アメリカ司法省は、大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告が銀行詐欺など2つの罪で起訴され、司法取引を行うと発表しました。水原被告は歯の治療のためとして6万ドルを詐取した疑いも明らかに。量刑や司法取引について、在米18年の国際弁護士に聞きました。

■銀行詐欺と虚偽の納税申告、2つの罪

日テレNEWS NNN

森圭介アナウンサー

「カリフォルニア州を含むアメリカの4州で弁護士として活動されている、国際弁護士の吉田大さんに聞きます」

「最長で禁錮33年になるという量刑はどれくらいになるのか、司法取引に応じることで何が変わるのか、不正送金以外にも新たに分かった手口、という3つのポイントについてお伝えします」

■「ガイドライン」に基づき量刑を決定

日テレNEWS NNN

「まず、銀行詐欺について。大谷選手の口座から無断で約1700万ドル、日本円で26億4000万円余りを不正に送金していた罪に問われています」

「さらに、虚偽の納税申告についてです。2022年の課税所得を約14万ドルと申告していましたが、実際にはさらに410万ドルの所得がありながら、故意に申告していないという罪に問われています」

森アナウンサー

「一般的に銀行詐欺は最長で禁錮30年、虚偽の納税申告は最長で禁錮3年ということですが、足し合わせて最長の禁錮は33年になると考えてよいのでしょうか?」

吉田弁護士

「これはあくまで最大ということです。これから『連邦量刑ガイドライン』というものに基づいて、その犯罪の悪質性や被害額、特殊な事情があったのか、迅速に調査への協力をしたのか、前科があるかどうかなど、ポイント制でこれから詳しく決まっていきます」

森アナウンサー

「(焦点は)33年という最長期間がどれくらい軽減されるのか、になります。410万ドルは大谷選手の口座にあったお金ですが、被告が支払わなくてはいけないことになるのでしょうか?」

吉田弁護士

「盗んだお金というのは、司法取引で法的な罪を認めていることになっていますので、裁判所としては、このお金を返還しなさいと判決の中に入れてくる可能性が高いと思います」

森アナウンサー

「最長で禁錮33年がどうなってくるのかがポイントになってくると思います」

■双方にメリットが…司法取引の中身

日テレNEWS NNN

森アナウンサー

「司法省によると、水原被告が司法取引で起訴内容を認める答弁を数週間以内に行うことで水原被告と合意したということです」

桐谷美玲キャスター

「司法取引という言葉はこれまで何度か出てきていますが、あらためて、どういうものなのでしょうか?」

吉田弁護士

「有罪を認めるというところに関しては、裁判を行う、そして迅速に本人と司法当局の間で合意をする、という2つの方法があります」

「なぜ司法取引をするのかというと、裁判は非常に長い時間も、お金も手間もかかります。陪審員によって最後どう転ぶか分からないというリスクがあります。このリスクを避けるために、迅速に同意によって本人の罪を認めさせるというのが司法取引の制度です」

森アナウンサー

「裁判所としてのメリットがあるということですか?」

吉田弁護士

「その通りです。裁判所といいますか司法当局側としては多くの悪に対して、大きな作戦をやっていて、本丸・二の丸があると宣言している中、迅速にこの件に関してカタをつけ、リソースを本丸・二の丸に割きたいという意図があると思います」

森アナウンサー

「被告側のメリットはありますか?」

吉田弁護士

「裁判は長い時間やお金もかかる。今回水原被告が雇っているマイケル・フリードマン弁護士は私も共通の友達が多いですが、おそらくそこそこのお金がかかる。このお金もセーブできますし、何よりも裁判期間を経なくていいというメリットがあると思います」

■日本に強制送還される可能性は?

日テレNEWS NNN

鈴江奈々アナウンサー

「素朴な疑問ですが、今後日本に強制送還される可能性もあるんでしょうか?」

吉田弁護士

「今回の和解文書にはその部分にも言及されています。今回の事情にかんがみると高い確率で、強制送還になるという可能性を本人も分かっている、認めているという部分があります」

「おそらくですが、このまま罪が確定すれば、量刑を果たした後に迅速に国外退去になる可能性は高いと思います」

鈴江アナウンサー

「刑期を終えた後に強制送還ということですね?」

吉田弁護士

「はい。原則としてはアメリカ国内で罰を果たした上で国外に送還となるのが一般的です」

■司法取引が行われたら…量刑どうなる?

