横浜DeNAのドラフト1位ルーキーの度会隆輝(21)がプロの壁にぶつかっている。ここ5試合の打率は.087。打率2割キープも風前の灯となっている。三浦大輔監督(50)はここまで全試合で「1番・ライト」でスタメン起用を続けているが、評論家からは「もう外すべき」「2軍調整が必要」などの意見が出ている。また24日の阪神戦の9回二死一、二塁で、度会が打席で浮かべた笑顔もSNSで物議を醸して賛否両論が飛び交った。

 打率は.202へ急降下

 ハマのスーパールーキーの“笑顔”がSNSを騒がせた。
雨が降り続けるハマスタで行われた24日の阪神戦。9回に“守護神”山崎が2点のリードを守れず逆転を許した。逆に2点を追うことになった横浜DeNAは、その裏に阪神のゲラから山本の内野安打などで、二死一、二塁のチャンスを作り、度会に打順が回ってきた。一発が出れば逆転サヨナラという緊迫の場面。度会はなんと意識的に白い歯を見せて笑いながら打席に入ったのである。
笑顔と大きな声は度会のトレードマーク。
彼が野球人として貫く哲学であり、スポーツ医科学的にも、口角を上げると顔の筋肉がリラックスして無駄な力みが消える効果があるともされている。
度会はカウント1−1からワンバウンドする低めのスライダーに手を出して3球で1−2と追い込まれた。ファウルで3球粘ったが、最後は、また低めのスライダーを振ってスイングアウトでゲームセット。SNS上では、その打席での笑顔を巡って大激論が巻き起こった。
アンチからは「笑っている場合か」や「痛々しい」など非難の声が飛び交い、明らかに誹謗中傷と取れる書き込みもあった。
だが一方で、「もがき苦しみ、なんとか壁をぶち破ろうと試行錯誤した結果の笑顔。楽しいからじゃなく辛くて笑ってんだ。本物の笑顔を取り戻すまで頑張れ」「無理に作っているかもしれないが、あの笑顔は頑張っている証拠」「楽しもうとする笑顔が結果につながる」「どんなに苦しくても笑顔を作るのは最高。元気をもらえる」「言いたい奴には言わせておけ」などと、その度会の姿勢を支持する声も相次いだ。
ベイファンだけでなく虎党やドラゴンズファンからも応援メッセージが届き、なかには「度会の笑顔を守る会」の発足を呼び掛ける投稿まであった。ただ三振に倒れた度会は1人最後までベンチに残り悔しさを噛みしめていた。

 3月29日の広島との開幕戦で3回に九里から同点3ランを放ち、お立ち台に上がった。翌日も2試合連続の一発を含む4の4の大暴れで連勝に貢献。あと1本三塁打が出ればサイクル安打達成だった。鮮烈なデビューを飾り、その後も10日の中日戦から5試合連続安打を放つなど大旋風を巻き起こしてきたが、ここ6試合は、バタッと快音が聞かれなくなった。
現在の成績は打率.202、2本塁打、打点7、9得点。23、24日の阪神戦では10のゼロ。明らかにプロの壁にぶつかった。ここ5試合の打率は.087で、打率は急降下。12日のヤクルト戦以来、打点もない。出塁率も.268まで落ちてきた。
某スコアラーは「対戦もひと回りしたらデータが出てくるからね。各球団共にしっかりとその弱点を攻め始めている」と指摘した。

 現役時代に複数の打撃タイトルを獲得したセ・リーグOBの評論家は、度会が打てなくなった理由をこう分析している。
「まず典型的な早打ちの積極打法なので浅いカウントで相手バッテリーはストライクを投げなくなっている。内、外のボールゾーンに変化球を落としておけば手を出してくれるのでファウル、あるいは空振りでカウントを稼ぐことができる。おそらくインコースが好きなのだろう。特に体に近いボールには何でも反応してくる。フォーク系やチェンジアップなど落ちるボールの見極めと対応ができていない。今の度会に打たれるとすれば、そういう変化球のスッポ抜けなどのコントロールミスしかない。阪神の佐藤輝明が1年目の後半に相手バッテリーに研究されて内角の速球を使われだしてまったく打てなくなったが、その状態に近いと思う」
阪神の佐藤はルーキーイヤーの8月末から10月までセのワースト記録を更新する59打席連続ノーヒットの大スランプに陥ったが、度会は早くもそれに似たトンネルに入りつつあるというのである。
それでも三浦監督は、ここまで全試合で度会を「1番・ライト」でスタメン起用し続けている。
三浦監督もルーキーが順風満帆に1シーズンを終えるとは思っていない。キャンプから「いずれ壁にぶつかります」という話をしていた。
弱点を研究をされて壁にぶつかり、その相手の攻めの裏をかいて、それを克服し、また研究されて…という“いたちごっこ”が永遠に続くのがプロの世界である。ただ、その間、指揮官は、どこまで我慢できるのか。壁にぶつかったルーキーを使い続ける余裕があるのか、という選択を迫られることになる。現在チームは借金「2」で5位という位置にある。
前出のOBは「アグレッシブな姿勢は彼も持ち味だが、シチュエーションによっては思い切った耐球型に切り替えるなどの対策が必要だが、その跡が見えず同じパターンでやられている。その打撃内容を考えると、もう外した方がいいと思う。代打タイプでもないし、機動力が使え、守備要員として、とびきりの能力があるわけでもない。2軍に落としてもう一度、どんなパターンで攻略されているかを見直して低めの変化球への対応も含めたスタイルを再構築させるべき」と提言した。
先日、入団会見を行った筒香はイースタン・リーグで調整中。同OBは「筒香が日本野球へ再対応するのにも時間が必要かもしれないが、筒香を度会と入れ替わりで昇格させるというタイミングがあっていいのでは」とも付け加えた。
某スコアラーは、こんな話もしていた。
「ただ元々は実戦タイプで対応力はある。このままズルズルいくとは考えていない」
今日26日からは2位の巨人との本拠地での3連戦。先発は戸郷だ。果たして三浦監督はどんな決断を下すのだろうか。