車を運転中に急ブレーキをかけたら、同乗者に謝るべきか――。突然飛び出してきた自転車との衝突を避けるため、急ブレーキを踏んだ夫。後部座席の妻はその時の衝撃で首を痛めたといい、謝罪を求めましたが、気にもかけない夫に納得がいきません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」では、この妻からの投稿を発端に、ドライバーと同乗者のマナーを巡る議論が勃発しました。

投稿者の「さくら」さんによると、夫が急ブレーキをかけたのは、車で子どもを習い事へ送った後の出来事でした。子どもを車から降ろした後、そのまま後部座席で携帯電話をいじっていたトピ主さん。急ブレーキに驚いたものの、自転車とぶつからず良かったと胸をなでおろしました。

ただ、トピ主さんが首に痛みを感じると伝えたところ、夫は「整体でも行ったら〜?」と言うだけで心配する様子が感じられません。トピ主さんが「心配してくれないの?」「謝ったりないの?」と厳しい口調で問い詰めると、夫は「なんで謝らなきゃいけない?」「もうこれからは運転しない」と応酬。後部座席で携帯電話をいじっていたトピ主さんの態度にも不満な様子で、「俺はタクシーじゃないから」と突っぱねました。

家族の送迎や買い物などでの何げないドライブが一転、夫婦仲にも急ブレーキをかける事態になりました。事故回避のためのやむを得ない状況を考え、トピ主さんは「急ブレーキは謝ることではないのは私も分かっています。ただ何でそんな言い方するかと思ってしまいます」と矛を収められないようです。

このトピには30件を超える反響が寄せられました。「早く仲直りしなよ」「優しい言葉をかけてほしかったんだよね」など、夫婦げんかを仲裁しようとするコメントのほか、夫の急ブレーキを責めるのはお門違いだという意見が目立ちます。さらに、運転者と同乗者それぞれのマナーや責任を問う指摘もありました。

「何で旦那さんが謝るの?」というタイトルで書き込んだ「タロ」さんは、「飛び出してきたのは自転車でしょ? 旦那さんは急ブレーキをかけて事故を防げたのだからファインプレーです」と夫の肩を持ちます。

「自転車が急に飛び出してきて、ご主人はどれだけ怖かったでしょうね。私も似た経験ありますけど、しばらくは体の震えが止まりませんでした」と自らの体験を思い返した「まな」さんも「そこに後部座席でお客様気取りの人が、『首いたーい。謝ったりしないの?』なんて言ったらブチ切れますね」と、トピ主さんの言動に批判的です。

「急ブレーキがトピ主の身の安全を守ったのですよ」と念押しするように書き込んだ「ゆかたん」さんは、夫に謝罪を求めたトピ主さんに「寝言は寝て言ってください。下手すれば、首の痛みどころでは済まなかった」と辛辣です。

夫の急ブレーキは不可抗力であり、謝罪の必要はないという意見がある一方で、ドライバーとしての責任を問う声もあります。

「私なら乗っている家族に『ごめん!みんな大丈夫?』って謝ると思いますよ」と書き込んだ「あんこ」さんは、自分の不注意が原因ではない急ブレーキであったとしても、「自分が運転手で誰かを乗せている以上、運転手に安全責任があるのではないかと」とつづります。そればかりか、事故の有無にかかわらず痛みを訴える家族がいれば、「『ごめんね、病院に行った方がいいよ、一緒に行こうか?』って私なら声をかけたいですね」とも。

夫と交際した当初から約20年間、自ら運転したことがないという「ザムザ」さんは「(夫が)急ブレーキしたとき必ず『ごめんね、びっくりしたね』と謝ってくれますよ」と明かします。謝罪のなかったトピ主さんの夫について「私なら結婚したことを後悔します」とまで言い、容赦しません。

これに対し、「もう運転しない」「俺はタクシーじゃない」と訴えた夫に同情するコメントもあり、トピ主さんの同乗者としてのマナーを問題視するコメントもあります。

「夫婦で出かけたのなら、助手席に座って運転者を気遣うのが、我が家では普通です」と言い、ドライバーへの配慮を大事にする「ばんび」さんは、「後部座席でお客さんみたいに悠々とスマホをいじっていれば、『いい気なもんだ』と思います」と率直につづりました。

「いも栗南京」さんも、「走行中の責任はすべて運転者だと思わないで、回避できる事故のために気配り目配りされてはいかがですか?」と、トピ主さんの同乗する際のマナーをただしました。

もしトピ主さんが自分の妻なら、「『今回は謝罪しますが、二度と乗ってもらわなくて結構です』と言います」と書き込んだ「すずめばち」さんは、運転者に対する共感や敬意を求めます。急ブレーキをかけてしまっても、「急に飛び出てきて危なかったね、でも事故らずに済んでよかった」とドライバーの気持ちに寄り添えなければ、「他人の運転する車に乗る資格はない。どうぞご自身で運転なさってください」と忠告しています。

(読売新聞メディア局 鈴木幸大)