劇作家唐十郎（から・じゅうろう）さん（本名大鶴義英＝おおつる・よしひで）が4日午後9時1分、急性硬膜下血腫のため、都内病院で亡くなった。84歳。1日に自宅で転倒し、救急搬送されたという。

唐さんの長男の俳優大鶴義丹（56）は、この日、東京・渋谷伝承ホールで舞台「後鳥羽伝説殺人事件」に出演。殺人事件解決に奔走する広島・三次警察署の刑事森川浩太役を演じた後、エンディングの祭りの法被姿を刑事のスーツに着替えてアフタートーク、会見に臨んだ。

唐さんが亡くなった時は、舞台初日が終わったところで、臨終に立ち会うことはできなかった。「ここ10年ぐらいちょっと、健康と戦う時間があったんですけども、旅立ちました。私もちょうど舞台が、昨日が初日だったんですけども、父をみとるということはできなかったんです。ただ病室には、父の（現在の）奥さんと、僕の異母兄弟の（大鶴）美仁音と（大鶴）佐助がいて、しっかりみとったそうです。僕は、それから30分ぐらい後。まだ少し、体温が残ってるような感じでした。今の奥さんとも、美仁音ちゃん、佐助君とも一緒に芝居もしたことあるぐらいな感じで、仲がいいので、4人で父の芝居の話なんかをしながらしのびました」と振り返った。

臨終に立ち会えなかったことについて、大鶴は「まさに昨日の、この舞台の初日が終わった時間に、まさに父がなくなったんですけども。本当に『役者は親の死に目に会えない』ってよく言いますけども、絶対に芝居を完結しなきゃいけないんだよっていうことを、なんか父がね、最後に死をもって教えてくれたっていうようなことを、はっきり感じましたね。まあ、なんか最後まで粋な演出をするんだなっていうね。父をみとることができないようなね、まさに役者ってそういう人生なんだよってことを、最後の死の瞬間を持ってまで劇空間的に教えてくれた。最後の最後まで、演劇人だった」と話した。

唐さんは先月まで元気だった。今月1日に自宅で転倒して帰らぬ人となった。「先月まではね、もちろん全部健康ではなかったんですけど、元気だったんですけど、。やっぱり突然、急変して」と振り返った。

父でもあるが劇作家、演出家、俳優、そして作家としても偉大な先輩だった。「なんかやっぱり、いろいろ思い出しましたね。特に今、舞台の芝居してる最中だったんで。うちは、家が稽古場だったんで、父親が芝居している姿、芝居を作ってる姿っていうのは、ずっと見てきたんで。父はよく私に『3度の飯を食べるように芝居を作り続けたい』みたいなことを、よく言っていた。そんなことを思い出したりとか。子供の時の頃ですけど、父はいつも自分の持っているテントの劇場の中に飛び込んでいく時に、僕を振り返って、ニヤッと笑ってとてもうれしそうにこう舞台の上に出ていった。現実世界より、舞台の上に立っている時間の方が幸せであるかのようにいつもその空間に飛び込んで行った。後ろ姿なんか思い出したりしながら、芝居しかなかった人だったのかなと思いながら見送りましたね」。