北京市内で25日、北京国際汽車展覧会(北京モーターショー)が始まった。今回の開催では、世界で初公開された新車が過去最多の117車種で、うち電気自動車(EV)など新エネルギーモデルは80%以上という。中国の自動車市場では、長期にわたり日独米などの外国ブランド車が優勢だった。しかし最近の中国市場では、自国ブランドEVの台頭が目立つ。ドイツメディアのドイチェベレは北京モーターショーを契機に、ドイツの自動車メーカーの状況を紹介する記事を発表した。以下は同記事を引用しつつ再構成した文章だ。

低価格帯に参入しないことで活路を見出す

北京モーターショー

中国乗用自動車市場情報連席会によると、今年4月の第1〜2週の中国での自動車販売で、新エネルギー車の台数は半数を超えた。ドイツのアウディとBMWの2023年の販売台数は再び上昇したものの、中国ではEVが売れていない。そしてEV販売におけるアウディ、BMW、ベンツの合計シェアは1割にも満たない。

しかし、アウディのゲルノート・デルナー最高経営責任者(CEO)は楽観的な見方を崩さない。依然として強力な製品シリーズを持っており、明確な現地化戦略を持っているとして、「弊社の中国側パートナーである第一汽車集団及び上海汽車集団と共に、弊社には中国市場で優位な地位を維持するために必要なあらゆる条件がある」と述べた。

中国の新興自動車メーカーは、ソフトウエアやデザイン面で一定の強みを持つ。一方で、ドイツの老舗自動車メーカーは今も強大なブランド力を持つ。業界アナリストは、中国の中上層の消費者のドイツメーカーへの信頼度が依然として高いと指摘する。しかもEV市場は価格競争が激しく、多くのメーカーが採算が取れないため、市場はすぐにも大幅な調整局面に入る可能性がある。一方で、伝統的な内燃車で安定した収入を得ているドイツメーカーは、研究開発に資金を投じ続けることができるという。

メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOも北京モーターショーを前に、「コア技術が持つ得点力」を発揮して高級車に重点を置き、30万元(約668万円)以下のモデルでの価格競争には参加しない意向を示した。

BMWグループ大中華圏のジーン・グリーン総裁も、自社の歴史あるブランド力を重視し、低価格帯での競争には加わらない考えを示した。同社の場合、販売台数の70%は25万元(約557万円)以上の車種によるもので、高い価格帯で強みを持つことが、会社としての収益力につながっているという。

中国EVの輸出攻勢はどうなるのか

北京モーターショー

最近では、中国からの自動車や太陽光発電、風力発電など、いわゆる新エネルギー関連製品の輸出が急増している。西側諸国では、中国は生産能力過剰の状態だと主張して非難する声が発生した。一方で中国側は、新エネルギー関連製品は気候変動に対応するために全世界規模で二酸化炭素の排出を抑制するために不可欠であり、世界における普及の状況を考えれば、生産能力はいまだに大きく不足していると反論している。

グリーン総裁は、ドイツで生産される自動車の4分の3は輸出向けで、中国で生産されている自動車のうち輸出分は6分の1に過ぎないと指摘。中国からの自動車輸出はドイツと同様の状況に至るまで拡大する可能性があると述べた。

ただし、中国の自動車メーカーも地政学リスクを注視している。最近になり独フォルクスワーゲンとの提携で合意した小鵬汽車は、中国製EVに対するEUの反補助金調査開始とそれに伴う懲罰的関税のリスクにより、同社は海外向け投資を再検討する可能性があると表明した。

また、吉利汽車とボルボが共同出資する極星汽車業は欧州市場への輸出を念頭に、生産能力の一部を中国から米国に移転する準備を進めていることを明らかにした。

今回の北京モーターショーでは、完成車以外にも各種の新技術が紹介された。BYD(比亜迪)や広州汽車集団などの中国メーカーは、自社開発の自動運転システムを紹介した。電池大手の寧徳時代は、1回の充電で1000キロを超える航続を実現できる新型のリン酸鉄リチウムイオン電池を発表した。今回の北京モーターショーには中国、米国、ドイツ、フランス、日本など13カ国から中国内外の部品企業500社余りが出展したという。(翻訳・編集/如月隼人)