釈菜の様子を見守る孔垂長氏(中央奥)=多久市の多久聖廟

 儒学の祖・孔子を祭る多久市の多久聖廟(せいびょう)で18日、創建以来の伝統行事「春季釈菜(せきさい)」が行われた。孔子の79代嫡孫・孔垂長氏(48)が招待され、厳かな儀式を見守った。孔氏は、春と秋の釈菜が300年以上続いていることについて「文化を継承されていることに深く敬服し、心から敬意を表したい」と感謝した。

 孔子の直系子孫の来訪は、1977(昭和52)年の秋季釈菜に参列した77代の孔徳成氏以来47年ぶりとなる。

 孔氏は、孔子像や孔子の系譜が書かれた石碑などを見学。釈菜では横尾俊彦市長らがふんした「献官」「祭官」が、孔子と弟子4人の像に供え物をささげる儀式を見守った。境内では、東原庠舎(とうげんしょうしゃ)西渓校の児童、生徒が釈菜の舞や唱歌、腰鼓ようこを披露して花を添えた。

 孔氏は、現代社会は技術や文明が発展する一方、精神の荒廃や道徳の低下などの問題が起きているとし、「孔子の教えは依然として大きな意義を持つ」と強調。「基本的な倫理と道徳、信念、価値観を維持することが必要。多久市が釈菜を300年以上守り続けている姿勢は、この精神を体現している」と述べた。(古川浩司)