バレーボールVリーグ女子1部(V1)の全12チームによるVカップで、久光スプリングスのタイ出身ミドルブロッカーがブレーク中だ。今季加入したチタポーン・カムランマーク(28)は185センチの長身を生かした強固なブロックが持ち味。女子日本代表の登録メンバーに選出された平山詩嫣(23)や荒木彩花(22)ら多士済々の選手がそろうポジションのさらなる戦力アップにつながりそうな活躍を見せている。

 Vリーグの公式戦では、試合ごとに最も活躍した選手がコート上でインタビューを受ける。久光が神戸総合運動公園体育館(神戸市)でストレート勝ちした24日の東レアローズ戦。カムランマークが約1200人のファンの前に立った。「一生懸命練習をしながら、いろいろとけがもあったりして…リーグでは試合に出してあげることができませんでした。こうやって結果も出て、インタビューされる機会が彼女に訪れたことは本当にうれしい」。入団後初めて当たったスポットライトを酒井新悟監督は自分のことのように喜んだ。

 今季は濵松明日香(25)と荒木が足のけがで開幕に間に合わなかったことから、フロントも緊急補強に乗り出し、タイでの代表歴があるカムランマークを「アジア枠」で獲得した。異国での生活だけでなく、プレー面でもチームのシステムに慣れるまでは一定の時間を要する。加えて、カムランマークは来日後もコンディション面でなかなか整わなかったことから、リーグ戦でのプレー機会はわずか1セットにとどまった。

課題はコンビ攻撃に対するリードブロック

 だからこそ、カムランマークにとってVカップは経験年数の浅い若手とともに場数を踏む貴重な機会となった。ここまで全4試合にスタメン出場。とりわけ光るのが、15セットで12得点のブロックポイントだ。1セット当たりのブロック決定本数「0・80」は久光の所属するBグループで堂々の1位。「ストロングポイントは相手(のオフェンス)が乱れたときのブロックです。高さと堅さがあるので、ハイボールシチュエーションで止めてくれます」と酒井監督はうなずく。

 チーム全体で効果的なサーブを繰り出した東レ戦ではカムランマークの持ち味が随所に出た。チーム最多4本のブロック得点に加え、移動攻撃でもポイントを挙げた。酒井監督によると、課題は「相手のコンビ攻撃に対するリードブロック(セッターのトスの方向を見極めて動きに入るブロック)」だという。対応力を身に付け、チームメートとの連係の精度を高めるためにも、Vカップと5月の黒鷲旗大会は重要になる。

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 コートでの迫力満点なプレーとは対照的に、温厚な性格と人懐っこい笑顔でチームに溶け込んでいる。人柄の良さは東レ戦後のインタビューでもにじみ出ていた。勝利の感想を求められて「みんなが一本一本つないでくれて、大事な1勝になりました。スタッフに感謝したい」と口にした後、マイクを握り直して「大事なことを言い忘れていました。会場に足を運んでくださったファンの皆さんにパワーをいただきました」と一礼。さらにキッズインタビューアーの男児からの「僕が通っているチームではよく意見の食い違いが起きます。言い合いになったときにはどうすればいいですか?」との質問にも真摯(しんし)に対応。「イライラしたときは一歩引いて、頭を冷やしてからコミュニケーションを取ってください」と優しく語りかけた。

ウオームアップエリアで新応援パフォーマンス

 Vカップに入って、久光のウオームアップエリアでは新たな応援パフォーマンスが見られるようになった。カムランマークが得点するたびに、控え選手が手を合わせてお辞儀をしながら祝福。サポートに回っているセッターの栄絵里香(32)から、入団内定選手でミドルブロッカーの井上未唯奈(18)まで笑顔の連鎖で雰囲気を盛り上げている。チームビルディングに欠かせない一体感。「ほほ笑みの国」からカムランマークがもたらしたものは決して小さくない。
(西口憲一)

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2023〜24年シーズン開幕戦の試合前練習で汗を流す久光スプリングスのカムランマーク(撮影・西田忠信)
3月9日、Vカップ開幕戦のアランマーレ戦に勝利し、仲間と喜ぶカムランマーク(右)=写真提供:SAGA久光スプリングス
3月24日の東レ戦でストレート勝ちし、記念写真に納まるカムランマーク(前列左から2人目)ら久光の選手たち
「ほほ笑みの国」と呼ばれるタイ出身の久光、カムランマーク(撮影・永田浩)=2024年1月