【優勝候補力士たちの勝機と課題】

 大の里(小結/23歳・二所ノ関部屋)

 12日に初日を迎えた大相撲5月場所。先場所、110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士は休場となったものの、苛烈な賜杯争いが予想される。果たして、誰が頂点に立つのか。優勝候補力士の抱える強みや課題を追った。

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「評判は良い子だったのに、人はわかりませんね……」

 こう言ってため息をつくのは、二所ノ関一門ではない、他一門の親方だ。

 新入幕の今年1月場所から2場所連続11勝4敗。幕下付け出しから所要6場所での新三役は、史上2位のスピード出世記録だ。

 そんな気鋭の若手に4月、振りかかったのが飲酒スキャンダルだ。十両だった昨年9月、幕下以下の未成年力士と酒を飲み、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と共に厳重注意処分を食らった。一部報道では「大の里が未成年力士へのイジメに加担し、飲酒を強要した」とあり、アルハラ、パワハラ疑惑も持たれている。

 冒頭の親方が言う。

「ファンや関係者にも丁寧に接し、別の一門の親方に会った時も、きちんと挨拶をする。礼儀正しい子と思っていただけに、飲酒事件はショックですよ」

 とはいえ、今回のスキャンダルでどうこうなるタマではなさそうだ。7日、佐渡ケ嶽部屋に出稽古に赴くと、大関琴桜らに13勝6敗。立ち合いから圧倒する場面もあり、体力も気力も充実している。

「今の大の里は素質だけで相撲を取っているようなもの。192センチ、181キロの体格なら、それだけでも十分勝てますからね。そして、師匠の二所ノ関親方も『今はまだそれで良し』としている。手を差し伸べるのは壁にぶち当たってから、というスタンスです。優勝争いに加わった先場所は尊富士との一番で、『勝とう』と意識するあまり、それが裏目に出て黒星を喫した。それも良い経験でしょう。勝てなくなるまでは、今の相撲を続けるはず。もっとも、今の土俵を見渡す限り、壁に当たるより優勝の方が先になるかもしれませんが……」(角界OB)

 先場所は新入幕の尊富士が優勝。幕内3場所目の大の里が、賜杯を掴んでも何ら不思議ではない。

 高安は立ち合いの圧力だけなら、横綱大関以上といわれているパワー自慢。

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