那覇市で楽器やCDなどを扱う「高良レコード店」の75周年を記念したイベント「Rock It Loud! 2024」が12日、那覇市の桜坂セントラルで開催された。超満員の会場には、元メガデスのメンバーとしても世界的に知られるギタリストのマーティ・フリードマンと、5人組ロックバンド「East Of Eden」が登場。マーティがコラボしてEast Of Edenの楽曲を演奏するサプライズもあり、アンコールも含めて計12曲を熱演した。マーティが5月22日に国内発売する新アルバム「ドラマ ー軌跡ー」の収録曲を恍惚(こうこつ)の表情で弾き上げると、新旧入り交じるロックファンは歓喜した。(文・写真=ライター・長濱良起)

マーティ・フリードマン
 「スラッシュメタル四天王」の一角に数えられたバンド「メガデス」の元ギタリストで、同バンドの1990年代黄金期を支えるとともに、メタル音楽シーンの発展に大きく貢献している。日本に移住して約20年がたっており、2016年には文化庁から日本遺産大使に任命されるなど、日本と世界の文化交流の懸け橋としても活躍している。

East Of Eden
 Ayasa(バイオリン)、湊あかね(ボーカル)、Yuki(ギター)、わかざえもん(ベース)、MIZUKI(ドラムス)からなる実力派ガールズロックバンド。Ayasaが世界進出を目指して集めたメンバーらと2023年に活動開始。疾走感あふれるサウンドと、それに重なるバイオリンの音色が壮大な世界観を演出する。Ayasaはかつて沖縄を拠点に活動をしていた。

実力派ぞろいEast Of Edenが沖縄初ライブ

 観客の8割ほどが黒いTシャツを着た、まさしくメタルファンスタイル。East Of Edenの登場に大声援を送りながら拳を突き上げた。

 East Of Edenとしては初の沖縄ライブ。2曲目の「無重力飛行」では、AyaseのバイオリンとYukiのギターが交互にソロパートを畳みかけるなど、個々の際立つテクニックを存分に見せつけた。

 4曲目「Deep Dive」では突如マーティがギターを抱えて登場。まだまだマーティの登場が後だと思っていたオーディエンスは、そんな“フライング登場”に大喜び。ギターソロでは、後方の客がこぞって背伸びして、その手元を見逃すまいと必死だ。演奏後には、マーティとEast Of Edenのボーカル・湊が、高良レコード店の75周年を「おめでとうございます」と祝った。

ギターとピアノ 聴かせる「ロマンチック」

 East Of Edenに続いて本登場したマーティ・フリードマン。メタルギタリストとして知られているが「ロマンチックな感じでいきたい。ギャップが大好きですから」と、ピアノの丸木美花とのシンプルなデュオ編成で弾き鳴らした。丸木はマーティのアルバムにも参加しており、アルバム参加メンバーとの生演奏という意味では、このライブが世界初披露の場となった。

 1曲目は、新アルバムのオープニング・トラックでもありシングルとして先行配信されている「Illumination」だ。牧歌的な景色が浮かぶような雰囲気の冒頭から、一気に道がぱーっと開けるような展開に心を奪われてしまう。まるでギターが自分の意思で歌っているかのようで、時にはほえているかのようだ。

タンナファクルー「おいし過ぎて一気に食べた」

 終始軽快なMCでも観客を楽しませたマーティ。沖縄の伝統菓子、タンナファクルーの話題も飛び出した。2日前に出演したラジオ番組でも「差し入れでもらって、おいし過ぎて一気に袋の半分ぐらい食べた」と明かしていたほどで、再来週も沖縄に来るという丸木に薦めていた。「みんな親切で気候も良くてゆったりできるので、僕が音楽をやるにはとても理想的な環境だと思います」と話すと、拍手が巻き起こった。

 スローテンポでぐっと聴かせるバラード曲も多い新アルバム「ドラマ ー軌跡ー」について、マーティはこう語った。「ヘビーメタル(のような激しい音楽)をやっている人でも、どこか自分の中にロマンチックな成分があるはず。それを見せるのは恥ずかしいかもしれないですが、僕はなかなか恥知らずな人だから、自分が聴かせたい音楽を思いっきり聴かせたいと思います。ゴリゴリのメタルじゃないけど、同じようなインテンス(熱烈)な気分で作りたいと思います」。同じく世界初披露の新曲「A prayer」「Deep End」を、伸びやかに歪(ひず)んだギターでしっとりと聴かせた。

 再度登場したEast Of Edenのアンコールではマーティも登場し、またまたスペシャルコラボの幕が明けた。ヘビーでありながらキャッチーさが魅力の楽曲「Evolve」では、East Of Edenの6人目のメンバーさながら、ジャンプしたり髪を振り乱したりしながらギターをかき鳴らすマーティ。61歳のメタルレジェンドはまるで、少年のようだった。