琉球コラソン、7点差黒星が“今季ベストゲーム”だったワケ
大柄な相手に対し、ポストを守る琉球コラソンの髙橋翼(中央手前)。奥はゴールキーパーの島袋翔=3月31日、那覇市の沖縄県立武道館アリーナ(長嶺真輝撮影)

7点差での敗北にも関わらず、試合終了と同時にホーム会場に響いたのは琉球コラソンへの“賞賛”の拍手だった。

3月31日、那覇市の沖縄県立武道館アリーナでホーム戦を行った日本ハンドボールリーグ(JHL)11位の琉球コラソン。リーグ3連覇中で、現在2位の豊田合成ブルーファルコンと今季第17戦を行い、26ー33で敗れた。

通算成績は2勝14敗1分の勝ち点5となり、依然として厳しい戦いが続く。が、豊田合成との試合後、東江正作監督は憑き物が落ちたような表情でこう言った。

「手応えとしては、今シーズンで一番でしたね」

実際、冒頭で記したファンの反応が示すように、格上相手に60分間怯むことなく我慢を継続。後半には一時2点差まで迫る熱戦を演じた。キーマンとなったのは、シーズン途中の登録抹消から復活したポストプレーヤー髙橋翼、この試合がJHLデビュー戦となったゴールキーパー島袋翔(八重瀬町出身、東風平中学校ー那覇西高校ー高松大学)の2人である。

“絶対王者”豊田合成に粘りのハンドボール

琉球コラソン、7点差黒星が“今季ベストゲーム”だったワケ
華麗なステップからシュートに行く佐藤草太(長嶺真輝撮影)

試合はスタートから約5分が経過した時点で、天井からの雨漏れの影響で30分近く中断。2ー2の同点だったが、再開直後に髙橋翼が反則で2分退場となり、4連続得点を許す。それでも身長190cmを超える大柄な選手が多い相手に対してライトバック髙橋友朗、センターバック佐藤草太らが積極的にディフェンス網の間を割り、個人技やパス回しから各選手がバランス良くシュートを決めて食らい付いた。

さらにポストを守った髙橋翼とパン・エンジャーを中心に各選手が体を張り、GK衣笠友貴や島袋も度々好セーブを見せて流れをつくる。日本代表である豊田合成のGK中村匠にシュートを防がれる場面も多かったが、12ー15と射程範囲内の差で前半を折り返した。

後半も攻守ともに強度の高いプレーを続け、付かず離れずの展開に。残り14分ほどでエンジャーが2分退場となり、連続で得点されたが、ここでも辛抱強く戦って最後まで集中を切らさなかった。

琉球コラソン、7点差黒星が“今季ベストゲーム”だったワケ
仲間とハイタッチする琉球コラソンの選手たち(長嶺真輝撮影)

新加入の外国籍選手との連係が深まらなかったり、主力が退団したりして、厳しい戦いとなっている今季のコラソン。レギュラーシーズンの3分の2を終え、これまでの戦いを「暗中模索」と振り返る東江監督は、ここにきてようやくチームに手応えを感じているようだ。

「バックプレーヤーがシンプルに強い縦の1対1を仕掛ける。3人目が少しでも寄るなら(パスを)振って、寄らないなら自分で行こうと。友朗はバラスケス(豊田合成の197cmの外国人エース)がかなり高い位置から当たってきてたけど、それでも怯まずに行って7mスローを取ったりミドルシュートを打ったりしていました。守り方も含めて、コラソンは『これをやるんだ』ということを再確認できた。やっと新たなチームとして歩み出せたと感じます」

オフェンスで人とボールが動き、小柄ながらもディフェンスで体を張るというコラソンらしいプレーを遂行するという意味で、この試合が今季ベストゲームだったことは間違いない。

「悔しさ」乗り越えた髙橋、エンジャーと好連携

琉球コラソン、7点差黒星が“今季ベストゲーム”だったワケ
協力してポストを守る髙橋翼(中央)とパン・エンジャー(左奥)(長嶺真輝撮影)

改善は攻守どちらも見られたが、2月にポストの守備の要だった峰岸勁志郎が引退したことで懸念されていたディフェンスにおいては、見どころが多い一戦となった。

まず目立ったのは、復帰2戦目となった髙橋翼の活躍である。得点力の高い190cm超の外国籍選手が2人同時にコートに立つことが多い豊田合成に対し、「絶対に俺が止める」という強い気持ちで臨んだという。

180cmの髙橋が比較的前から当たり、一緒にポストを守った190cmのエンジャーが腕を伸ばして相手のミドルシュートのコースを限定。結果、ゴールキーパーがシュートコースを読みやすくなり、髙橋は「この1週間やってきたことが8割くらいできました。キーパーが『(コースが)見える』と言ってくれていたので、ディフェンスは良かった。自分もやれるんだと自信になりました」と振り返る。

シーズン途中で登録を抹消された際は「悔しかった」。復帰後初のホーム戦は「チャンピオンが相手だったので、鬱憤を晴らすという強い気持ちでやりました。皆さんに認めてもらうため、頑張りました」と語り、汗を拭った。

島袋「実業団でプレーするのが夢だった」

琉球コラソン、7点差黒星が“今季ベストゲーム”だったワケ
手足を目一杯伸ばしてゴールを守る島袋翔

新たな戦力である島袋も「相手が強いこともあって、試合前から『自分が出た時は絶対に流れを変えて、ちょっとでも食らい付いていこう』と思ってました」と強い決意でデビュー戦のコートに立った。豊田合成とは大学時代の日本選手権で試合をしたことがあり、これが自身としては2度目の対戦だったという。

身長176cmとゴールキーパーの中では小柄だが、東江監督が「彼は反射神経と位置取りがすごい」と評するように、この試合ではその持ち味を発揮して好セーブを連発。自身も「前回やった時はプロとの差を見せ付けられ、僕もめちゃくちゃやられました。その経験から我慢することを教わり、今日はシュートを打たれるギリギリまで動くのを我慢できました。そうすれば相手も打ちづらくなると思うので」と語り、手応えを掴んだ様子だった。

国民体育大会に出場するなど小中高と沖縄代表としてプレーし、大学4年時には高松大学を中四国リーグ優勝に導いて最優秀選手賞も獲得した。小さい頃からコラソンの試合はよく観ていて、「実業団でプレーするのが夢だった」と言う。この日は715人の観客が来場し、「ずっと上から観ることしかなかったので、最初はちょっと戸惑いましたけど、声援のおかげで連続して止められたんじゃないかなと思います」と笑みを浮かべた。

島袋は22歳、髙橋も24歳と、若手が躍動するコラソン。今シーズンは残り7試合となり、東江監督は「残りの試合を全て勝つ気持ちでやっていきたい」と気合を入れる。一つでも多く白星を増やし、来季につながるような内容の試合を重ねていきたい。