老人をムチ打つ制度だ。こども家庭庁が16日、少子化対策の財源として公的医療保険料に上乗せして徴収する支援金について、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の年収別負担額の試算を公表。徴収を始める2026年度から段階的に上がり、28年度には年金収入のみの単身世帯で月50〜750円の負担が生じる見込みだ。

 会社員らが加入する被用者保険と自営業者らの国民健康保険に続き、収入別の試算が出そろった。問題は不公平な徴収額だ。

 後期高齢者医療制度の場合、1人あたりの負担増は年収180万円が月200円、年収200万円が同350円、年収250万円が同550円、年収300万円が同750円。一方、被用者保険は年収400万円で650円、国保は同550円。後期高齢者の方が被用者保険や国保に比べ、明らかに負担が重いのだ。

 16日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で立憲民主党の岡本章子議員が「不公平感を是正すべきではないか」と問いただしたが、加藤こども政策相は「(負担額の平均は)被用者保険で500円、国保で400円、後期高齢者医療制度で350円と示しており、実際の拠出額は世帯の状況等によりさまざまであります」と原稿をボー読み。「いずれにしても、負担能力に応じたものとなることは、これまで申し上げてきた通り」とはぐらかした。

保険料の上げ幅は過去最大

 ただでさえ、高齢者の負担増は深刻だ。2年に1度、都道府県ごとに改定が行われる後期高齢者医療制度の保険料は今年度、全国平均7000円を突破。前年度に比べ507円もアップし、伸び率は2008年の制度開始以降、最大となった。年収400万円の高齢者は、保険料が年間で1万4000円も高くなる。

 いくら現役世代の負担軽減や支援のためとはいえ、こうも負担増が続いては、高齢者の家計は逼迫するばかりだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。

「岸田首相は『賃上げと歳出改革によって実質的な負担は生じない』と強弁していますが、そもそも、年金暮らしの高齢者にとって賃上げは関係ないし、むしろ年金は目減りする一方です。社会保険料のような取りやすいところから取るのではなく、真正面から『子育て世代のために増税します』とお願いするのがスジなのに、口を開けばごまかしばかり。どういう費用対効果が見込まれるのかすら示せていない。あらゆる面でチグハグです」

 高齢者により重い負担を課すあたり、「姥捨て」よりもタチが悪い。不公平にも程がある。