【ドーハ16日(日本時間17日)=佐藤成】チーム最年少の副将、MF松木玖生(20=東京)が1−0の白星発進に導いた。

パリ五輪アジア最終予選を兼ねるU−23アジア杯カタール大会の初戦中国戦で日本の決勝点。過去に城彰二、中田英寿らレジェンドが決めてきた「五輪最終予選1号」の系譜に名を連ねた。19日(日本時間20日)の第2戦UAE戦に勝てば1次リーグ突破決定の可能性がある。

まだ桜が咲き切らない3月31日、小平グラウンド。東京MF松木は未来を予言するように、自らに暗示をかけるように語っていた。

「今は得点が少ない。貪欲に狙っていきながら…まず1点を取れれば絶対、波に乗ることができると思う」

直後の4月3日、リーグ浦和戦で今季初ゴールを奪うと、続く7日の鹿島戦、U−23代表合流前のラストマッチで2アシストした。

16日後、好調を維持したままの20歳がドーハで躍動した。大事な初戦の中国戦で、松木が決勝弾。MF山田楓のクロスに、絶妙な飛び出しで左足を合わせ「今は、すごく自分自身に自信がある。点を決めたら気持ちが楽になった」と見える景色が、より鮮明化した。五輪最終予選では96年の城や00年の中田英の系譜を継ぐ、大会1号。突破の立役者で、後の本大会でも輝いた先人たちに肩を並べた。

高体連最強の青森山田で1年から正選手。3年時には主将で全国3冠を達成した。東京でも高卒1年目から31試合に出場し、今季から3年目にして主将を任される。22年にはアジア連盟(AFC)年間最優秀ユース選手賞も受賞した。順調すぎる歩みにしか見えないが、本人の認識は違った。

「伸び悩みとは思っていないけど、今、結果的に見れば、そういう感じにはなっている」。物足りなさを感じていたのが、得点やアシストの部分。反対に「そこで結果が出てくれば、もっと成長できる」。伸びしろと捉えてアジアの舞台でも均衡を破り、一皮むけた。

抜群の存在感も、実は“飛び級”選出だ。昨年のU−20W杯メンバーで、最年長が23歳のパリ世代では下から数えて3番目の若さ。それでも副将を託されたのは信頼の証しだ。「個人の結果にフォーカスしながらもチームを勝たせることが一番大事」。中国戦で10人になった際も、ピッチ内の判断で一時的に中盤から左サイドバックへ下がるなど戦術眼が光った。守備時の高い貢献度に、苦しい終盤、逃げ切るどころか追加点のチャンスと見極めるや、相手ゴール前まで爆上がり。常に最善の判断をし、年長者のごとく体現できている。

緊張感が段違いのパリへの道で、すごみを増す強心臓は「ずっと、できないことをやってきた。壁がある方が楽しいから」。逆境をはねのけてきた20歳が、進化しながら大舞台へ導く。

◆日本の五輪アジア最終予選第1号 年齢制限のないオーバーエージ枠が採用された96年アトランタ五輪以降、開催国で予選がなかった前回21年の東京五輪を除き、第1号ゴールを決めた選手は全て本大会に絡んでいる。96年アトランタ五輪でブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献したFW城彰二、00年シドニー五輪で8強進出の原動力になったMF中田英寿は、後にA代表としても活躍した。12年ロンドン五輪のMF東慶悟は背番号10として4強入り。1点目が第2戦だった04年アテネ五輪のFW田中達也を含め、過去6人全てA代表の招集歴がある。