日テレNEWS NNN

森アナウンサー

「司法当局と被告の双方にメリットがあるということですが、司法取引が行われた場合、量刑への影響はどれくらい出てきますか?」

吉田弁護士

「ポイント制になっていて、例えば銀行詐欺については凶悪な犯罪ということで7ポイント、被害額が巨額で20ポイントです。今回は金融機関からお金を盗んだということでプラス2ポイントです」

「どんどんプラスしていく中で、今回のように裁判手続きが行われる前に迅速に罪を認めたということで3ポイント減点すると、同意書にも書いてあります。これは量刑に直すと1年強のインパクトがある数字です」

森アナウンサー

「ポイント制になっているんですね。1年強ということは、33年から1年ちょっと短くなると考えていいんですか?」

吉田弁護士

「ポイントを見ていって、だいたいどのくらいになるかということです。銀行詐欺における司法省との同意を確認すると、4年3か月〜5年3か月ほどがこのガイドラインで示されている禁錮の期間になります」

「ただこれにプラスして、サプライズですがもう1つの罪が出てきたということで、合算してどのようになるかというのは、裁判所の判断を待たなければならない状態です」

森アナウンサー

「5年前後という数字が出てきましたが、量刑が変わってくるという話がありました。その他に、司法取引ではどんな影響があるのでしょうか?」

吉田弁護士

「司法取引によって迅速に罪を認める、量刑が減る、そしてさらに当局側としてはリソースを本丸に向けられるところが大きいと思います」

■不正送金以外にも明らかになった手口

日テレNEWS NNN

森アナウンサー

「もう1つの罪というのもありましたが、驚きの手口が明らかになりました。水原被告の罪状認否はロサンゼルスの裁判所で9日に予定されていましたが、14日に延期されました。不正送金以外にも分かったことがあります」

「これまで違法ブックメーカーへの送金が報じられていましたが、司法省によると去年の9月、水原被告は歯の治療のために6万ドルが必要になったということで、大谷選手はこれを支払うことに合意したということで、小切手を切ったんです」

「ただ実際は、水原被告は歯科医院での支払いにこの小切手を使っていません。水原被告の口座に小切手を入金して、実際の支払いは大谷選手名義のカードでした。支払いは大谷選手のカードで、ただ小切手は自分の懐に入れていたことが分かりました」

陣内貴美子アナウンサー

「こういう話を聞いていると、歯の治療費を出すくらい大谷選手は信頼をしていたんだろうな、その分ショックも大きいだろうなと思いますね」

森アナウンサー

「こういったところまで大谷選手の信頼を欺いていた、ということに我々は驚かざるを得ません。歯の治療費は日本円に換算して900万円ほどですが、アメリカでは普通のことなんですか?」

吉田弁護士

「私もこれだけの金額の治療はさすがに受けたことがないので、アメリカが高いというのはありますが、高級外車が買えるような金額ですので、正直驚きです」

■今後も新事実が出てくる可能性は?

日テレNEWS NNN

森アナウンサー

「ただ大谷選手は支払うことに合意していたということです。今回司法省によってこういった新しい『事実』が分かりましたが、裁判が始まると新たな事実が今後出てくると思われますか?」

吉田弁護士

「基本的にはこれによって司法当局として、ここに書いてある事実を全て争わないで認めること、と書かれています。これ以上新たなサプライズは出てこない、ただしここに書かれている事実には反論しないで受け入れる、というのが今回の司法取引の内容です」

森アナウンサー

「量刑が決まるのはいつ頃になりそうでしょうか?」

吉田弁護士

「『ギルティー? オアノットギルティー?』と映画でよく見ますが、来週に有罪か無罪かで有罪を認め、その後裁判所としては正式な量刑を調べる手続きがあるので、数か月(かかり)、夏くらいには出てくるのではないかと思います」

(5月9日『news every.』より)