子どもを賢い脳に育てるために必要なこと、それは「夜8時に寝る」生活を徹底することだそう。その理由と、早寝早起きを実践するためのポイントを、医師の成田奈緒子さんが解説します。

※本稿は、成田奈緒子著『子育てを変えれば脳が変わる 』(PHP研究所)から、一部抜粋・編集したものです。


からだの脳とは、生きるための脳

からだの脳は、生命を維持するための脳です。

「命を保つ」という、生物として不可欠な力をつけさせて強める。これが子育てにおける、最初にして最重要のミッションです。

ではその方法はというと、「生活リズムをつくる」こと。この一点に尽きます。

人間は、昼行性の生物です。ですから太陽が昇れば目覚めの準備、太陽が沈めば眠りの準備ができるようなサイクルをつくらなくてはなりません。しかし乳幼児期は脳が未発達で、そのサイクルができていません。だからこそ親が「脳育て」をしなくてはならないのです。

「早起きをする、規則正しく食べる、早く寝る」を、ひたすら毎日繰り返し、リズムを身体に沁し み込ませ、からだの脳を育てましょう。

しかし、このようなことを聞いて、少々「物足りない」思いを抱く方もいるかもしれません。

「健康的で何よりだが、それで賢く育つだろうか?」

「優秀さや思慮深さを育てるために、何かしなくていいんだろうか?」

そう思った方は、ここでしっかり覚えておいてください。

親御さんがわが子に望むようなこと――聡明さも、コミュニケーション能力も、思慮深さも、やさしさも、発想力も、前向きさも、すべてはからだの脳である「一階」を頑丈に建てることなしには備わりません。

からだの脳が頑丈なら、自動的に「二階」も頑丈になります。からだの脳がしっかりしている子ほど、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」がよく育つのです。

そのためにも、最初の5年間は「夜8時に寝る」生活を徹底することを私は提唱しています。

夜8時になったら、眠くなる状態をつくる。夜になったら自然と脳を休ませる生活習慣を身に付ける。乳幼児期の子育てに、それ以外の努力は何一つ要りません。

「たったそれだけ?」と、なお物足りなげな方は、考えてみてください。

「それだけ」のことが、きちんとできているでしょうか。

子供が睡眠を存分にとれていると、自信を持って言えるでしょうか。