藤井聡太名人(竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=21)が豊島将之九段(34)の挑戦を受ける、将棋の第82期名人戦7番勝負第4局が18、19の両日、大分県別府市「割烹旅館もみや」で行われ、先手の豊島が95手で藤井を下し、シリーズ対戦成績を1勝3敗とした。第5局は26、27日に北海道紋別市「ホテルオホーツクパレス」で行われる。シリーズ初黒星の藤井は、全8冠陥落危機に日程的にも厳しくなった。

後がない豊島の渾身(こんしん)の作戦を藤井が堂々と受けて立った。藤井に横歩を取らせる「横歩取り」、別名は「空中戦」。飛車、角の大駒や桂馬が盤上を乱舞する中、2日目に劣勢になった藤井が別府温泉に漂う湯煙のようにゆらり、ゆらり…。相手に決め手を与えない緩急自在の指し回しで形勢を互角に戻したが、最後はジリジリと寄せられた。

終局後、藤井は「陣形にキズが多く、受けに回っても受け切れないと思い攻め合いに行った。工夫が必要だった」。2日目、一転して攻めた判断を振り返った。序盤の戦いについて「判断が少し甘かったかなということは考えていました」と冷静に分析した。

藤井は豊島との初手合から6連敗したが、その後は圧倒。「ラスボス」と言われた対豊島戦は12連勝中だったが、ストップした。これで自身の本年度の対戦成績は4勝3敗。勝率は5割7分1厘。23年度は46勝8敗、勝率は8割5分2厘。年度が始まったばかりだが、物足りない数字だ。

同学年の伊藤匠(たくみ)七段との第9期叡王戦5番勝負では、1勝2敗でタイトル戦で初のかど番に追い込まれている。“不調説”もささやかれるが、ライバルたちの「藤井対策」の精度が上がってきている。

名人戦のストレート初防衛を逃したことで、北海道での名人戦第5局後、中3日で31日の叡王戦第4局に臨むハード日程になった。叡王戦4連覇には、2連勝が絶対条件だ。1つでも負ければ、8冠陥落となる。 名人戦第5局へ向け「すぐにあるので、気持ちを切り替えて頑張りたいと思います」。絶対王者の負けられない戦いが続く。【松浦隆司】