アルバイトをする機会が多い大学生。接客業の現場では、客から理不尽なクレームを受けることもある。そんな「カスタマーハラスメント」(カスハラ)をなくしていくには、どうすればいいのだろうか。九州大の学生が制作するラジオ番組「ケロケロ見聞録」(ラブエフエム国際放送)では7日、理想的な接客について考えた。

 出演者は、九州大文学部3年の奥野萌衣さん(20)、農学部3年の賀来りさ子さん(20)、共創学部3年の有馬楓かえでさん(20)。3人とも接客業のアルバイトをしているという。

 接客態度として、3人がまず思い浮かべたのは「お客様さまは神様」というフレーズ。歌手の故三波春夫さんが使ったことで広まったとされ、今では「お客様イコール神」ととらえられている。そのことに3人は強い違和感を抱いていた。

 三波さんは生前、こう語っている。

 「神前で祈るときのように、澄み切った心にならなければ完璧な芸をお見せすることはできない。演者にとってお客様を喜ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです」

 三波さんがあくまで歌う時の心構えとして考えた言葉が、徐々に拡大解釈されていったらしい。三波さんのオフィシャルサイトでも「お客様は神だから徹底的に大事にして媚こびなさい。何をされようが我慢して尽くしなさいなどと発想、発言したことはまったくありません」と完全に否定している。

 しかし、このフレーズが誤った意味で浸透し、接客の現場では心理的に優位に立つ客からのカスハラが相次いでいる。番組で大学生に行ったインタビューでは「閉店間際に来店し、提供に時間がかかると伝えたのにイライラをぶつけられた」「できない理由を伝えても一向に納得してくれない」といった経験談が聞かれた。

 奥野さんは「客と従業員に上下関係ができること自体がおかしい」。有馬さんは「サービスの質が個人の能力に委ねられている。アルバイトという弱い立場では自己判断もできない。接客のルールを明文化してほしい」と訴えた。

 では、客と接客者はどんな関係であるべきか。3人は「お客様は神様」に代わる「お客様は〇〇〇」を考えた。〇に入れる言葉として「他人様」「人間(店員も人間)」というアイデアも出たが、選んだのは「依頼者」だった。

 賀来さんは「接客者は客に必要最低限の配慮をするが、基本は依頼されたことだけを行う」と定義。「お金はあくまで購買の手段であり、払っているからといって権利を振りかざしてはいけない」と注釈もつけた。客も接客者も同じ人間。互いに尊重し合う対等な関係でありたいものだ。(九州大共創学部3年・江島光亮)

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番組(毎月第1日曜)は九州大の学生チーム「メディアンリアン」が運営。メンバーが随時、内容を西日本新聞meで紹介する。