日本時間3月11日、米アカデミー賞授賞式が開催された。この記事では、先に発表されたノミネート作品の中から、各部門を授賞した選りすぐりの作品をまとめて紹介する。
参考:米アカデミー賞ノミネート映画まとめ
米アカデミー賞 主要部門 受賞作品
作品賞 BEST PICTURE winner『オッペンハイマー』
クリストファー・ノーランが描く、‟原爆の父”オッペンハイマーの苦悩
2023年7月21日 米国初公開 全世界興行収入:628,572,000ドル (2024年3月10日時点)
アメリカ政府の原爆開発チームを率いた物理学者ロバート・オッペンハイマーの伝記を『ダークナイト』『ダンケルク』などのクリストファー・ノーランが実写映画化。公開当初より批評家を中心に高評価を集め、興行的にも成功。
第96回アカデミー賞においては、作品賞ほか、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィー、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、助演女優賞(エミリー・ブラント)、脚色賞、編集賞、撮影賞、作曲賞、美術賞、音響賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の、今回最多、計13部門ノミネートを果たした。
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©AFPアフロ)結果として、作品賞、監督賞受賞をはじめ、主演男優賞(キリアン・マーフィー、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の7部門を受賞。
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©AFPアフロ)クリストファー・ノーランは『ダンケルク』でアカデミー賞に初ノミネートを果たし、今回は2度目のノミネートにして初受賞を果たした。
初ノミネートにして初受賞 キリアン・マーフィー
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©AFPアフロ)主演男優賞に初ノミネート初受賞を果たしたのは、‟原爆の父”オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィー。アイルランド出身で、舞台を中心に活躍し、ケン・ローチ監督の『麦の穂を揺らす風』などに主演して映画でのキャリアも積み上げてきた。クリストファー・ノーラン監督作品には常連で『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』から『インセプション』『ダンケルク』など多数出演。主演を務めた本作でノーランとともに初のオスカーを手にした。
3度目のノミネートにして初オスカーに輝いた ロバート・ダウニー・Jr.
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©AFPアフロ)最優秀助演男優賞を受賞したのは『オッペンハイマー』のロバート・ダウニー・Jr.。第65回(1993年)に『チャーリー』で主演男優賞、第81回(2009年)に『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』で助演男優賞にノミネートされるもいずれも受賞はならず。今回初めてオスカーを手にした。
あらすじ
世界の運命を握ると同時に、世界を破滅する危機に直面するという矛盾を抱えた一人の男の知られざる人生を、IMAX撮影による没入感と共に描き出す壮大な実話ドラマ。
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News / クリストファー・ノーラン最新作 映画『オッペンハイマー』日本での公開決定
Column / 第42回:女優パワーが炸裂したクリティクス・チョイス・アワード 『哀れなるものたち』主演女優賞受賞のエマ・ストーンが、アカデミー賞前哨戦の順風に帆をあげた!
監督、脚本・製作:クリストファー・ノーラン/原作:カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン/出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナー
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エマ・ストーン 『哀れなるものたち』
プロデュースも手掛けた意欲作で2度目の主演女優賞受賞
すっかりオスカー常連となったエマ・ストーン。前回は第91回(2019年)『女王陛下のお気に入り』で助演女優賞にノミネートされるも、惜しくも受賞を逃した。同作でも監督を務めたヨルゴス・ランティモスと再タッグを組んだ本作では、主演のみならずプロデュースも手掛け、自身2度目となる主演女優賞を手にした。(前回は第89回の『ラ・ラ・ランド』で受賞)
