朝、いつもの時間になっても子どもが布団から出てこない、学校に行こうとすると、体調が悪くなる、ちょっと休むだけのつもりが、いつの間にか不登校に・・・

そのような事態を引き起こす原因となる「起立性調節障害(OD)」を知っているでしょうか。実は、不登校の子どもの3〜4割が、このODであるとも言われています。

そんな子どもたちを多く治療してきた精神内科医の渡辺正樹先生による『子どもが起きない!』(イマジカインフォス刊)を紹介します。[漫画:むぴー、執筆:小室彩里(nobico編集部)]


学校に行きたい、けど行けない

ODは自律神経失調症の一種で、成長過程における心身の成長の遅れによって、誰にでも起こりうる可能性があります。起き上がると、倦怠感や頭痛、腹痛などが起こり、動くことができません。

学校に行きたい気持ちはあるのに、起きられない。けれど、午後になると元気になってくる、といったことが起こるため、ただ怠けているだけなのでは、と思われがちです。

『子どもが起きない!』では、実際に使用されている問診票でチェックを行うとともに、OD改善の道のりを、HOP、STEP、JUMPの3ステップ、27のミッションに区切り、子育てツイートが人気の漫画家、むぴーさんのやさしいイラストとともに解説しています。


ODは自律神経失調症のひとつ。焦らず、寄り添う姿勢が大事

ODについて、同書の著者の渡辺正樹先生に伺いました。

――この本を執筆されようと思ったきっかけは何だったのでしょう?

渡辺「病院勤務の時代から、自律神経失調症の患者さんを多く診てきました。何かの機会に『怠け者の真実』という、ODに関するコラムを書いたことをきっかけに、周囲から『怠け者』のように見られて悩んでいる不登校の子どもたちが、続々と受診するようになりました。自律神経失調症に始まり、起立性調節障害を発症し、不登校に至る子どもが多いのです。

自律神経失調症は、年齢により症状が異なるのが特徴です。成長期では起立性調節障害による不登校、青年期では就労困難や過労死、中年期ではメタボ、老年期では成人病、老後ではフレイルや老人病を引き寄せます」

――どういった症状が起こったら、ODが疑われるのでしょうか? 特徴的なものを教えてください。

渡辺「動悸、ふらつき、頭痛、腹痛、倦怠、不眠など、初期症状は多様です。共通しているのは、自律神経失調症によって、内臓が疲労した状態になっているということです」

――子どもがODと診断された時に、親ができること、すべきことはなんでしょうか。

渡辺「当クリニックでも指導していることですが、生活スタイルを改善する、筋肉をつける、食事を規則正しくしっかりとるなど、基本的なことに気をつけることです。ODは成長過程の歪みによって出てくる病気なので、生活のリズムをしっかりと整えて筋力をつけることができれば、自然と良くなっていくと考えています。

ご両親は、焦らず、お子さんを信じて、険しい顔をお子さんにあまり見せないようにするなど、やさしく寄り添ってあげましょう」


親子の気持ちが描かれた漫画にも気づきが

自律神経失調症の治療、と聞くと、難しくてちょっと重たい本を想像してしまうかもしれませんが、自身も3人の子どもを育てるむぴーさんの、ほんわかしたイラストが随所に使われていることによって、読みやすく、本全体をあたたかい雰囲気にしています。

親と子ども、両方の気持ちが描かれた漫画には、共感したり、ハッとさせられたりすることも。

そんなむぴーさんも、描くことで、いろいろな気づきがあったそうです。

むぴー「起立性調節障害について学べば学ぶほど、『なんて本人も周りもしんどい病気なのだろう』と感じました。思春期の大事な時期に自分の意思と関係なく動かなくなる体。サボっているように誤解されがちで心も体も傷つき、本当に辛い思いをしている人がたくさんいます。

10代の約10人に1人が発症すると言われており、我が子や身近な人が同じ状況になる可能性もあります。この病気についての理解が少しでも広がり、適切な支援につながるきっかけになれば良いなと思いながら漫画とイラストを描かせていただきました」


親も一緒に成長しよう

子どもが急に学校に行かなくなれば、親は当然、心配しますし、どうしていいかわからず、おろおろとしてしまうかもしれません。

その時に、「自分のせいだ」と思い悩むのではなく、ODが原因とわかれば、「一緒に克服するんだ!」という前向きな気持ちになることもできるのです。

ODの治療は、子ども自身の努力も必要ですが、周りの家族の理解と助けがあってこそ、継続していけるもの。そのためにも、正しい知識を得ることは大切です。