる投資家はみんな知っている チャート分析』シリーズ(扶桑社)がある。