今年のプロ野球、どこが優勝するか? オープン戦で連敗していた阪神、中田翔が加入した中日、阿部慎之助新監督で臨む巨人……昨季オフの移籍動向からキャンプ、オープン戦を通して見えた、各球団の現状と課題をレポートする。【全2回の1回目】

オープン戦連敗も盤石…阪神

 今季のセ・リーグは、昨季の覇者・阪神が中心になる。

 オープン戦は開幕から9連敗――。この事態に日本一の矜持が水泡に帰したかのように不安視する声も聞こえたが、心配の必要はないと見る。試合内容が悲観するようなものではないからである。

 敗れた試合を振り返ると、一人の投手がビッグイニングを作られたもの、ありえないエラーが絡んだものが目立った。シーズン中なら選手交代をしていただろうし、開幕後に同じようなことが起きるとは考えづらい。投手陣が軒並み打ち込まれているわけでもなく、打線が不調という印象もない。 

 あくまでオープン戦である。それゆえ、岡田彰布監督は何が何でも勝ちにいく采配をしたわけではなかった。高卒3年目の前川右京ら高卒選手の育成が「課題」と言われた中で、若い選手にチャンスを与えていた側面もある。そうした新戦力の台頭を、岡田彰布監督は“9連敗”を犠牲にしてでも得たかったように見える。

 何より、昨季日本一を経験した阪神の選手はまだ若い。昨季の日本シリーズMVPの近本光司、4番の大山悠輔はいずれも29歳。森下翔太は2年目の23歳、佐藤輝明もようやく4年目の25歳だし、リーグMVPの村上頌樹25歳も成長段階の途中にいる選手である。

 さらに、開幕投手が決まっている青柳晃洋をはじめ、先発陣は順調といえそうだ。最初の登板で炎上した伊藤将司は、のちの2試合では好投。状態は上り調子だ。村上、才木浩人らもゲームを作れている。中継ぎ陣は開幕までに整備していくことになりそうだが、布陣は充実。昨季のリーグ王者はやはり手強い印象だ。

レギュラー争い過熱…巨人

 そんな阪神の好敵手になりそうなチームが巨人だ。

 今季から阿部慎之助新監督が指揮を取る。新監督の就任で数年後を見据えるチームづくりをするという予想を覆し、昨秋のドラフトでは軒並み即戦力選手を指名。就任即の覇権奪取を狙っているように見える。

 さらに、昨年オフは積極的なトレード策でチームを強化した。高橋礼、泉圭輔をソフトバンクから、近藤大亮をオリックスから獲得。先発、リリーバーの穴を埋める補強に出た。台湾遠征などを経て、チームの状態を高めている。

 昨年の成績から、秋広優人の外野レギュラーは安泰かと思いきや、ルーキーの佐々木俊輔、オコエ瑠偉らが猛アピールを見せている。加えて内野には、ファースト・岡本和真、セカンド・吉川尚輝、ショート・門脇誠、サード・坂本勇人がズラリ並ぶ。固定メンバーと外野手の競争によってチーム力が底上げされ、阪神を追う一番手になるかもしれない。

投手充実、打線は中田翔次第か…中日

 積極的な補強という面では、中日も今季の注目チームだ。立浪和義監督が率いて3シーズン目。2年連続最下位から、勝負の年を迎える。

 巨人から中田翔、中島宏之といった右の強打者を獲得。中でも広いバンテリンドームで本塁打の期待の掛かる中田には、大きな期待が寄せられている。しかし、昨シーズンは巨人で92試合の出場にとどまり、本塁打のキャリアハイも日本ハム時代の31本(2020年)。「優勝のための使者」といえるほどの信用性はまだない。得点力不足に悩んでいた中日にあって、持ち前の勝負強さをどこまで発揮できるか。

 一方で、投手陣は小笠原慎之介、柳裕也、高橋宏斗ら実力者が揃う。さらに、今季は大野雄大が復帰予定とあって明るい話題が多い。ライデル・マルティネスらブルペン陣の層も厚い。“令和の米騒動”など昨季はネガティブな話題が挙がるチームだったが、今季はいいニュースを届けたい。

若手とベテランのバランス◎…広島

 昨季2位の広島はFAで西川龍馬を失ったものの、チームのバランスがいい。阪神と巨人を追う存在になりうる。

 會澤翼、菊池涼介、秋山翔吾らベテランがチームを支え、チームの中心選手たちは脂が乗る年齢に差し掛かる。先発陣では床田寛樹、九里亜蓮、森下暢仁ら、リリーフ陣では島内颯太郎、栗林良吏、矢崎拓也らだ。

 昨季から新井貴浩監督が率いて以降、侍ジャパンのレギュラーさえ掴みそうな小園海斗、初代表の田村俊介ら若手の台頭も光る。西川を失った分、苦しいのは事実だが、投手陣は充実している。シーズンを通して、徐々にチームが完成されていくようなペナントを展開するのではないか。

バウアー&今永が抜けた先発に不安…DeNA

 昨季3位のDeNAは、先発陣に不安を抱える。日本を去ったバウアー、メジャーのカブスに移籍した今永昇太の穴をどう埋めるか。沢村賞の期待がかかる東克樹に加えて、計算できる投手がもう1、2人欲しいところ。

 打線は期待できる。ドラフト1位ルーキー・度会隆輝や、同じくルーキーの石上泰輝がオープン戦で打ちまくっている。若き戦力がけん引し、快進撃を起こす可能性は十分ある。一方で、イキのいい若手が左打者に偏重しているという問題もある。さらにチームの顔、牧秀悟は昨季、WBCから秋のアジアプロ野球チャンピオンシップ出場まで、フル回転のシーズンを送った。その疲労も心配される。

離脱者続出で突貫工事か…ヤクルト

 投手陣さえ整備できれば期待できるいつものヤクルトだが、故障者の続出が懸念材料だ。奥川恭伸と田口麗斗がキャンプ中に、開幕投手と目された小川泰弘が3月にコンディション不良で離脱した。

 3月13日の対DeNA戦では13失点と大炎上。投手陣に不安を抱えている。配置転換を行いながら戦力を整備する必要がありそうで、開幕まで突貫工事のマネジメントになるだろう。

 ここ数年、セ・リーグの覇者は連覇が続いている。広島、巨人、ヤクルトに倣って、阪神も続くのか、それとも群雄割拠の時代に突入するのか。混戦必至のペナントを見守りたい。

〈パ・リーグ編につづく〉

文=氏原英明

photograph by L)Nanae Suzuki/R)JIJI PRESS