すでに過去の人である。

 全米ゴルフ協会(USGA)は2日、6月13日開幕の全米オープン(ノースカロライナ州・パインハースト№2)にタイガー・ウッズ(48)を「特別招待」すると発表した。

 ウッズは今大会に過去3度(2000年、02年、08年)優勝しているが、全米OPはマスターズや全米プロのように歴代チャンピオンに出場が約束されている大会ではない。

 昨年までは19年のマスターズ優勝による「5年以内のメジャー優勝者」の資格で出ていたが、今年は出場資格はない。本人が出たいというなら、どれほど立派な実績を残した選手でも予選会から挑戦しなければならないのだ。

 ところがUSGAは、その実績などを考慮して特別招待したわけだが、ウッズは21年2月の自動車事故で一命はとりとめたものの、足に大けがを負い、同年の4大メジャーはすべて欠場。22年のマスターズで奇跡的な復帰を遂げて47位でフィニッシュしたが、5月の全米プロは脚の痛みで4日目は棄権。足を引きずりながらプレーする姿は痛々しかった。

 6月の全米OPは出場せず、7月の全英も通算9オーバー148位で予選落ち。昨年のメジャーはマスターズのみで途中棄権。今年のマスターズはどうにか予選は通ったものの通算16オーバー60位。もはや難コースのメジャーで優勝を争える力もなければ体でもない。

 そんなウッズをUSGAはなぜ全米OPに引っ張り出すのか。海外ゴルフ事情に詳しいゴルフライターの吉川英三郎氏がこう言う。

「4月のマスターズは最終日のテレビ視聴率が低く、直前に行われたバスケットボール全米大学選手権の女子決勝の半分以下でした。アイオワ大にクラークというスター選手がいたので今年は特別という見方もあるが、米国ゴルフ界にとってショックだったはずです。マスターズだけでなく、“5番目のメジャー”といわれるプレーヤーズ選手権の視聴率も昨年より約2割減です。ゴルフの将来に危機感を持っているUSGAが、話題性とテレビ視聴率などを考え、人気のあるウッズを招待したのでしょう」

 今月16日には全米プロ(ケンタッキー州・バルハラGC)が開幕する。成績次第では、「全米OPのウッズは客寄せパンダ」との声がツアー内からも聞こえてくるかもしれない。