厚生労働省の推計によると、「認知症」かその前段階の「軽度認知障害」になる高齢者は16年後、3人に1人です。軽度認知障害は健常な状態にも認知症にもなり得るため、適切な予防が大切です。生活習慣病予防や食事、仕事などと認知機能の関係を考えます。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「3人に1人が“認知症”危機?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●「認知症」対策次第で減少も?

●認知症予防 やるなら今?

■認知症に進行も? 軽度認知障害とは

日テレNEWS NNN

小野高弘・日本テレビ解説委員

「厚生労働省が、最新の推計を出しました。2040年には日本にいる65歳以上の約3人に1人が認知症か、またはその前の段階になるといいます。2040年というと16年後です」

森圭介アナウンサー

「すぐですね。私は61歳なので、そろそろ自分事になってくる頃です」

小野解説委員

「私はおじいさん、68歳です。めちゃめちゃリアルな話です。20代や30代の方はどうでしょう?」

桐谷美玲キャスター

「私の祖母が認知症なので、すごく身近な話ですね」

小野解説委員

「ご両親やおじいさんおばあさんの介護に関わる話かもしれないので、自分のこととして考えていただきたいです」

「3人に1人というのは、どういうことなのでしょうか」

「厚労省は日本の4つの地域で、65歳以上の住民を対象に認知症の調査を行い、推計を出しました。すると2040年には認知症の高齢の方が約584万人、軽度認知障害(MCI)が約613万人、合わせて約1197万人となり、これが65歳以上の人口の3分の1ということです」

忽滑谷こころアナウンサー

「軽度認知障害が認知症の一歩手前というのは分かるんですけれども、具体的にどんな違いがあるんですか?」

小野解説委員

「認知症は1人暮らしが困難な状態です。それに比べると軽度認知障害は、日常生活はなんとか送れますがもの忘れが多くなり、新しいものが苦手になります。放っておくと認知症に進行する状態です。認知症に進行するかもしれない、というのが大事なことです」

■軽度認知障害の割合が認知症を上回る

日テレNEWS NNN

小野解説委員

「今回、調査ではこんなことも分かりました。2022年、65歳以上の中で認知症の人の割合は12.3%で、10年前より2.7ポイント減っています。ところが、認知症の一歩手前の軽度認知障害の割合は15.5%で、10年前より2.5ポイント増え、逆転しています」

鈴江奈々アナウンサー

「高齢化がどんどん進んでいるので認知症の方の割合が減っているのは意外なんですけど、このデータはどう読み解いたらいいんでしょう?」

小野解説委員

「研究した九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授は、興味深い分析をしています。喫煙率の低下や生活習慣の改善、健康意識の変化により、軽度認知障害から認知症になる人の割合が減った、以前より進行しなかった可能性があるといいます」

■「努力」で進行を遅らせることが可能

日テレNEWS NNN

桐谷キャスター

「ということは、1人1人の努力で進行を遅らせることができるかもしれないということですか?」

小野解説委員

「そうなんです。国の研究機関がまとめた『あたまとからだを元気にするMCIハンドブック』によると、認知症の前段階は何もしないと認知症に進むこともあれば、対策次第で健常な状態に戻る可能性もあります」

「適切な予防をすれば、1年で約16〜41%の人が健常な状態になるというデータもあります。認知症に進行しない可能性は十分にあるといいます」

森アナウンサー

「対策をして進行しないのであれば、問題は対策をいかに知ってできるかということになりますよね」

■生活習慣病の予防が認知症対策に効果

日テレNEWS NNN

小野解説委員

「ここからは『あたまとからだを元気にするMCIハンドブック』の内容をもとに、適切な予防について考えていきます。60代でも遅くありませんが、森さんのような40代からの早めの対策がカギです」

森アナウンサー

「もう始めなきゃいけないんですね…」

小野解説委員

「1つは生活習慣病を予防することです。45〜65歳未満までの中年期に、肥満や高血圧、コレステロールが高い脂質異常症、糖尿病などになると、認知症の危険を高めることが分かっています」

