『ローマの休日』©1953, 2023 Paramount Pictures.


5月は、“永遠の妖精”と謳われるオードリー・ヘプバーンの誕生月。
1929年5月4日にベルギーのブリュッセルで生まれたオードリーは、初めて主演に抜擢された映画『ローマの休日』で愛らしい王女を演じてアカデミー賞主演女優賞を獲得。以降、ファッションアイコンとしても注目の的に。
70年代以降は数本の映画に出演しただけで、多くの時間をユニセフ国際親善大使としての活動に捧げました。
今回は、そんなオードリーの人気作の中から、ファッション面でも見どころの多い3作を紹介します。

着こなし術に脱帽! 永遠に刻まれる一日を描いた傑作
『ローマの休日』

©1953, 2023 Paramount Pictures.

 ヨーロッパの小国の王女アンは、公務に縛られた生活に嫌気がさして、滞在中のローマで脱走を図ります。
 街で彼女と出会ったアメリカ人新聞記者のジョーは、大スクープのチャンスを逃すまいと観光ガイド役を買って出て、王女の姿を同僚のカメラマンに撮影させます。束の間のスリルを楽しんだ二人の間にはすぐに恋心が芽生えますが……。

©1953, 2023 Paramount Pictures.

 王女の気品とおてんば娘の無邪気さを体現したオードリーがとても可愛らしくて、そんな彼女を役柄上でも先輩俳優としても見守るグレゴリー・ペックがまた素敵です。
 アンとジョーのラストシーンのやりとりは、気高くて切なくて、観るたびに泣けてしまいます。

©1953, 2023 Paramount Pictures.

 また、オードリーの溌剌とした魅力を引き出したスタイリングも秀逸。
 王女が脱走時に身に着けているのは、上品なボウタイ付き長袖ブラウスにロングスカート。
 街に出ると、フラットサンダルを買い、髪を切り、袖をまくり、階段に座ってアイスクリームを食べます。

©1953, 2023 Paramount Pictures.

 自由を満喫した王女はボウタイを外したのか、半袖の開襟シャツ風のスタイルに。
 さらに、スカーフを首に巻いて華やかさをプラス。服を着替えていないのに多彩なスタイルを披露する技は、お手本にしたいところです。

『ローマの休日』

1953年製作

4K Ultra HD+ブルーレイ ¥6,589
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント


ファッションアイコンとしてのオードリーが誕生
『麗しのサブリナ』

©1954 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM, 🄬& Copyright ©2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 大富豪一家のお抱え運転手の娘であるサブリナと、一家の長男と次男との間に繰り広げられる恋を描いたロマンティック・コメディ。
 冒頭、ポニーテールで木をするすると登っていくオードリー演じるサブリナは、どこか少年のよう。
 そんな彼女が、パリの料理学校から帰国後、すっかり洗練されたレディに変身しているのが見どころです。

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©1954 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM, 🄬& Copyright ©2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 ウェーブがかったショートヘアになって垢抜けたサブリナは、ウエストシェイプのスーツや優美な純白ドレス、肩のリボンがキュートなリトルブラックドレスを纏い、兄弟を魅了します。
 これらは撮影前にオードリーがジバンシィのコレクションから選んだもので、痩せていて胸が小さいというオードリーの体型に合い、なおかつ長く美しい首が映えるデザインです。
 オードリーは自分に似合うものをよく知っていたのです。本作が縁で知り合ったオードリーとユベール・ド・ジバンシィは、生涯にわたって友情を育みました。


©1954 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM, 🄬& Copyright ©2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 一方、映画の終盤でサブリナが着ている全身黒のスタイルは、『ローマの休日』でも衣裳を担当したイーディス・ヘッドによるデザイン。
 ふくらはぎ丈のスリムパンツは“サブリナパンツ”と呼ばれ、今でも女性たちに人気です。オードリーの肉感的ではない体形をあえて強調することで、シンプルな美しさを印象付けました。

『麗しのサブリナ』

1954年製作

Blu-ray ¥2,075 /DVD ¥1,572
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント


オードリー×ジバンシィ×ティファニーが生んだ美の結晶
『ティファニーで朝食を』

©1961 by Paramount Pictures and Jurow-Shepherd Production All Rights Reserved.TM, 🄬 & Copyright © 2011 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 早朝のニューヨーク五番街、宝石店ティファニーの前に立ち、紙コップを片手にパンをかじる黒いドレスの女性。
 あまりにも有名なワンシーンで始まる『ティファニーで朝食を』は、トルーマン・カポーティの同名小説をオードリー・ヘプバーン主演で映画化したラブストーリーです。

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 主人公のホリー・ゴライトリーは、猫と一緒に気ままに暮らす女性で、高級娼婦であることを匂わせています。
 彼女が住むアパートに引っ越してきた駆け出しの作家ポールは、ホリーに惹かれていきますが、テキサスから彼女の夫だという男がやってきて……。

©1961 by Paramount Pictures and Jurow-Shepherd Production All Rights Reserved.TM, 🄬 & Copyright © 2011 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 本作のオードリーのファッションも、その一部をユベール・ド・ジバンシィが担当。
 冒頭のブラックドレスや朱色のコートなど、オードリーが着ると優美なだけでなく軽やかさが加わります。
 ホリーが「ムーン・リバー」をギターで弾きながら歌う名シーンなどのカジュアルな装いはイーディス・ヘッドが手掛けていますが、これもまた素のホリーを表現していて魅力的です。

©1961 by Paramount Pictures and Jurow-Shepherd Production All Rights Reserved.TM, 🄬 & Copyright © 2011 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 オードリーが娼婦役に挑んで新境地を開いた作品ですが、よく言われているように、原作とは異なります。
 ただ、オードリーが醸し出す微かな不安定さにより、ファッショナブルな映画の全編にどことなく物悲しさが漂っていて、映画版ならではの味わい深さがあります。

『ティファニーで朝食を』

1961年製作

Blu-ray ¥2,075/DVD ¥1,572
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント


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