今シーズン限りで名将ユルゲン・クロップ監督(56)が退任する、日本代表のMF遠藤航(31)が所属するイングランド・プレミアリーグのリバプールの後任監督問題が混沌としてきた。ポルトガルのスポルティングを率いるルベン・アモリム監督(39)と、3年契約で口頭合意に達したとドイツメディアが9日に報じたが、一夜明けた10日にイギリスを含めた複数のヨーロッパメディアがこれを否定。一部では横浜F・マリノスの元監督で、現在はトッテナム・ホットスパーを率いるアンジェ・ポステコグルー監督(58)の名前もあがっている。

 スポルディングのアモリム監督と合意報道も

 名門リバプールの新監督問題が再び混沌としてきた。
まずはドイツの『Sky Deutschland』が9日に、日本代表MF守田英正(28)が所属するスポルティングのアモリム監督と、3年契約で口頭合意に達したと速報で報じた。しかし、一夜明けた10日に複数のヨーロッパメディアがこれを時期尚早と否定した。
例えばイギリスのサッカー専門サイト『90min』は「アモリムは自身の将来について、まだ何も決めていない」と次のように報じている。
「リバプールの情報筋によると、アモリムと口頭合意に達していないどころか、クロップの後任候補として正式な面接も受けていないという。公式発表が夏まで遅れたとしても、リバプールは今シーズンが終わる前に次期監督の契約をまとめたいと考えている。そのために複数の監督候補について話し合いが続いていて、トップターゲットの最終決定を下す前に、少なくとも3人の候補者に正式な面接を行う計画を立てている」
リバプールの地元紙『LIVERPOOL ECHO』は、移籍情報に精通するイタリア人ジャーナリスト、ファブリツィオ・ロマーノ氏(31)のX(旧ツイッター)を引用する形で「アモリムの可能性について、リバプール内でまだ議論されている段階」と報じた。
「アモリムがリバプールにとって、好ましいターゲットなのは間違いない。ファブリツィオ・ロマーノも『リバプールはアモリムに近い人物とすでに接触していて、彼とスポルティングの契約状況について十分な情報を得ている』と伝えている。まだ様子を見る必要はあるものの、リバプールのこうした動きは、メディアでこれまで候補者として報じられた、ブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督らに対してはなかったものだ」
リバプールの新監督問題は、2015-16シーズンから指揮を執ってきたクロップ監督が、今シーズン限りでの退任を突然発表した1月26日に幕を開けた。
2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ制覇や、翌2019-20シーズンのプレミアリーグ優勝など、現在までにリバプールに8個のタイトルをもたらしたドイツ出身の名将は、サッカー界に衝撃を与えた退任理由を次のように語っていた。
「私は常に自分のすべてを捧げてきたが、自分のリソースは無限ではないと気づいた。今シーズンに全力を尽くして、その後に立ち止まる方がいいという考えに至った」
後任候補として最初に名前があがったのが、現役時代はリバプールでもプレーし、現在はドイツ・ブンデスリーガ1部のレーバークーゼンを率いるシャビ・アロンソ監督(42)だった。しかし、スペイン出身の指揮官は24勝4分けと無敗で首位を独走し、今週末にも悲願の初優勝が決まるレーバークーゼンで引き続き指揮を執ると3月に明言している。

 戦術家だけでなくモチベーターとしても高く評価され、ヨーロッパのビッグクラブから関心を寄せられているアモリム監督の名前も、早い段階から取り沙汰されていた。スポルティングを率いて2度目のプリメイラリーガ優勝へ向けて、首位に立つ指揮官の去就に関するコメントを、リバプールの地元メディア『Anfield Watch』が伝えている。
「約束をしたらもう後戻りはできないし、いまは決められない。ただ、もし優勝トロフィーを勝ち取れなければ、僕はスポルティングを去るつもりだ」
一連の報道を見る限り、口頭合意に至ったとするのは時期尚早だとしても、アモリム監督が有力候補の一人であるのは間違いない。一方でブライトンのデ・ゼルビ監督が候補から外れたと報じられているなかで、ここにきて新たな名前も取り沙汰されている。
今シーズンからトッテナムの指揮を執っている、オーストラリア出身のポステコグルー監督の名前をあげたのは、イギリスのサッカー専門メディア『Football365』だ。
現役時代にリバプールでDFとしてプレーし、スコットランド代表にも名を連ねたドミニク・マッテオ氏(49)のコメントを介して、同メディアは「ユルゲン・クロップの後任は、スパーズ(トッテナムの愛称)のアンジェ・ポステコグルーだ」と報じた。
記事のなかでマッテオ氏は次のように語っている。
「彼はリバプールにふさわしい、正しいサッカースタイルを標榜している。スパーズにおける彼の最初のシーズンに深い感銘を受けている。メディアとの接し方を含めて、彼がスパーズの先頭に立つ姿は称賛に値する。リバプールのようなクラブでは、高いレベルのプレッシャーに対処できる監督が必要とされる。さまざまな可能性が開かれている現段階で、ルベン・アモリムよりもポステコグルーが最初の選択肢になるはずだ」
アタッキングフットボールを掲げるポステコグルー監督は、マリノスを2019シーズンのJ1リーグ制覇に導き、2021年6月から指揮を執ったセルティックでも、スコットランドリーグ連覇など多くのタイトルを獲得。数々の実績を評価されて昨年6月に4年契約でトッテナム監督に就任し、終盤戦に入ったプレミアリーグで4位につけている。
このまま来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得すれば、残りの契約年数などを含めて、わずか1年でライバルチームから指揮官を引き抜くのは現実的な話ではないが、それだけリバプールの後任監督問題が混迷を極めている証と言っていい。前出の『90min』は候補者との面接が「4月中に行われるはずだ」と報じている。