森アナウンサー

「私もちょっとコレステロールが高めです。生活習慣病には気を付けているんですけど、それが認知症にもつながってくるんですか?」

小野解説委員

「体は全部つながってますからね。糖尿病になるとアルツハイマー型の認知症のリスクが約2倍になるというデータもあります。健康診断などで心配な数値が出たら、ほったらかしにせず、かかりつけの医師などに相談し、しっかり管理していくのが重要です」

■ゲームでも認知機能が改善か…ナゼ

日テレNEWS NNN

小野解説委員

「それだけではありません。麻雀や囲碁といったゲームにも、認知機能を改善する効果が期待できるといいます。前段階の人を対象にした研究では、麻雀を週に2回、1回1時間、約3か月行うことで、認知機能や短期記憶の維持に効果が認められたとの報告もあります」

「こうしたゲームでは相手がどんな手を仕掛けてくるか想像して考えます。先を読み、手先の細かな運動が求められるため、脳機能が活性化される可能性があるということです」

桐谷キャスター

「私はテレビゲームはよくやるんですけど、麻雀や囲碁はやっていないので、予防になるなら始めてもいいのかなと思いました」

忽滑谷アナウンサー

「私は50代の母とも遊びでよく麻雀をします。こんな効果があるんだったら趣味として続けていきたいなと思いました。他にも何か日常で気を付けられることはありますか?」

■高齢で運動習慣のない人のリスクは

日テレNEWS NNN

小野解説委員

「スポーツとまでいかなくとも、体を動かすことです。簡単にできる運動でも認知症の予防に効果があるとされています。高齢者で運動習慣のない人は、ある人に比べて認知症になるリスクが1.82倍だと報告されています」

鈴江アナウンサー

「運動習慣はどのぐらいのレベルだったらいいんですかね?」

小野解説委員

「軽くてもいいんですが、定期的な運動を続けていくことが大事です。理想は1時間以上の運動を週3回以上ですが、散歩程度の運動でも週3回以上続けていれば、何もしない人に比べると約33%認知症になりにくい、ということが分かっています」

■ちょっとの頑張りで効果アップ

日テレNEWS NNN

小野解説委員

「ただ、効果が大きくなると期待できるのは、軽い散歩よりも速めのウオーキングやサイクリング、ダンスといった中強度以上の運動で頑張ってみると、認知機能の改善が期待できます。無理のない範囲で、自分に合った運動を見つけられるといいですね」

森アナウンサー

「週3回ですよ?」

鈴江アナウンサー

「ちょっと負荷を、自分なりにかけてみようと思います…」

■認知症と「食事」の深い関係とは?

日テレNEWS NNN

森アナウンサー

「健康は運動と食事、と言うじゃないですか。食事は関係ありますか?」

小野解説委員

「あります。食事と認知症の関係は深いです。脳の機能維持に栄養は必須です。栄養素のことが話題になりますが、注目したいのは、本人がおいしく食事を楽しめるような変化をつけること。これによって、進行を遅らせることができるといいます」

「認知症の進行を遅らせる食べ物は今のところ科学的に証明されたものはありませんが、変化に富む食事を楽しむことは、認知症の予防として有効だと、『あたまとからだを元気にするMCIハンドブック』で紹介されています」

「例えば旬の食材を取り入れたり、彩りを豊かにしたり。温かいものを食べたら冷たいものを食べる、和食を食べたら洋食や中華を食べるといった、変化を楽しむことがいいそうです」

■仕事を辞める年齢と認知症のリスク

小野解説委員

「仕事もあります。仕事を辞める年齢が1歳高くなるごとに、認知症のリスクが3%低下することが分かっています」

「たとえ仕事を辞めたとしても、自分がやりたい、楽しめる活動やスポーツをする。家にいるなら頭を使う読書やパズル、ゲームなど生きがいに取組むことが、認知症予防のカギになると言えそうです」

鈴江アナウンサー

「早めの対策が功を奏しそうですよね」

小野解説委員

「『厚生労働省 MCI』で検索すると、たくさんの認知症予防対策を紹介したパンフレットがあります。自分に合った、続けられる対策をやってみてください」

(2024年5月9日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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