いま、X(旧Twitter)で“産休クッキー”なるものが物議を醸している。
 これは妊娠中の女性が産休に入る前に職場で配った「産休をいただきます。ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いします。」というメッセージ入りのお菓子のことだが、「かわいい」「私も産休に入るときに配りたい!」という肯定的な声も見られるが、全体的には否定的な声が多い印象だ。

 そこで今回は実際に産休前の挨拶にお菓子などをもらった経験のある人に話を聞いてみた。同時に、全国の男女100人を対象にインターネット調査を行ってみたところ、驚きの結果に……。

◆「いったい何がダメなの?」

 まず、アリ派の意見はこうだ。

 人材派遣会社に勤める桐生まきさん(37歳・仮名)は同じ部署であまり絡みのない後輩から産休クッキーをもらったそうだが、「普通に嬉しかったですけど。いったい何がダメなの?」と話す。

「SNSでバズったようなクッキー1枚ではなく、いろんな種類の詰め合わせでした。男の子が生まれるとわかっていたらしく、男の子の赤ちゃんのクッキーやサッカーボールのクッキーが入っていてかわいかったです。すごい手が込んでるなぁって」

 桐生さんは後輩の妊娠を全く知らなかったようで「こういう発表の仕方もあるんだ!」と感心したようだ。

「私が出産したのはもう10年くらい前だから、本当に限られた上司にしか話さなかったんですね。出産してからたくさんお祝いをもらってしまって恐縮だったので、先にちょっとしたギフトを渡しておくのがいいかもなって思いました」

 その後輩は部署で最年少、他の女性社員はみんな30代後半以上の子持ちだといい、産休クッキーの評判は良かったそうだ。

「特に50代のお局たちは喜んでましたよ。『休むんだからこれくらいしてもらわないとね』なんて言いながら笑っていました」

◆妊活中の同僚がいるなかで「職場がピリつきました」

妊娠検査薬 一方で、「私は反対ですね」と話してくれたのは、長澤麗香さん(29歳・仮名)。彼女も先日、産休クッキーをもらったとか。

「まさに同期の話なんですが『産休に入るので』とクッキーを配ってくれたのですが、職場がかなりピリつきました」

 麗香さん自身は「特に何も思わなかった」そうだが、まわりは「微妙な顔をしていました」と話す。

「私の部署は妊活をしている人が多いんですよ。直属の上司は34歳の女性なんですが、妊活のために通院していて、よく会社を早退したりするので。オープンに妊活を頑張っていて、みんなも応援しているけど、1年以上経っても赤ちゃんができない。そういう人もいるなかで、笑顔で産休クッキーを配られてもなぁ……というのは思いました」

 その妊活中の上司は「おめでとう」といって祝福していたというが、女性社員の中には「いたたまれない」「見てるこっちがツラい」という声も多かったんだとか。

 その産休クッキーを男性社員から「これもらってくれない?」と渡されたという麗香さん。

「全然知らなかったんですが、彼の奥さんは2人目ができずに妊活しているらしく『家に持って帰ったらヨメがテンション下がりそうだから』といっていました。奥さんに配慮していて素敵だなと思った反面、妊活している人が意外と多いことに驚きました」

 麗香さんは「妊娠はすごく嬉しいこと」だと前置きしたうえでこう話してくれた。

「私みたいな呑気な独身貴族は『クッキーありがとう』で済むんですけど、子供の問題はちょっとナイーブですね。大谷翔平もいってたけど、自分だけではどうすることもできない問題なので。かといって、せっかく妊娠して幸せな気持ちなのに、妊活してる人に気をつかって押し込めろ!というのも可哀想。正解がわかりませんね」

◆アンケート調査の結果はアリナシ半々だが…

 全国の20歳〜60歳までの男女100人を対象に、“産休クッキー”についてインターネット調査を行ってみたところ、結果は以下のように割れてしまった。

アリ……14%
どちらかといえばアリ……36%
どちらかといえばナシ……22%
ナシ……28%

 アリナシ半々という時点で受け止められ方としては微妙なようにも思う。

◆「私は配らないなぁ」

 グラビアアイドル兼ライターの筆者(吉沢さりぃ)も去年出産したが、会社員ではなくフリーランスなので、産休の挨拶として職場に配るお菓子などには無縁だった。

 賛成派でも反対派でもないが、実際のところ「私は配らないなぁ」とも思う。

 自分の妊娠が発覚したときに「まだ30代、ぜんぜん余裕やろ!」と思っていたが、産院で年齢に対する流産のリスクなどの表を見せられて「これちゃんと産めるのか?」と絶望したからだ。

 実際に切迫流産や絶対安静になったし、出産予定日を2週間も過ぎてしまってからの出産だった。無事産まれてきてくれたから良かったものの、最後まで本当に何があるかわからなかった。

 あらかじめたくさんの人に知らせてしまったら、万が一、悲しい結果になってしまった場合も報告もしなければならなくなる。それも踏まえて、本当に限られた人にしか妊娠していることを伝えなかった。

 会社勤めをしていたとしても「極力みんなには言わないでほしい」とお願いしただろう。

 まあ、そもそも筆者はあんまり気づかいができない人間なので、20代前半で妊娠して“妊婦ハイ”になったとしても産休時に職場へお菓子を配るなどの配慮ができなかったと思うけど(苦笑)。

【調査概要】 調査方法:アイブリッジ(株)提供の「リサーチプラス」モニター(20歳〜60歳の男女)に対してアンケートを行い、その結果を集計したものです。
調査期間:2024年4月18日
有効回答者数:100名(男性50名・女性50名)

<取材・文/吉沢さりぃ>



【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。『bizSPA!フレッシュ』『BLOGOS』などでも執筆。X(旧Twitter):@sally_y0720