【九重】九重町は出産祝いの記念品として本年度から、県産材を使った木製食器セットを贈る事業を始めた。町内の木工作家が一つ一つ手作りしたもので、届け出を受けた後に子どもの名前を刻印する。森林環境税の自治体配分金を財源とする新たな取り組みで、出生数の減少傾向に歯止めをかける狙いもある。
 わん、ボウル、スプーン、フォーク、離乳食などを食べさせるフィーディングスプーンの5点セット。
 戸高朋子さん(58)=野上=が杉材のわんとボウル、後藤文生さん(39)=田野=がカエデ材を使ったスプーンなどを手掛けた。
 今月初め、町役場で日野康志町長に披露。戸高さんは「ずっと使える物を親子に届けたいと丁寧に仕上げた。食器から木や森に思いをはせるきっかけにもしてほしい」、後藤さんは「普段は県外からの注文が多く、地元に貢献できてうれしい。食育などにも役立ててもらいたい」と話した。
 日野町長は「出生祝いと、環境に関心を持ってほしいという願いも込めている。素晴らしい食器で大変ありがたい」と礼を述べた。
 町出身で、由布市湯布院町にアトリエを構えていた故時松辰夫さんが2人の共通の師匠。全国各地で指導にも尽力し、2021年に83歳で亡くなった。2人は「地元素材を使って地域の特色を出し、世界に通用するデザインを目指すことを教わった。いずれは九重産材だけで作りたい」と声をそろえた。
 九重町子育て支援課によると、町内の出生数は14年度の78人から22年度は33人と減少傾向が続く。同課は「人生で最初の行政サービスにふさわしい記念品。多くの家庭に受け取ってもらいたい」と出生数増加に期待を寄せた。