[ロンドン 13日 ロイター] - 代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインが最高値を更新するとともに、間もなくやってくる「半減期」と、それが価格上昇において大事な役割を果たしているのかどうかに注目が集まっている。

半減期をどう受け止めるかは立場次第で変わる。さらに希少になるコモディティーとしてビットコインの価値を高める重要なイベントとみなす向きもあれば、投機筋が高騰をあおる口実として使われるだけの単なる技術的な修正に過ぎないという意見も聞かれる。

だが半減期は正確にはどういう意味合いがあり、本当に重大な出来事なのだろうか。

◎半減期とは

ビットコインの土台となっているブロックチェーン(分散型台帳)技術を変更し、新しいビットコイン作成の報酬を減らすための仕組みが発動するタイミングが、半減期と呼ばれる。

ナカモト・サトシと称する創始者によって、ビットコインは発行上限が2100万枚となるよう設定されている。

それに伴ってビットコインのコードには、一定期間ごとに新規流通速度が半分になることが書き込まれた。

これまでのビットコインの流通枚数は約1900万枚。

◎実際に何が起きるか

ブロックチェーン技術は、「ブロック」と呼ばれる情報記録を生み出し、「マイニング(採掘)」を通じて台帳に書き加える作業を指す。

マイナー(採掘者)はコンピューターを使って複雑で難解な数式を解き、新しいブロックを追加することに報酬として一定の新しいビットコインを得ることができる。

そして半減期にはこの報酬のビットコインが半分に減るため、採掘作業の収益性が下がり、新しいビットコインの創出ペースも鈍化する。

◎今回の半減期

正確な日時は定まっていないが、4月終盤に起きると予想されている。

半減期は21万ブロックが追加されるごとに訪れる仕組みで、およそ4年間隔で発生してきた。

◎ビットコイン価格との関連性

一部の熱狂的なビットコイン支持派は、ビットコインは希少性によってその価値が与えられていると主張する。あるコモディティーは供給が減れば減るほど、他の条件が等しければ需要が高まる局面で価格が上昇するからだ。

そのためビットコインの供給量を減らせば価格を押し上げるはずだ、と複数のアナリストやトレーダーは話している。

これには異論もある。供給減の影響は既に現在の価格に織り込まれているというのがその一つだ。

また市場に供給されるビットコインは総じてマイナーの手に渡るとはいえ、ビットコインセクター自体が不透明で、在庫や供給に関するデータが乏しい。

マイナーが保有分を売れは、価格には下げ圧力がかかる可能性も出てくる。

仮想通貨の値上がりの背景を把握するのは難しい。それは買い手の実態や理由が他の市場に比べてずっと分かりにくいからなのは言うまでもない。

今年のビットコイン急騰に関して最も挙げられている原因は、米証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物の上場投資信託(ETF)を1月に承認したことと、主要中央銀行の利下げ観測だった。

しかし投機的な仮想通貨取引の世界では、アナリストが提示したビットコイン価格変動の説明は、市場で何倍にも大きな話に膨らんで自己増殖していくことがままある。

◎過去の半減期の動き

これまでの半減期がビットコインの値上がりにつながったという確かな証拠は存在しない。

直近の半減期だった2020年5月11日は、その日から1週間で価格は約12%上がった。

20年はその後にビットコインの急騰が始まったが、その理由としては金融緩和から、巣ごもり生活となった個人投資家の活発な買いまでさまざまな要素が上がっており、半減期のためだというはっきりした証拠は見当たらない。

16年7月の半減期は、その日から1週間でビットコインが1.3%程度上昇した後、数週間後には急落している。

つまり半減期が過去において何か価格に影響を与えたとしても、それだけを取り出して検証したり、今回何が起きそうかを予測したりするのは困難ということになる。

世界各地の規制当局は、ほぼ同時にビットコイン連動商品を承認しつつも、ビットコインは熱狂や「乗り遅れの恐怖(FOMO)」に突き動かされる投機的な市場であり、投資家に実害をもたらすと繰り返し警告している。