Minecraft(マインクラフト)はスウェーデンのゲーム開発会社Mojang Studios(モヤンスタジオ)から2011年に発売されたゲームです。発売当初からすさまじい人気を誇り、現在ではヨーロッパと北米に住む9〜11歳の子どもの、なんと50パーセント以上がプレイしているという調査結果も出ているほど。

Minecraftを原作とした小説も数多く刊行されており、世界中の子どもたちがそのストーリーに夢中になっています。

本稿では、Minecraftオフィシャルブックシリーズ、ニック・エリオポラス著『マインクラフト [木の剣のものがたりシリーズ] [石の剣のものがたりシリーズ]』(技術評論社)の担当編集者・細谷謙吾さんに、翻訳小説が刊行された経緯や、小説を読んだ子どもたちからの反響についてお話をうかがいました。


プログラミング教室でマイクラに食いつく子どもたち...

――そもそもMinecraft(以下、マイクラ)とはどのようなゲームなのでしょうか?

【細谷】マイクラはとても自由度の高いゲームです。敵を倒したりアイテムを採掘するといった冒険だけでなく、モノづくりの楽しさを体感することが出来ます。ブロックを組み合わせて建築物を建てたり、"レッドストーン"というアイテムを使うことで自動ドアや落とし穴といった複雑な仕組みを作ることも可能です。

やってみようと思えば高度なコンピューターの仕組みを再現できるので、遊んでいるうちにプログラミングの素養やクリエイティビティが養われるのではないでしょうか。教育的な効果が期待される要素もふんだんに盛り込まれているので、教育現場で使用されていることも多いと聞きます。

――自由度が高く、幅広い知識を得られるゲームなのですね。では、マインクラフトの小説を刊行するに至った経緯についてお聞かせください。

【細谷】私はコンピューター専門書の編集者でして、2015年当時プログラミング教育に興味を持っていました。そこで、お子さん向けのプログラミングスクール(※プログラミングスクール「TENTO」:Minecraftでものづくりをしている子どもたちが多数在籍中。近年はオンラインにも注力している)に取材に行ったところ、まさにそのスクールの授業で取り扱っていたのがマイクラだったんです。

その時はPythonでコードを書いて実行し、マイクラのブロックを積みあげる、という授業だったのですが、子どもたちは物凄い食いつきで取り組んでいました。

先日、そのプログラミングスクールの代表の方と久しぶりに会ったところ、当時マイクラでプログラミングを学んでいた生徒が、いまでは先生として子どもたちに教える立場になったという話も聞きました。

また別で、親子向けのプログラミングのイベントに行ってみたところ、マイクラ攻略本の原書を持ち歩いている子どもを見かけたこともあったんです。英語の原書を買うなんて相当な熱量だなと。

そこで是非うちでもマイクラの書籍を取り扱いたいと思い、イギリスの出版社から出ていた公式ハンドブックを翻訳して出版する運びとなりました。最初の発刊から8年経過して今では小説も刊行していますが、攻略本も小説も未だに多くの子どもたちに読み継がれています。ゲーム開発会社のMojangがこだわって製作しているので、その分しっかり読者に届いていることを実感しています。


マイクラが読書のきっかけになっている?

――マインクラフト 木の剣のものがたりシリーズ、そして石の剣のものがたりシリーズと、合わせて9冊発刊されています。子どもたちに長く愛されていることが分かりますね。一体どのようなストーリーなのでしょうか?

【細谷】学校の先生が開発したVRゴーグルをかけると、マイクラの世界に入り込めるという世界観です。5人の子どもたちがゴーグルをかけて、マイクラのゲームの中と外で冒険を繰り広げながら謎に迫るストーリーになっています。小説の対象年齢は小学校3〜4年生です。装丁やイラストも楽しいものに仕上がっていますので、クリスマスプレゼントに選んでいただくことも多いようです。

――子どもの不読率(本を読まないこと)が年々高まっています。中には読書に抵抗のあるお子さんもいると思いますが、マイクラ小説にはどのような反響が寄せられていますか?

【細谷】先日「Minecraft公式小説読書感想文コンテスト」を開催しました。感想文を送ってくれた子どもたちはみんな、ゲームが大好きな子という印象でした。マイクラ好きな子たちが、もっとマイクラの世界に親しむために小説を手に取ってくれているようです。

また、自主的に攻略本についての感想文を送ってくれた子もいました。「本を読んだことで自分で色々な物を作れるようになってすごく良かった」と書かれていました。そして親御さんからも「子どもが自ら作文を書くきっかけになりました。感謝しています」とお礼の手紙が添えられていました。ゲームが入り口になって読書の機会が生まれているのは嬉しく思います。

――ゲームが読書のきっかけになるとは思ってもいませんでした! 素晴らしいことですね。

【細谷】マイクラによって読書や作文の力が養われたり、プログラミングのスキルが伸びるなど、教育的な効果を感じているご家庭は多いのではないでしょうか。また、マイクラは親子で一緒にプレイしたりと一種のコミュニケーションツールとしての役割を果たすことも出来ると思います。とにかく自由で、幅の広いゲームなんです。

(文・取材:nobico編集部 小林実央)