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©Getty Images)また『哀れなるものたち』は、今回最多受賞の『オッペンハイマー』の7部門受賞に次ぐ4部門を受賞。主演女優賞のほか、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞と、その見事な世界観の構築が評価されている。
▼エマ・ストーン (主演女優賞 受賞スピーチ)
なんてこと、ドレスが壊れてしまったわ。本当に本当に驚いています。掠れ声ですみません。候補者の皆さん、サンドラ、キャリー、アネット、リリー、みなさんとこの賞を受賞したと思っています。みなさんから刺激を受けていますし、この場所に一緒にいられてとても光栄です。先日、このような別な場でちょっとパニックになってしまったのですが、その時ヨルゴス(・ランティモス監督)から言われたのは、“自分を客観的に見てごらん”ということでした。彼は正しかった。単に私だけのことではなく、素晴らしい何かを一緒に作り上げたチームの一員として感じれば良いからです。それこそが映画作りの最高の部分です。私は全ての出演者、スタッフ、愛と心遣いと才能を注ぎ込んでくれた全ての人とこの賞を分かち合えることを心から名誉に思います。そしてヨルゴス、ベラ・バクスターの人生という贈り物を授けてくれたあなたに感謝します。
そろそろ締めくくりですが、私の家族に感謝したいです。お母さん、兄弟のスペンサー、お父さん、夫のデイヴ、愛しています。そして、あと3日で3歳になる私の娘は、私たちの生活をカラーに変えてくれました。空よりも大きな愛を送ります。ありがとうございました。(壊れたドレスの)後ろ姿は見ないでね。
あらすじ
自ら命を絶った不幸な若き女性ベラが、天才外科医ゴッドウィン・バクスターの手によって奇跡的に蘇生することから始まる。蘇ったベラは“世界を自分の目で見たい”という強い好奇心に導かれ、放蕩者の弁護士ダンカンの誘いに乗り、壮大な大陸横断の冒険の旅へ出ていく。やがて貪欲に世界を吸収していくベラは、平等と自由を知り、時代の偏見から解き放たれていくのだった。
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監督:ヨルゴス・ランティモス/原作:アラスター・グレイ「哀れなるものたち」(早川書房)/出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
公式サイト searchlightpictures.jp/movies/poorthings
『関心領域』
アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす一家を描く
2023年12月15日 米国初公開 全世界興行収入:16,028,097ドル (2024年3月10日時点)
アウシュビッツ収容所の隣で、ナチス幹部である収容所の所長一家が幸せに暮らす様子を描く。残虐描写は描かない一方、弊の向こうから銃声や叫び声が聞こえるという、異色の演出が高評価を獲得、カンヌ国際映画祭では『落下の解剖学』と最高賞パルム・ドールを競い、グランプリを獲得した。
第96回アカデミー賞では作品賞のほか、監督賞、国際長編映画賞、脚色賞、音響賞の5部門にノミネート。日本代表であった『PERFECT DAYS』を制して国際長編映画賞を受賞したほか、音響賞も獲得、2部門受賞を果たした。監督を務めたのは、ジャミロクワイ「Virtual Insanity」などのMVを手掛け、本作が『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』以来約10年ぶりの長編映画となった、鬼才ジョナサン・グレイザー。
ジョナサン・グレイザーは「製作チームの皆さんに感謝します。我々はこの映画で過去ではなく、現在起きている衝突を反映し、今について伝えるものにすると決めていました。過去に何をしたのかということではなく、むしろ今何が起きているのかということ。私たちの映画は、非人道的な行動が最悪の事態に至ることを示しています。イスラエルであれ、ガザであれ、今も非人道的な行いでたくさんの犠牲者が生まれています。私たちはこれにどう抵抗すれば良いのでしょうか。」とスピーチした。
あらすじ
空は青く、誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがる。1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘドウィグら家族は、収容所の隣で幸せに暮らしていた。スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わす何気ない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか。
『関心領域』おすすめ記事
Column / 第44回:『PERFECT DAYS』の全世界興行スマッシュヒットとアカデミー賞キャンペーン
監督・脚本:ジョナサン・グレイザー/出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー/配給:ハピネットファントム・スタジオ © Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
