大ヒット映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」をモチーフにしたイベントが世界で話題になっています。タイトルは「Willy’s Chocolate Experience」。没入型イベントのはずが、実際は全く没入できないチープな空間だったようで、大炎上してしまいました。

会場はイギリス・グラスゴーの倉庫で、チケット代は35ポンド(約6500円)もします。

期待した家族連れが会場に行ってみると、だだっ広い倉庫に雑な感じで小道具が置かれ、バイトの俳優たちがクオリティーの低い衣装で演じている、という残念な光景が。

主催したのは、「ハウス・オブ・イルミナティ」という陰謀論マニアのような不穏な名前の会社。

イベントの公式サイトには、生成AIで作ったと思われるビジュアルとともに「チョコレートの夢が現実になる場所、Willy’s Chocolate Experienceの気まぐれな世界に飛び込みましょう」「魔法のようなサプライズ」などと楽しそうな宣伝文句が並んでいます。たしかに「気まぐれな世界」で「サプライズ」だったかもしれません……。
映画には出てこない「The Unknown」という邪悪なチョコレート職人役の俳優が子どもたちを脅かしたり、そもそもチョコレートではなくわずかなジェリービーンズが配られたり、想定外のできごとだらけでした。会場の殺伐とした倉庫は、好意的に捉えれば、映画でウォンカがチョコレートショップにリノベーションする前の廃虚を再現していた……のでしょうか。

子どもたちとイベントに行った来場者は激怒し、警察が出動するほどの騒動に。「ハウス・オブ・イルミナティ」は謝罪文を発表し、来場者に返金するという声明文を投稿しましたが、なぜか削除。事態は混迷しています。

求人サイトで集まった俳優たちも気の毒です。ある俳優は「ここは夢が死ぬ場所だと思った」と述懐。AIで生成されたような意味不明な台本を渡されたので、急遽アドリブで演じることに。来場者の動画を見ると、バイトの俳優たちが子どもたちを失望させまいと一生懸命演じている様子が映っていました。逆境で生まれるパワーと仲間意識……ここは実際に映画を再現しているかもしれません。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)