「あぶない刑事」のテレビ放送が始まったのは86年の秋。舘ひろしと柴田恭兵は、まだ若手と言っていい30代半ばだったし、仲村トオルは「ビー・バップ・ハイスクール」でデビューした翌年、浅野温子も「スローなブギにしてくれ」から5年というタイミングだった。

あれから38年。4人そろって文字通りいい年の重ね方をしたからこその「帰ってきた あぶない刑事」(24日公開)である。2シリーズ、スペシャルドラマを挟んで映画8本目のこの作品には、そんな余裕と余韻が漂っている。

港署を定年退職後ニュージーランドで探偵事務所を開業したタカ(館)とユージ(柴田)だが、地元警察とのトラブルから8年ぶりに横浜に帰ってくる。2人を追ってニュージーランドに渡った元港署少年課長のカオル(浅野)はどうやら行方不明だ。

振れ幅大きく、かなりざっくりとした感じの導入にすっと入っていけるのも38年の厚みがあるからだ。

もともと動作に余裕を持たせたキャラだったこともあるが、タカ&ユージには無理なく現役感がある。今も女性を振り向かせるタカとちょっと引いて「いい人感」を醸すユージ。往年の「あぶデカ」世界をあっという間に思い出す。バイクやアクションシーンもしっかりと見せてくれる。

港署捜査課長となったトオル(仲村)。他作品では年齢相応に重厚な感じも見せているが、ここでは相変わらず軽い。とぼけた味でタカ&ユージを引き立てる。行方不明だったカオルは期待通りに? 中盤思いっきり振り切った姿で登場する。

端的に言えば4人とも若い! 裏切らない。

行方不明の母親の捜索を依頼する女性(土屋太鳳)の登場を発端に展開するストーリー。ベンガル、長谷部香苗らおなじみの顔に西野七瀬、早乙女太一、岸谷五朗、吉瀬美智子と個性派がそろい、カジノ利権を巡るあぶない展開が繰り広げられる。

メガホンを取ったのはテレビシリーズを「再放送で見ていた世代」の原廣利監督。38年間でさらに洗練された横浜の風景に合わせるようにタカ&ユージの探偵事務所セットも創り上げ、次を期待させる。前作から8年を経たが、9本目の映画はもう少し早いタイミングで観たい気がする。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)