公式サイト happinet-phantom.com/thezoneofinterest
『ゴジラ-1.0』
世界を破壊する‟ゴジラ”をかつてないスケールで描いた超大作
2023年12月1日 北米初公開 全世界興行収入:50,303,815ドル (2024年3月10日時点)
映画『ゴジラ-1.0』が、本年度の最優秀視覚効果賞を受賞した。授賞式では山崎監督が (日本語訳)「40年以上前に『スターウォーズ』と『未知との遭遇』を見たショックからキャリアをスタートさせた私にとって、この場所は望む事すら想像しなかった場所でした。ノミネートの瞬間、私たちはまさにロッキー・バルボアでした。強大なライバルたちの前でリングに立たせてもらえた事はすでに奇跡でした。しかし私たちは今ここに居ます。この場所から遠く離れた所でVFXを志しているみんな! ハリウッドが君たちにも挑戦権がある事を証明してくれたよ! 最後にスタッフキャストを代表して、去年失った我々のプロデューサー、阿部秀司さんに言いたいです。「俺たちはやったよ!」 ありがとうございました!」と英語でスピーチした。
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©AFPアフロ)北米では現地時間の2月1日(木)までの63日間で上映が終了し、最終興行収入は5641万ドルを記録。北米で公開された邦画実写映画の興行収入記録を大きく塗り替えた。北米公開の外国語の実写映画の歴代興収の中でも3位という記録を残している。
「第96回アカデミー賞授賞式」字幕版は3月11日(月)夜9:00よりWOWOWで放送・配信、3月19日(火)までWOWOW オンデマンドでアーカイブ配信。(©Getty Images)あらすじ
戦後、無(ゼロ)になった日本へ追い打ちをかけるように現れたゴジラがこの国を負(マイナス)に叩き落す。史上最も絶望的な状況での襲来に、誰が?そしてどうやって?日本は立ち向かうのか。
『ゴジラ-1.0』おすすめ記事
Interview / 山崎貴 監督インタビュー『ゴジラ-1.0』のこだわりの詰まった超豪華な音と映像を余すところなく体感してほしい
そのほか映画『ゴジラ-1.0』のニュースはこちら
監督・脚本・VFX:山崎貴/出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介/配給:東宝 ©2023 TOHO CO.,LTD
公式サイト godzilla-movie2023
『君たちはどう生きるか』
宮﨑駿の尽きることないイマジネーションが世界を魅了
2023年12月8日 米国初公開 全世界興行収入:121,690,898ドル (2024年3月10日時点)
映画『君たちはどう生きるか』は長編アニメーション映画賞の最優秀賞を受賞。宮崎駿監督作品の同賞受賞は『千と千尋の神隠し』以来、2度目となる快挙。
概要
宮﨑駿監督が2013年公開の「風立ちぬ」以来10年ぶりに世に送り出した長編アニメーション。
『君たちはどう生きるか』おすすめ記事
Column / 第41回:全米日本映画旋風 ! 興収1位の『君たちはどう生きるか』、そして『ゴジラ−1.0』の快挙
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原作・脚本・監督:宮﨑駿/製作:スタジオジブリ/配給:東宝 ©2023 Studio Ghibli
公式サイト ghibli.jp/works/kimitachi/
第96回アカデミー賞 受賞リスト
■作品賞『オッペンハイマー』
■監督賞クリストファー・ノーラン 『オッペンハイマー』
■主演男優賞キリアン・マーフィー 『オッペンハイマー』
■主演女優賞エマ・ストーン 『哀れなるものたち』
■助演男優賞ロバート・ダウニー・Jr. 『オッペンハイマー』
■助演女優賞ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
■長編アニメ映画賞『君たちはどう生きるか』
■短編アニメ映画賞『WAR IS OVER! Inspired by the Music of John and Yoko』
■国際長編映画賞『関心領域』(イギリス)
■短編実写映画賞『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』
■長編ドキュメンタリー賞『実録 マウリポリの20日間』
■短編ドキュメンタリー賞『ラスト・リペア・ショップ』
■脚本賞ジュスティーヌ・トリエ&アルチュール・アラリ『落下の解剖学』
■脚色賞コード・ジェファーソン『アメリカン・フィクション』
■作曲賞ルドウィグ・ゴランソン『オッペンハイマー』
■撮影賞ホイテ・バン・ホイテマ 『オッペンハイマー』
■美術賞『哀れなるものたち』
■最優秀衣装デザイン賞『哀れなるものたち』
■メイクアップ&ヘアスタイリング賞『哀れなるものたち』
■音響賞『関心領域』
■編集賞ジェニファー・レイム 『オッペンハイマー』
■視覚効果賞『ゴジラ-1.0』
■歌曲賞ビリー・アイリッシュ「What Was I Made For?」『バービー』