パリ五輪のアジア最終予選を兼ねた、AFC・U-23アジアカップ準々決勝でU-23インドネシア代表に敗れ、10大会連続の五輪出場を逃したU-23韓国代表を巡る激震が続いている。衝撃的な黒星から一夜明けた26日、大韓サッカー協会(KFA)の公式SNSは1万5000件を超える批判コメントで炎上。KFAのチョン・モンギュ会長(62)の引責辞任を求める声が公然と上がり、大会後のA代表監督就任が予定されていたファン・ソンホン監督(55)の手腕にも懐疑的な視線が向けられ始めた。

 ファン・ソンホン監督のA代表昇格プランも棚上げか?

 韓国版「ドーハの悲劇」の波紋が止まらない。カタールで開催中のAFC・U-23アジアカップ準々決勝で伏兵インドネシアに敗れ、世界記録と自負していた五輪の連続出場が9でストップ。一夜明けた26日、KFAの公式インスタグラムは今大会に臨んだ韓国チームを批判するコメントで炎上した。
韓国紙の『東亜日報』は「KFAへ寄せられた怒りのコメントは、26日午後3時30分の時点で1万5000件を超えた」と報じ、具体的な内容を伝えている。
「インドネシアに喫した黒星により、1988年のソウル大会から継続されていた韓国の五輪出場は9大会で途切れた。40年ぶりに味わう衝撃に、サッカーファンからは『韓国サッカーの暗黒時代が到来した』や『まさかインドネシアに阻まれて、五輪の舞台に立てない日が来るとは夢にも思わなかった』などといった声が続々と寄せられている」
さらにインドネシアの指揮官が、かつて韓国代表を率いた同胞のシン・テヨン監督(53)だった状況を受けて、同メディアは「インドネシアファンからは『偉大なるシン・テヨンを解任してくれてありがとう』と揶揄するものもあった」と続けた。
今大会のグループBに入った韓国は、UAE(アラブ首長国連邦)、中国、そして日本をすべて零封して3連勝をマーク。1位で進出した準々決勝で、難敵とみられた開催国カタールとの激突も回避できた。しかし、25日の準々決勝では2位通過した日本が延長戦の末にカタールを撃破。対照的に韓国はPK戦の末にインドネシアに屈した。
しかも、試合内容でも相手の後塵を拝した。2度のリードを許し、後半25分には3ゴールをあげている193cmの長身FWイ・ユンジュンが一発退場。何とか2−2の同点に追いつくも、同終了間際にはファン・ソンホン監督も審判への抗議で退席を命じられた。
延長戦を終えても決着がつかず、突入したPK戦ではインドネシアの5番手、DFジャスティン・ハブナー(20、セレッソ大阪)のPKをGKペク・ジョンボムが阻止。5人全員が成功させていた韓国の勝利が決まったと思われた直後に、オーストラリアのショーン・エヴァンス主審が蹴り直しを命じ、ハブナーが成功させて6人目以降に入った。
最終的には2巡目の12人目までもつれ、インドネシアが11−10で制した壮絶なPK戦を、別の韓国メディア『OSEN』は「問題があった」と報じている。
「PK戦で理解しづらい状況が訪れた。インドネシアの5番手キッカーのPKをペク・ジョンボムが阻止し、韓国が勝ったと思われた直後に、同主審が『キーパーが先に動いた』と指摘し、蹴り直しでインドネシアが成功させた。ペク・ジョンボムが先に動いたのは事実だが、実はこのときが初めてではない。その前後には何も言わなかった主審が、ペク・ジョンボムがセーブしたときにだけ指摘したのは極めて不思議だった」

 さらに同メディアは、日韓共催大会、ドイツ大会と2度のW杯に出場し、五輪にも2度出場した元韓国代表MFのレジェンド、イ・チョンス氏(42)のコメントを引用する形で、KFAのチョン・モンギュ会長の引責辞任を求める記事も配信している。
「イ・チョンス氏は自身の公式YouTubeチャンネルで『韓国の五輪代表チームは今大会への準備を間違え、インドネシアに結果と内容の両方で負けた。ファン・ソンホンを五輪チームの指揮に集中させるべき時期に、A代表の暫定監督にすえた責任は誰にあるのか。無条件でパリ五輪へ行けると思っていたのか。KFAの幹部、特に韓国サッカー界を衰退させたチョン・モンギュ会長には無条件での辞任を求める』と公然と糾弾した」
ベスト4で敗退した今冬のアジアカップの責任を問う形で、KFAはドイツ出身のユルゲン・クリンスマン監督(59)を解任。後任監督と契約するまでの間、U-23韓国代表を率いていたファン・ソンホン監督に暫定的な指揮を任せる措置を取った。
迎えた3月の北中米W杯アジア2次予選で、韓国はタイ代表との連戦を1勝1分けで乗り切ってグループCの首位をキープ。特に敵地バンコクでの第4戦で3−0と快勝したことで、現役時代はA代表の点取り屋として活躍し、セレッソに所属した1999シーズンにはJ1得点王も獲得したファン・ソンホン監督の評価が一気に高まっていた。
しかし、今大会でパリ五輪切符を獲得した後に、肩書きから「暫定」の二文字が外れる可能性を、別の韓国紙『ソウル新聞』は「すべての計画は頓挫した」と伝えた。
「今回の予期せぬ敗退により、A代表の新監督の有力候補だったファン・ソンホンも退場を余儀なくされる。われわれはファン・ソンホンが暫定監督に任命された2月に、チョン・モンギュ会長への電話取材で『彼が失敗した場合にはどうするのか』と質問した。返ってきた答えは『会長として言えるのは、責任を取る、ということだけだ』だった」
KFAは26日に公式HPを更新し、10大会連続の五輪出場を逃し、パリの舞台で戦えなくなった事態に対する謝罪文を掲載している。要約すれば次のようになる。
「私たちKFAは代表チームの育成と強化に連帯責任を負っていると重々承知しているなかで、惜しくも目標に届かなかった事態に対してあらためてお詫び申し上げます。今後は選手や指導者の育成、代表チームのマネジメント体制を丁寧に見直し、今回の失敗を二度と繰り返さないように改善策を模索していきたいと思っています」
しかし、文面だけの謝罪に対してファンが納得していないからこそ、KFAの公式インスタグラムは炎上した。さらにKFAは同時に、ファン・ソンホン監督が27日に仁川国際空港に帰国するとわざわざ発表した。退席処分を受けた関係で、インドネシア戦後に公の場で言葉を残していない指揮官に批判の矛先が向かう状況が整いつつある。