大谷翔平、山本由伸、今永昇太、松井裕樹――メジャーリーグの開幕から1カ月が過ぎた今、4人の現地評価は? 長年MLBを取材し現在はニューヨーク・タイムズ紙などに寄稿している米ベテランジャーナリスト、スコット・ミラー氏の本音評。【全2回の2回目】

 大谷翔平の成績についてここまで「満点に近い」というのがミラー氏の評価だ。

「打撃成績を見ても、二塁打や塁打数で両リーグトップを走り、本塁打、打率、長打率、OPSなどでも上位に入る」

大谷の得点圏…どう見る?

 4月3日の本拠地でのジャイアンツ戦で移籍1号本塁打を放ち、ファンがキャッチした記念のホームランボールにも注目が集まった。とんでもない打球速度を出して周囲の度肝も抜いた。4月21日のメッツ戦で日本人の通算最多本塁打更新となる176号を記録。23日のナショナルズ戦で118.7マイル(約191キロ)の自己最速本塁打となる今季6号を放てば、27日のブルージェイズ戦では今季メジャー最速で自己最速の打球速度119.2マイル(約192キロ)の強烈なタイムリー。確かに記憶に残るパフォーマンスの連続だった。

「ただ1つ不思議だったのは、得点圏に走者を置いた状況で開幕から19打数1安打と苦しんだことだ。ヒットを量産していたのに、打点を挙げる機会では音無し。クラッチ(重要な)場面で相当なプレッシャーを感じていたのかもしれないし、もしかしたらミズハラのスキャンダルの影響がここに出ているのではと考えた人もいたと思う。オオタニは言い訳や細かいことは言わないので、理由を正確に知ることはできないけれどね。

 全体的にはいい開幕1カ月だった。今の打撃の調子とこれまでのスタッツを見ると、得点圏に走者のいる状況で打ち出すのも時間の問題。これまでの数字をカバーする勢いで数字を上げるかもしれない」

「85点」山本由伸の評価

 では、今季から新たにメジャーでプレーする日本人3投手についてはどうか。

「85点」を与えられたのは、山本由伸である。オリックスからポスティングシステムを利用し、メジャーの投手史上最高額となる12年総額3億2500万ドルでドジャースに入団した右腕だ。

「韓国の開幕シリーズでのデビュー戦は4安打5失点でわずか1回しかもたないという悲惨な結果だったが、その後は立て直し、昨オフのFA市場であれほどの争奪戦を巻き起こした投手だけあるという、ポテンシャルの片りんも見せた。最初の1カ月はやや安定感に欠けた印象だが、日本から米国に来てさまざまな違い、例えばMLBの公式球は日本のものより大きくて滑りやすいといったようなことに適応しなければならないと考えれば、適応期間はあってしかるべきだし、仕方がない。ただ最初の6試合で被打率.224、28イニングで37奪三振と、この2つのスタッツは優秀。夏に向かって調子を上げるだろうと期待できる」

今永を最高評価…際立つ「頭の良さ」

 つづいて今永昇太の評価。DeNAからポスティングシステムで、自身のたっての希望でカブスに4年総額5300万ドルで入団した。メジャー最初の1カ月で無傷の4勝をマークした今永には、「100点満点」の最高評価をつけた。

「デビューから18.1イニング連続で自責点ゼロは見事だった。カブスはイマナガを獲得したときに当然、活躍を見込んでいたが、これほど素晴らしい投球を続けるとは想像もしていなかっただろう。ここまでの投球で最も印象的なのは、ほとんどまたは全く対戦したことのない打者が何を狙ってバットを振ってくるかを察知する能力が非常に高いということだ。4月13日のマリナーズ戦での登板を観たが、敵の打線がみんなストライクゾーンの低めに落ちるスプリットに手を出さず見送っていたが、彼はすぐにそれを察した。さらに5.1回の登板イニングの間に戦略を立て直して速球主体の組み立てに変え、最終的には90球中で速球を60球も使い、チームを4-1の勝利に導き2勝目を挙げている。デビュー1カ月の投球は、本当に素晴らしいものだった」

「95点」松井裕樹の適応力

 では、松井裕樹はどうか。楽天から海外FA権を行使しパドレスに5年総額2800万ドルで入団。山本、今永とは役割の違うリリーフだが、ここまで好投を続けている松井も採点は95点と高評価だ。

「開幕からチームの最初の25試合でナ・リーグ最多タイの12試合に登板し、リリーフとして2勝0敗、防御率は1点台をキープしていた。メジャーでの最初の一歩としては文句なしの働きだったし球団も満足だと思う。マイク・シルト監督は『彼は今季来たばかりで、我々チームは昨年までの彼のことは何も知らなかったが、私が強く感じるのは、彼は慣れない環境やどんな場所でも自分自身をその場に適応させ、自分の実力を発揮できるタイプの選手なのだということだ。これは口で言うほど簡単なことではない』と言っていた。新しいリーグに来て1年目というのは、誰にとっても難しいもの。しかしマツイはここまで冷静沈着にすべてのことに適応しているし、今後さらにレベルを上げるかもしれないという可能性を感じた」

 メジャーで新たなスタートを切った日本人4選手の滑り出しはいずれも順調。今シーズンはこれからさらに上昇気流に乗るのか、注目される。

『「オオタニが話すようになった」米名物記者が驚いた…ドジャースで“なぜ変化”?』編からつづく

文=水次祥子

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