きょうは「こどもの日(ひ)」。戦後(せんご)間(ま)もなくできた「祝日(しゅくじつ)」を決(き)める法律(ほうりつ)で最初(さいしょ)に定(さだ)められた九(ここの)つの祝日の一(ひと)つです。

 祝日を選(えら)ぶに当(あ)たり当時(とうじ)の国会(こっかい)が第一(だいいち)の基準(きじゅん)としたのは「新(あたら)しい憲法(けんぽう)に沿(そ)っていること」でした。

 世界(せかい)に例(れい)がない「こどもの日」は、平和(へいわ)憲法の下(もと)で新(あら)たな国(くに)づくりへ、子(こ)どもたちにかけた期待(きたい)の大(おお)きさの表(あらわ)れでもあったのです。

 その子どもたちから今(いま)、平和を求(もと)める声(こえ)が上(あ)がっています。

 最近(さいきん)では2021年(ねん)、核兵(かくへい)器(き)を持(も)ったり造(つく)ったりすることを禁(きん)じる国連(こくれん)の「核兵器禁(きん)止(し)条約(じょうやく)」に賛成(さんせい)するよう日本(にほん)政府(せいふ)に求める署名(しょめい)活動(かつどう)が、全(ぜん)国(こく)の高校生(こうこうせい)たちによって実施(じっし)されました。

 中心的(ちゅうしんてき)な役割(やくわり)を担(にな)ったのは、平和について学(まな)び行動(こうどう)するサークル「高校生平和ゼミナール」です。1978年に広島(ひろしま)で誕生(たんじょう)し、その後(ご)各地(かくち)に広(ひろ)がりました。

 県内(けんない)からも高校生3人(にん)が参(さん)加(か)。その一人(ひとり)、4月(がつ)に京都(きょうと)の大学(だいがく)へ進学(しんがく)した上原(うえはら)一路(ひろ)さん(18)に、平和に関心(かんしん)を持ったきっかけを聞(き)きました。

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 きっかけの一つは小学(しょうがく)4年生の頃(ころ)に家族(かぞく)で名護市(なごし)の「瀬嵩(せだけ)の浜(はま)」を訪(おとず)れた時(とき)のこと。貝(かい)一つ一つに名前(なまえ)があると母親(ははおや)から聞き、「面白(おもしろ)そう」と思(おも)ったそうです。

 同時(どうじ)に知(し)ったのは、基地(きち)を造るためこの海(うみ)がもうすぐ埋(う)め立(た)てられるということ。「きれいな海をなぜ埋め立てるの?」と疑問(ぎもん)が湧(わ)きました。

 6年生の時には学校(がっこう)の勧(すす)めで平和ガイド講習(こうしゅう)に参加。最初(さいしょ)は嫌々(いやいや)でしたが、お年寄(としよ)りが子ども時代(じだい)に経験(けいけん)した沖縄戦(おきなわせん)の話(はなし)を聞き、もっと知りたいと思うようになったのです。

 「平和と言(い)うとハードルが高(たか)いようだけど、平和は身近(みぢか)な問題(もんだい)」と上原さん。「なぜ」と「知りたい」を重(かさ)ねて考(かんが)えるようになったと話(はな)してくれました。

 小橋川(こばしがわ)仁菜乃(ひなの)さん(16)も身近なことから平和に関心を持った一人です。

 昨年(さくねん)、うるま市の自宅(じたく)から徒歩(とほ)10分(ぷん)の場所(ばしょ)に自衛隊(じえいたい)の訓(くん)練場(れんじょう)ができると聞いて「静(しず)かな環境(かんきょう)はどうなるんだろう」と不安(ふあん)になりました。

 母親と一緒(いっしょ)に住民(じゅうみん)説明会(せつめいかい)に参加。中学(ちゅうがく)で習(なら)った憲法を思い出(だ)し、防衛省(ぼうえいしょう)の担当者(たんとうしゃ)に「なぜ9条(じょう)があるのに訓練をする必要(ひつよう)があるのか」と疑問をぶつけました。

 答(こた)えは早口(はやくち)で、ほとんど聞き取(と)れなかったそう。一方(いっぽう)、建設(けんせつ)反対(はんたい)の声の高まりを受(う)け、防衛省は先月(せんげつ)、計画(けいかく)の撤(てっ)回(かい)を決めました。

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 「おかしい」と思ったら声を上げること−。2人の経験(けいけん)は、私(わたし)たちに大切(たいせつ)なことを教(おし)えてくれています。

 今もいろんな国(くに)で戦争(せんそう)や紛(ふん)争が起(お)きており、平和は当たり前(まえ)ではありません。

 戦後80年近(ちか)く日本が戦争をしなかったのには「戦争の放(ほう)棄(き)」を定めた憲法9条が大きく影響(えいきょう)しています。

 一方、その憲法には自由(じゆう)と権利(けんり)は「不(ふ)断(だん)の努力(どりょく)によって保持(ほじ)する」ともあります。

 平和であるためには常日頃(つねひごろ)からの国民の努力が重要(じゅうよう)なのです。

 一人一人が考え、異(こと)なる考えであれば話し合(あ)い、争(あらそ)いを避(さ)けるために行動(こうどう)する。平和はそうした積(つ)み重ねでしかつくれないことを、大人(おとな)も子どもも知る必要があります。

 そして、すでにそれを実践(じっせん)している子どもたちの声は、尊(そん)重(ちょう)されるべきだと思います。

(写図説明)外務省で質問する上原一路さん(左)=2022年