<DeNA0−1阪神>◇12日◇横浜

お母さん、勝ちました〜! 阪神才木浩人投手(25)が「母の日」に今季チーム初の9回完封勝利を挙げた。128球を投げ抜き、4安打無失点。横浜スタジアムでは球団史上初の「1−0」完封を飾った。岡田彰布監督(66)も「才木さまさまや」とべた褒めした熱投でリーグ最多タイの4勝目だ。日曜日の試合は今季6勝1敗で5連勝。前日11日に最大7点差を大逆転された悪夢を吹き飛ばし、「日曜日の男」が虎を生き返らせた。ナイターで巨人が敗れ、チームはわずか1日で首位に返り咲いた。

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才木の表情が一気にはじけた。1−0のまま、9回2死二塁で4番牧を迎えた。前日、7点差を大逆転された横浜スタジアム。反撃ムードが最高潮に達する中、最後は150キロの直球を信じた。打ち上がった捕邪飛を梅野がキャッチ。その瞬間、固く握った拳とともに顔の緊張がほどけた。

「昨日の展開の後だったので、締めないといけないと思っていた。良かったです」

128球を投げきり、9回4安打無失点。チームでは今季初の9回完封勝利だ。DeNA大貫との投手戦を制し、巨人菅野、ヤクルト・ヤフーレと並ぶリーグ最多の4勝目。横浜スタジアムでは球団史上初の「1−0」完封勝利だ。

ヒーローインタビューでは「もうちょっと点取って欲しいっすね〜」とちゃめっ気たっぷりに余裕の笑顔。岡田監督も「才木さまさまよ、はっきり言うて。それしかないよ」と文句の付けようがない快投だった。

「母の日」。両軍の選手がピンク色の道具を用いて感謝の気持ちを表現する中、才木もピンク色のスパイクを使用した。母久子さんは大体大4年時にハンドボールで全国2位にもなったアスリート。自身の経験から「必要以上に甘えさせない」が教育方針だった。

「大丈夫?」「痛くない?」などの声掛けは弱気を助長してしまうとの考えで、めったに優しい言葉をかけられなかった。幼い頃から愛情深い厳しさで育まれた精神力があるからこそ、ピンチでも臆せず腕を振れる。

才木自身も「あの人のメンタルはバケモンなんで」と尊敬する母親。試合後、インタビュアーに「お母さんへ一言」と振られると、一瞬戸惑いながらも自宅でテレビ観戦した両親に「勝ちました〜!」と叫んだ。使用したスパイクなど「母の日」仕様の道具は母にプレゼントする予定。最高の形で親孝行を果たした。

開幕から日曜日の試合は6勝1敗で5連勝。すべて才木が先発を任されてきた試合だ。大逆転負けから一夜明けた一戦でチームの連敗を阻止し、今季5度目のカード勝ち越しに導いた。「日曜日の男」が、感謝の白星で勢いをもたらした。【波部俊之介】