山崎牧子

[東京 15日 ロイター] - シンガポールに拠点を置く投資運用会社、スイスアジア・フィナンシャル・サービシズが運営するアクティビストファンドが、工業部品専門商社の日邦産業など日本企業4社に対し、大株主からの個別面談の要請に取締役が応じることを義務付ける株主提案を行った。スイスアジアの門田泰人最高投資責任者(CIO)がインタビューで明らかにした。

日邦産業のほか、ベルトコンベヤー事業などを手掛けるNCホールディングス、電子部品メーカーの東京コスモス電機と学習塾運営のウィザスに対し、3%以上の議決権を有する株主から要請があった場合、社内取締役は四半期に1回以上、社外取締役は年1回以上応じるよう定款変更を求めている。株主との個別面談を義務化する株主提案は珍しい。

東京証券取引所などは株主との建設的な対話を要請しており、対話に積極的な姿勢を示す企業も増えている。しかし、門田氏によると、対話に応じるのは社長など一部の取締役に限定され、すべての取締役との個別面談に応じる企業は少ないという。「個別面談によって取締役会に緊張感を走らせる効果は非常に高いと思う。できるだけ多くの取締役が、実際に株主と会って意見を聞く機会を持ってもらうことが重要」と述べた。

さらに、「大株主が自らコストと時間をかけて対話をし、企業価値向上を推進すれば、多くの株主が便益を享受できる」と強調。定款変更の可決には出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要で、「ハードルは高いが、ある程度の票が集まれば(面談を受ける)プレッシャーは高まる」と期待感を示した。

コーポレートガバナンス・コードでは、株主との建設的な対話は企業の持続的な成長と価値の向上に資するとして、経営陣幹部や社外取締役を含む取締役に対し、株主総会の場以外においても行うべきとしている。

門田氏は投資銀行出身で、アクティビストファンドのアスリード・キャピタルなどを経て、昨年、スイスアジアで主に割安な日本株を対象とするファンド「グローバル・ESG・ストラテジー」を立ち上げた。

同ファンドは4社に対し、個別面談の義務化以外にも複数の株主提案を出しており、買収防衛策の廃止や配当方針の変更なども含まれている。直近の保有比率は議決権ベースでNCホールディングスが5.48%、日邦産業が9.93%、ウィザスが17.5%、東京コスモス電機が14.74%。

ロイターの問い合わせに対し、日邦産業とNCホールディングス、ウィザスは回答を控えた。東京コスモス電機は担当者不在のためコメントを得られなかった。