ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)が「侍ジャパン超え」を果たした。

6日、東京ドームでWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)の挑戦を受け、6回1分22秒、TKO撃破した熱戦が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝となった日本−米国戦を抜く最大ピーク視聴者数を記録したと7日、生配信したAmazonプライム・ビデオから発表された。一夜明けた同日、横浜市の所属ジムで会見した井上も「歴史的一戦」として満足した。

   ◇   ◇   ◇

自己評価が厳しく、謙虚な姿勢を貫く井上がネリ戦を納得した表情で振り返った。約34年ぶりとなる東京ドームのボクシング興行で、日本人初のメインを締めた。2度の山中慎介戦を通じ、薬物違反や体重超過で騒がせたネリをTKO撃破。しかも1回に左フックでキャリア初ダウンを喫した後、計3度のダウンを奪い返して倒した熱戦だった。動画チェックした井上は率直な心境を口にした。

「映像を見直して、1回のダウンを含め、6回をしっかりと見た。内容的に満足というか、すごく良い試合だったなと。陣営の方々はヒヤヒヤとしたと思うが、4万人のお客さん、すべての方が満足していただけたと思う。昨日は本当に自分自身、歴史に残る試合」 井上本人も納得する試合内容通り、ネリ戦の視聴者数も「史上最大」をマークした。生配信したAmazonプライム・ビデオの発表によると、これまでの最大ピーク視聴者数だった23年3月のWBC決勝で野球日本代表−米国代表戦を超える数字に到達。具体的な数字は明らかにされなかったが、井上がネリを倒した瞬間がトップになった。

MLBドジャースの大谷翔平投手らが大活躍し、世界一となったWBCは別枠で地上波の放送もあったとはいえ、その視聴者数を超えた意味は大きい。所属ジムの大橋秀行会長(59)は「以前は(22年6月の)井上−ドネア戦が(プライム・ビデオ)視聴者数1位だったが、WBCの世界一に抜かれた。日本中の誰もがチェックしたWBC。その数字は抜けないと思っていたが。ボクシングは相手によって爆発力が違う。WBCを打ち破ったことが1番うれしい」と誇らしげだった。

井上が17年以来、約7年ぶりに年間3試合を目標に掲げる24年。所属ジム設立30年、自らの世界王座奪取から10年という節目イヤーのビッグイベントを両拳で成功させた井上は「大橋ジムとしても、井上尚弥としても、これが集大成ではない。今後のキャリアを加速させる1戦だと。ここから熱い試合を繰り広げたい」と最後まで貪欲な姿勢を示した。【藤中栄二】